2024.03.20
表向きには大喜利ライブ、実は「秘密結社Q’Xの集会」!?不気味で奇妙、だけど笑える“全員が共犯者”の新感覚イベント【『回答者』長﨑周成×神谷圭介×広屋佑規 インタビュー】
2024年3月24日(日)、草月ホールにて『回答者 ~赤坂7-2-21の集会~』が開催される。
『回答者』は、表向きには“大喜利により物語が進む”ライブと告知されている。だが公式X(@KAITOUSHA)を見ると、そこには「実は我々、秘密結社Q’Xの結社集会です」との記載が。また、紙袋を被った不気味な人々の姿も度々ポストされている。一体、『回答者』とはどんなライブなのだろうか?実態は観客だけでなく出演者にも説明されておらず、ライブ本番まで詳細はわからないという。
『回答者』を企画したのは、放送作家の長﨑周成。2023年6月に第1回を開催し、第2回に向け新たに2名が仲間に加わった。ストーリーレーベル「ノーミーツ」の広屋佑規と、コントグループ「テニスコート」のメンバーであり「画餅」主宰の神谷圭介である。製作サイドと観客が“共犯関係”となり、大喜利を回答する芸人を待ち受けることになるという第2回『回答者』。果たして、このライブの目的とはなにか、そして長﨑が広屋・神谷に協力を呼び掛けた背景とは?
忘れ物のイヤホンがきっかけに
———皆さんの『回答者』での役割を教えてください。長﨑さんは『回答者』の企画者でもありますよね。
長﨑周成(以下、長﨑): そうですね。昨年6月に第1回公演を立ち上げて、第2回である今回は企画全般を監修しています。神谷さん・広屋さんというプロフェッショナルのふたりと一緒に『回答者』の中身を詰めたり、方向性がブレないよう調整したり。
———神谷さんはどのような役割を担っているんですか?
神谷圭介(以下、神谷): 脚本・演出で参加しています。『回答者』は大喜利イベントではありますが、僕は「お芝居パートをどう強化できるか?」という部分でお話をいただきました。なので、特にお芝居パートがこのイベントのなかでどうあるべきかを考えています。
——広屋さんはいかがですか?
広屋佑規(以下、広屋): 僕はプロデュースの領域で入らせてもらっています。第1回『回答者』を観て「面白いな」とは思いつつ、「なにかもっとできることがありそうだ」と思ったんですよ。普通の演劇やお笑いライブとは異なる体験を考える……ということで、SNSでの宣伝等もふくめ『回答者』全体の世界観をプロデュースしています。
長﨑: 広屋君とは以前一緒に仕事をしたことがあって、たまに飲みに行って近況報告をし合う仲だったんです。1991年生まれで僕と同い年ということもあり、「いつかガッツリ仕事をしてみたい」と思っていて。『回答者』の第2弾をやろうと決めたとき「あ、ついに広屋君と一緒にできるじゃん」と思って依頼しました(笑)。
広屋: うれしいですね(笑)。
———第2回でご一緒することを見据えて、第1回公演に広屋さんをお呼びしたんですか?
長﨑: いや、そのときはそこまで考えていませんでした(笑)。でも、「ノーミーツで作品づくりをしている広屋君が『回答者』を観たらどう思うんだろう?」と気になってはいましたね。実は第1回公演のあと、広屋君が会場にイヤホンを忘れて帰ったんですよ。それをうちの会社まで取りに来たとき、感想を話してくれて。「一緒にやりたい」と思ったのはそのときですね。イヤホンのおかげです(笑)。
広屋: わざと落としたんじゃ?ってぐらい良いタイミングでしたね(笑)。
長﨑: そういう仕事の取り方もあるのかも(笑)。
「大喜利×演劇のパッケージ」の挑戦
———第2回『回答者』は、どんなイベントになる予定ですか?
長﨑: 僕らの狙いというか「こう感じていただけたら幸いだな」と思っているのは、「恥ずかしさはないけど“体験できる”大喜利ライブイベントにしたい」ということですね。お笑いライブって、芸人さんが舞台上で表現したことを、お客さんは一方的に観ていることしかできない。でも『回答者』はそうではなく、お客さんも体験できるようなものにしたいと思っていて。その方法を模索しながら準備を進めています。
———「恥ずかしさはないけど“体験できる”」とは?
長﨑: お笑いライブで、よくお客さんに「どこから来たんですか?」とか振ることがあるじゃないですか。僕は、それをやられるのがすごく恥ずかしくて嫌なんですよ(笑)。「体験できる」と言うと舞台上から振られるようなイメージを持たれるかもしれないけど、そういうタイプの恥ずかしい思いはさせません(笑)。そうではないけど、お客さんにも一緒に「ライブをつくってる」と思ってもらいたいなと考えています。
———第1回公演を終えて、「お客さんにも体験してほしい」と思うようになったのでしょうか?
