20周年を迎えた囲碁将棋は「お笑いやってて良かった」をたくさん感じたい。イジれる存在のまま、生涯で一番デカい会場に挑む 【「囲碁将棋20th anniversary ZEKKEI MANZAI TOUR」インタビュー】

2024年2月18日(日)、囲碁将棋が単独ライブ『囲碁将棋20th anniversary ZEKKEI MANZAI TOUR』を開催する。会場は日比谷公園大音楽堂。通称「野音」である。野音のキャパシティは、約3,000人。20周年を迎えた囲碁将棋は、「生涯で一番デカい」会場で単独ライブに挑むこととなる。本ライブは配信が入らないため、囲碁将棋×野音を体感できるのは現地参加者のみ。

※野音以降の「ZEKKEI MANZAI TOUR」スケジュールは決まりしだい告知予定

野音単独を控え、囲碁将棋は今なにを思っているのだろうか。芸人生活20周年の記念すべき年でもある2024年、かなり気合が入っているのでは……と思いきや、取材にやってきたふたりはどこまでも自然体。気負うことなく、変に意気込むこともなく、かといってなにかを諦めているわけでもなく。20周年ツアーのテーマでもある「絶景」を発端に話を聞くと、囲碁将棋が愛される理由が見えてきた。

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10年後に見ても恥ずかしくない絶景漫才

———囲碁将棋さんは、2021年頭からYouTubeで絶景漫才をスタートしていますよね。「YouTubeでなにかやろう」というところから、絶景漫才にたどりついたとか。

文田大介(以下、文田): そうですね。最初は「人形劇」をやろうと思っていました。僕らがなにかやるならネタだけど、今更普通にネタを撮るのも恥ずかしい。だから自分たちっぽい人形をつくって、人形劇でネタを撮ろうと思ってたんです。でも、一緒にやっているタケカワ君って作家の子から「それ面白いんですか?」って言われて(笑)。「ほかにありませんか?」と言うので、「絶景漫才を撮りたい」と返しました。自分たちがYouTubeをやることになると思ってなかったんで、以前からいろんな芸人に「絶景漫才どう?」って勧めてたんですよ。でも誰もやらなかったし作家も「やってみたい」と言うので、僕らでやることにしました。

2021年1月1日に公開された最初の絶景漫才は、千葉県・守谷海岸にて撮影(ZEKKEI MANZAI #1【バーナム効果】)

———「絶景漫才をやろう」と決まった当初は、どんな未来を想定していたんですか?

文田: 最初に思い描いていたゴールは、気球ですね。気球でDJをやっている写真を見たことがあって、「いつかこういうのやりたい」と言ってスタートしました。今は、いつかオーロラが見える場所で絶景漫才をやりたいと思ってます。

———そもそも、文田さんが「絶景漫才」を思いついたのはなぜですか?

文田: ほかの芸人のネタ動画を見て、「笑い声がないと面白そうに見えない」と思っていたんですよ。劇場でやったネタを公開している動画はお客さんの笑い声が入ってるので良いけど、たまに笑い声のない無機質なネタ動画を上げている人もいるじゃないですか。そうすると、面白くなく見える。でも、絶景で撮ればお客さんがいなくても成立するんじゃないか?と思って。

———絶景漫才をやることは、最初から根建さんも賛成だったのでしょうか。

文田: 絶景漫才以前に、根建は元々YouTube自体に前向きじゃなかったんですよ。YouTubeとかTikTokとか「SNSだけでハネている芸人が嫌い」という昭和の芸人なんで(笑)。YouTubeやってるヤツは寒いっていうね。

根建太一(以下、根建): 寒いっていうか(笑)、僕自体がYouTubeをマジで観ないんですよ。だからほかの人がなにをやっているのか、よくわかんない。絶景漫才がどうとかYouTubeに抵抗があるとかの前に、単純によくわかんなかったです(笑)。

———実際に絶景漫才をやってみていかがでしたか?

文田: 最初のころは、とにかく寒かったのもあってコンディションが悪かったですね(笑)。これまで行ったなかで一番寒かったのが箱根。早朝だし、薄着だし、風が吹いてたのもあって体感温度はマイナス8度くらい。寒すぎてサンパチも触れないくらい手がしびれちゃって。

根建: 太陽が出てきた瞬間、本当に「あったけぇ!」って思いました。太陽ってあったかいんだって、初めて知りました(笑)。

文田: 寒すぎて、ネタのコンディションは正直悪いです。でも「絶景メインでやろう」と思ってるんで、まぁネタの調子は悪くても良いかなという感じです(笑)。

箱根・仙石原すすき草原での絶景漫才(ZEKKEI MANZAI #2 【モテる方法】)

———絶景漫才の評判はいかがですか?