長﨑: そうですね。第1回公演をやって「大喜利×演劇のパッケージっていろんなことができるはずなのに、一方通行だったな」と思いました。もっと膨らませられるはずだけど、自分ひとりでは絶対に思いつけない。だからこそ各分野のプロと組んだ方が良いと思って、おふたりに声をかけました。
———広屋さんとは元々お知り合いだったとのことですが、神谷さんともつながりがあったのでしょうか?
長﨑: いや、ご一緒するのは今回が初めてです。神谷さんのことは「めちゃくちゃ面白い脚本を書く方」だと思っていて、ダメ元でお声がけしたら快諾いただけました。神谷さんにご相談したいと思った理由は、『回答者』が持つ面白みを踏まえて一緒に内容をつくり上げてくれそうだと思ったから。出役としても魅力的なので「出演もしてほしい」と思いつつ、今回は脚本でご一緒させていただきます。
神谷: お声がけいただいて、最初は戸惑いがありました(笑)。でも、元々僕も“台がないところに頑張って石を置こうとするような作業”は好きなんです。長﨑君からは、「第1回と同じではない、異なる形を探している」というニュアンスでお話をもらいました。芝居パートと大喜利が合わさる先にどんな形があるんだろう?ということを1から考えていく作業は、難しい反面「面白い」と思いながらやらせてもらってます。
———これまで、大喜利とお芝居を融合させるような取り組みは経験がありますか?
神谷: ないです(笑)。
長﨑: この世にあんまりないんじゃないかな(笑)。
神谷: 芸人さんが、どうやって“回答者”としてこのアトラクション的なものに乗っかってくれるのか?期待と不安が入り混じってます。
———広屋さんはなぜ長﨑さんの誘いを受けたのでしょうか?
広屋: 僕は普通のお芝居ももちろん好きなんですけど、ただ“芝居を観る”だけではなく、そこに“体験”が加わったり“見方”に工夫があったりすると、より物語が面白く味わい深くなるなと思っているんです。だからこそ、そういう作品づくりもたくさんしてきました。そのうえで第1回『回答者』を観て、「大喜利の答え方に物語性が加わることで今までにはないイベントになるんじゃないか」という狙いがすごく伝わってきたんです。大喜利イベントは数多あるけど、『回答者』は素直に「着想が面白い」と思いました。だからこそ、「もっとできることがありそうだな」とも思ったんですよね。第1回は芸人さんが『回答者』の世界に巻き込まれていく様子がすごく面白かったんですけど、せっかくならお客さんも巻き込めるとより広がっていくんじゃないか?と。最初に長﨑さんと感想戦をしたときは、なんなら「第2回は劇場じゃなくて良いんじゃない?」みたいな話も出てたよね。
長﨑: 廃病棟とか、廃ホテルとかね。
広屋: 場所を変えることで世界観を広げるのも良いんじゃない?という話題で、すごく共感し合えて。僕が面白いと思うところと近しい感じがあったのもあり、第2回に僕も参加することにしました。
秘密結社Q’Xの主宰は、今もっとも旬な人物?
———通常の演劇作品やネタの場合、稽古を通して本番前にある程度完成が見えると思います。一方『回答者』は、本番にならないと完成が見えないですよね。
神谷: こんな怖いこと、普通はしません(笑)。
長﨑: お芝居パートが含まれる作品で、こんなに余白があるものってあんまりないですよね。
神谷: そうですね。あと、シンプルなお笑いライブだったらわかりやすく「笑い」という目的があると思いますけど、演劇だと余白がある分「お客さん自身が勝手に汲み取って楽しめる」という魅力がある。演劇と大喜利が合わさった『回答者』だからこそ、お客さんはただ“見る”だけでなく“余白を考えながら”楽しめる。それが面白みになりそうだなと思います。
———なるほど。……となると、『回答者』を観に行くお客さんは、どんな心持ちでいたらいいのでしょうか?