文田: YouTubeの登録者数がそんなに多くないし、めちゃくちゃ再生されているかって言うとそんなこともない。でもあんまり話したこともない兄さんにも「良いね」と言ってもらえるので、やって良かったですね。『ZEKKEI NETA CLUB』(UHB北海道文化放送)も、絶景漫才ありきではじまった番組ですしね。
僕は「いっぱい再生される動画にしたい」というより、「10年後に見ても嫌じゃないものをつくりたい」と思ってるんです。たとえばですけど、吐くまでハンバーガー食べるような動画は撮りません。デジタルタトゥー以外のなにものでもないから(笑)。

———絶景漫才は、10年後の自分が見ても納得できる動画なんですね。

文田: そうですね。だから画質にもこだわっていて、でっかいモニターで観ても大丈夫にしています。いつか、オシャレなバーで流してほしいですね。絶景がメインなんで、風の音とか水のせせらぎと同じように、漫才も効果音的に入ってるぐらいで良いと思っています。

★ZEKKEI MANZAI【囲碁将棋】絶景漫才はコチラから(囲碁将棋 Official YouTube Channel

お客さんが来てくれるなら、どこで漫才やっても良い

———20周年を記念して『囲碁将棋20th anniversary ZEKKEI MANZAI TOUR(以下、絶景漫才ツアー)』を行うそうですね。普通に劇場をまわるツアーではなく、絶景漫才ツアーにしたのはなぜですか?

文田: 僕らはお客さんがめちゃくちゃ多い芸人ではないし、「普通に5大都市の劇場をまわるのもなぁ」と思っていたんです。「なにか風変わりなことをしたい」と思って、絶景漫才を撮りたい場所をめぐることにしました。最初から野音でやることが決まっていたわけではないので、絶景まで来てくれるならお客さんが10人でも20人でも良いと思って。だからどちらかというと、僕らのためにやろうと決めたツアーです(笑)。

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———ツアーの1か所目に日比谷野外音楽堂(以下、野音)が決まった経緯を教えてください。

文田: ツアーの候補地としてお寺や神社、海沿いの劇場、教会といろいろ案を出したなかのひとつに、野音がありました。ただ、野音は改修工事に入るので一度は頓挫したんですよ。そんなとき、マネージャーが話を持ってきてくれました。ほかの社員さんが野音を2日間とっているので、そのうち1日を使う?と。こんな機会なかなかないので、野音からはじめちゃおうという感じですね。ラッキーです。

※改修は決定しているが、開始時期は未定

———当初は、お客さんが何人でも良いと思っていたんですよね。キャパの広い野音とはギャップがあると思います。野音に立つことが決まったときは、どう思いましたか?

文田: 過去に東京ダイナマイトさんが野音でやっているのを見て「めちゃくちゃカッコいい」と思ってたんで、うれしかったですね。

根建: 僕も一緒に東京ダイナマイトさんのライブを見て、ずっと「野音でやりたい」と思ってたんですよ。でもやれるはずがないと思ってたんで、めっちゃうれしかったですね。ただ、キャパ3,000人は心配です(笑)。

文田: 3,000人の前で漫才やるってなかなかないよな。1,000人規模はあるけど、2,000人超えることってあんまりない。

根建: しかも“単独”ライブをこのキャパでやるって、絶対ないですよ。だからちょっとビビってます。囲碁将棋単体で集める人数としたら、間違いなく過去一番ですね。

文田: 野音への思い入れは、僕なんかより根建のほうが全然上ですよ。根建はバンドも好きなんで。

根建: レジェンドたちが野音に立っている映像を長年見ていて、「めっちゃカッコいいな」と思ってました。野音でライブしたミュージシャンのDVDを持っているんで、それを見ながら「ここに立つんか」って思ってます。本当に楽しみですね。

文田: 尾崎豊が野音の7mの照明台から飛びおりて、骨折したままライブをやったことがあるんですよ。それをやってくれるっぽいので、今はカルシウムをめっちゃ摂らせています。

根建: いや、カルシウム増やしても無理だ(笑)。

文田: 厚めのナイキの靴を履かせて飛ばせます。

根建: まぁ、いけるんじゃないですかね?7mなら。

文田: 尾崎がなんで飛んだのかわかんないけど、イカれてるよね(笑)。

———本来は、野外で漫才をやること自体あまりない取り組みなのでは?

文田: 僕らは、割と野外ライブには慣れてるんですよ。神奈川県の市町村58か所を単独でまわったことがあって、村とかだと劇場がないんで駅のホームや改札前にサンパチを立ててネタをするんです。だから今回野外で心配なのは、漫才よりも寒さですね。お客さんがいっぱい入って密着してもらえればあったかいと思うんですけど……。

※2012~2013年にかけて開催された、吉本興業創業100周年記念イベント『神奈川100ライブ 囲碁将棋58市町村制覇ツアー「お暇なら来てよね。」』

根建: マジでそうですね。

文田: 体ゆすって笑ってもらえるようなライブを提供したいですね。あと、本当に雨降らないでほしい。

根建: 雨降ってもやるんですけどね。

文田: 社員さん含め10数人で打ち合わせしてるんですけど、なぜか誰も雨のことを言わないんですよ。みんな「晴れる」と思ってる(笑)。会議のたびに「雨が降ったらどうするか」を議題に出そうとするんですけど、言うのも野暮なのかなって空気があって(笑)。カワシマさんって社員さんが「2月は雨少ないですしね」って言うんですけど、聞いたことなくないですか(笑)?

根建: 2月にめちゃめちゃ降るイメージもないし、少ないんじゃない(笑)?

文田: カワシマさんの一言でみんな納得しているのか、誰も雨に触れないです(笑)。

———環境の整った舞台で漫才をするほうが、コンディションは良いですよね。野外でネタをするのは慣れているとのことですが、抵抗はないのでしょうか?

文田: 自分たちのお客さんが集まってくれるなら、正直どこでやっても良いですね。自宅で単独ライブやるとか、昔の地下芸人がよくやってたじゃないですか。ああいうのも良いと思うし。いつか、都電荒川線(東京さくらトラム)を貸切りたいですね。満員電車みたいにお客さんに乗ってもらって、ピンマイク付けて電車のなかでただ喋るの聞いてもらうとかもおもろいかなと。そんくらいカジュアルに考えてます。

根建: 僕は野球場のブルペン(投球練習場)でライブやりたいですね。球場だと広すぎるんで、ブルペンで。お客さんも入れそうだし。

文田: ちょっとフィールド内に入ってる、ちっちゃい客席とかは?

根建: あー、それもめっちゃ良い。

文田: みんなヘルメットして野球見てるところ。

根建: 砂かぶり席みたいなとこね。

本当に提案してくれるマネージャー

———2019年にM-1ラストイヤーを終えて以降、囲碁将棋さんのメディア露出がどんどん増えているように感じます。

文田: そうですね。M-1後に露出増えるって、けっこう珍しいっすよね。コロナ禍に入ってライブ配信がはじまったのと、『情熱スリーポイント』(GERA)がはじまったのと、YouTubeで絶景漫才をはじめたのがポイントな気がします。これらきっかけで冠番組がはじまったこともあるし、自分たちが発信したことで仕事が増えたのが良かった。これまでとは違う層のお客さんに知ってもらえたのが良かったのかな。

根建: あと、一昨年の年末くらいから今のマネージャーになったのもデカいと思います。

文田: たしかに。なにか出てみたい番組とか言うと、「一応提案します」って言ってくれるんですよ。

根建: マジでそうっす。だから、僕ら1曲も持ってないけど、いつか『ミュージックステーション』に出してもらえる可能性あります(笑)。

文田: この前、僕がひとりで行くバラエティ仕事があったんですよ。そしたら相方が、ボケですけど「なんで俺はダメなんですか?」って聞いてて(笑)。マネージャーが「提案します」って言ってくれたんですけど、こういうのって本当は提案してないと思ってたんですよ。でも現場で、プロデューサーに根建の写真見せて「次があったら……」って提案してたんです。で、本当に嫌な感じで断られてました(笑)。悔しそうに僕のほうを見て「提案したってことだけ根建さんに伝えてください」って言ってました(笑)

根建: 提案すりゃ良いってもんじゃない(笑)。

文田: あれを見て、「本当に提案してくれてたんだな」と思いましたね。

———囲碁将棋さんが「やりたい」と言ったことを叶えようとしてくれるマネージャーさんなんですね。

根建: そうですね、間違いないです。

文田: めっちゃ俯瞰で僕らを見てくれているんで、「これは出ておいたほうが箔つく」とか「この仕事はやらなくて良いと思うので断っておきました」とか、ブランディングをしてくれている感じがします。

仲間とのつながりが仕事に

———20年間いろんな経験をしてきたなかで、今特にワクワクを感じるのはどんなお仕事ですか?

文田: 僕は月1回やってる「大宮セブンライブ」ですかね。メンバーが仲良いし、企画もマンネリ化してないし。大宮セブンも、いろんなところに呼んでもらえるようになったきっかけのひとつだと思います。初めて『アメトーーク!』に出れたのも、マヂカルラブリーがM-1優勝したあとの大宮セブン芸人だったよね。

※2021年2月18日(木)放送:「(祝)M-1優勝記念‼ 大宮セブン 〜不遇の劇場ユニット 知ってます?〜」

根建: 大宮セブンの人たちって、勝手に誰かが結果出すんですよ。マヂカルラブリーとかすゑひろがりずとか。そいつらに僕らは食わしてもらってます。

文田: なんか、持ち回りで誰かが火を入れてる感じだよな。大宮セブンだけじゃなく、同期まわりもそう。サルゴリラがキングオブコント優勝したりね。

根建: マジでそうっすね。仲良い芸人が売れると、そいつらがメディアに呼んでくれるんですよ。

文田: 大宮セブンや同期とのつながりで、出れている感じがありますね。

根建: 「囲碁将棋が引っ張る」も、いつかやりたいですね。

———根建さんは、特にワクワクする仕事はなんですか?

根建: 昨年末にやった、NGK(なんばグランド花月)での単独ライブはワクワクしましたね。初めてNGKで単独をやらせてもらって、めっちゃ興奮しました。やっぱ吉本に所属している以上、NGKって聖地みたいなところなんですよ。そこで自分たちのイベントをやらしてもらったことで、「吉本芸人」になれた気がします。「NGKでやらしてください」って言っても、全員がやれるわけではないと思うので。


★2024年2月の「大宮セブンライブ」★
2月21日(水)19:30開演 @大宮ラクーンよしもと劇場
・客席チケットはコチラ
・配信チケットはコチラ 

お客さんが卒業しないくらいのちょうどよさで

———囲碁将棋20周年となる2024年、どんな年にしたいですか?

文田: すごろくで言う「一回休み」の年でも良いのかなと思っています。これまでは躍進したい、コマを前へ進めたいと思ってましたけど、20年目は立ち止まっても良いかな。で、ゆっくり後ろを見たり前を見たりしたい。プライベートでは大型バイクの免許取りたいですね。

根建: 取れるだろ。

文田: いや、けっこう大変なんだよ。教習所行く時間とかないし。

根建: どういう年にしたいかなぁ。決して、今に満足していないわけではないんですよ。

文田: ジャイアンツの放送に副音声で出る?

根建: 具体的だな(笑)。自分のなかでは「20年やれた」っていうこと自体が、意外とうれしいんです。「お笑いやっててよかったな、間違ってなかったな」って思えるときがたまにあるんで、そういうことをたくさん感じられる1年にしたいですね。

文田: あんまりやりすぎるとね、お客さんが卒業しちゃいそうな気がするんですよ(笑)。同い年くらいのお客さんが多いんで、20周年をブワーっと駆け抜けるとお客さんが「これで卒業だな」って思いそう。だから、セカンド(THE SECOND)優勝するとお客さんが卒業しちゃいそうなんだよな。

根建: 僕らが「いつか国立競技場で単独ライブやりたい」って言っても、そんなこと求めてる人いないと思うんですよね。僕らのお客さんは、たぶん「国立競技場を埋める囲碁将棋」を見たいわけじゃない。野音がギリギリだと思います。生涯で一番デカい会場なんじゃないですか?

文田: そうかもな。お客さんは、僕らのガソリンみたいなもの。エンジンがあってもガソリンがないと車って動かないですよね。あんまりスピード出すとガソリンが無くなっちゃうから、気を付けないと(笑)。

根建: 本当にそうかもしれないです(笑)。

———20周年だからと派手に活動するのではなく、お客さんがついてこれるスピードで進もうということですね。

文田: 「いつか国立競技場でやるぞ!」って言うけど、結局やれないぐらいで良いかも。だからセカンドも優勝したいけど、ギリギリ負けても良い(笑)。「すごいウケたのに負ける」くらいの芸人でいたいですね。良い意味で、達成しない人。

根建: 僕らがなにも達成しないから、後輩たちがイジってくれるんだと思うんですよ。優勝とかしてたら、名前出してくれないんじゃないかな。優勝していない、良い感じのイジリ具合のところにいたい(笑)。

———お客さんにとっても後輩芸人にとっても、世話したくなる存在ということでしょうか。

根建: そこっす、多分(笑)。

囲碁将棋 PROFILE

左:文田大介
右:根建太一

★公式プロフィール:https://profile.yoshimoto.co.jp/talent/detail?id=2784
★公式YouTube:囲碁将棋 Official YouTube Channel
★公式Instagram:igo.sho
★公式X:@IGOSHO185

文, 編集:堀越 愛

撮影:ヘンミモリ