広屋: 僕個人の意見ですけど、お客さんには本当に「秘密結社Q’Xの集会に参加してほしい」です。なんというか、みんなは知らないけど自分たちだけが知っている面白さを体験するみたいな……。第1回『回答者』の企画で僕が好きだったのが、公式アカウントが鍵アカで、そのなかでだけ情報を出していくというコンセプトだったんですよ。今回も同じことをしているので、クローズドで限られた場所に同じような面白がり方をしている人だけが集まって、そのみんなが一堂に会す場に足を運ぶ……。『回答者』は、観終わったあとに「自分たちだけの楽しみを味わえた」みたいに思ってもらえたら良いなと思っています。
神谷: 大喜利イベントが数多あるなか、『回答者』を料理でたとえると「素材は一緒だけど味わいは違う」……みたいなイベントになると思います。僕らも実験的にイベントをつくっているので、お客さんも「面白みを見つける」という視線で会場に来てもらえたら良いなと。参加してくれている皆さんと一緒に、進化の仕方を探っていくような……。“回答者”という、大喜利をする“行為”をタイトルに付けたイベントがどう進化していくのか。それを「みんなに目撃してもらおう」という側面があるのかなと思います。
長﨑: 感覚的な話で言うと、お客さんには「良い秘密基地を見つけたな」という気持ちになってもらえたら良いなと思っています。「友だち同士だけの内緒」というクローズドなワクワク感、そういう良さがあるのかなと。暴露ライブ的な意味ではなく、みんなでひとつの秘密を共有し合える場所というか。
———では、ライブに行く人は「演劇やお笑いライブを観に行く」という心持ちというより、なにかを「体験しに行く」みたいな気持ちでいるのが良いんでしょうか?
長﨑: とはいえ、お客さんがなにかやらされるとかはないので安心してください(笑)。
神谷: お客さんに絡むタイプのお笑いや演劇ってありますけど、僕もそういうのは苦手(笑)。身が固くなるような思いはさせないので、安心して来ていただきたいですね。
———お客さんは、参加者でありつつ、傍観者でもいられる?
広屋: そのうえで、共犯関係も生まれる。その絶妙なバランスを突くイベントにしようとしています。
———言える範囲で、第2回『回答者』の見どころを教えてください。
広屋: いろいろ隠しながら進めているから、見どころを話すのが難しいんですよね(笑)。
神谷: 本番まで詳細は明かしませんが、『回答者』を進行してくれる存在がいるんですよ。今もっとも“旬”な方をQ’Xの主宰としてお呼びできたと思います。そこは見どころのひとつですね。
広屋: あと『回答者』の公式Xが、鍵アカなのに2,400人くらいフォロワーがいて、もはや“プチ仲間”みたいな関係になっています。ライブ当日に皆さんにやっていただきたい約束事を発表したりしているので、そういったところも是非見ていただきたいですね。観客の皆さんと共犯関係になるという、その体験はとても楽しんでいただけるんじゃないかと。なんというか、「来るなら今だぞ」と思います(笑)。思わず友だちに「回答者のアカウント見ておいた方が良いよ」と言いたくなっちゃうぐらいの体験を作れたら良いなと思ってます。
製作サイド・観客・出演者の共犯関係
———『回答者』は、昼公演にひつじねいり・パンプキンポテトフライ谷さん・ナユタ、夜公演にAマッソ加納さん・9番街レトロ・ダイヤモンドが出演します。なぜこのメンバーに出演オファーしたのでしょうか?
長﨑: 「ライブ自体を楽しんでくれそう」と思うメンバーにお声がけしました。先ほど「お客さんとの共犯関係」という話が出ましたが、出てくれる芸人さんとの共犯関係という側面もあるので。会場の一体感を生んでくれそうな方々にお声がけさせていただきました。
———お芝居パートを牽引するメンバーとして、贅沢貧乏の青山祥子さん、ノーミーツのオツハタさん、劇団「地蔵中毒」の三葉虫マーチさん、八木光太郎さんが出演されます。なぜこの俳優陣にオファーされたのでしょうか?
神谷: 今回お願いした俳優さんたちは、すごくちょうど良い温度感のお芝居を提供できる方々です。しかもそれぞれがまったく異なるキャラクターだし、良いバランスの4名にお願いできたという気がしています。
広屋: 先日俳優陣と一緒に読み合わせを行ったんですが、イメージ以上でした。本読み段階なのにだいぶ良い塩梅で僕らがやりたいことを表現してくださって、これから稽古を重ねるのがめちゃくちゃ楽しみですね。
神谷: 俳優陣は、シーンごとに異なる様々な役を演じることになります。4人でいろんな役を回していくんですけど、その折り合いもつくメンバーになっていると思います。
長﨑: 俳優さんたちも、こういうライブって多分初めてですよね。
広屋: 俳優さんたちも本番までどういう回答が来るかわからないですからね。
長﨑: そうですよね。昼・夜公演では、「出演者が違う」以上に異なる味が出そうです。
物語における「笑い」のパワーとは
———神谷さんは、普段から芸人さんと一緒に作品づくりをすることが多いですよね。
神谷: 自分でも、まさかこんなに芸人さんとご一緒することが多くなるとは思っていなかったんですよね(笑)。GAGの福井君からは、ずっと「カルチャー」と言われていて……
広屋: カルチャー?
神谷: ずっと、カルチャーいじりをされているんですよ(笑)。謎の言葉である「カルチャー」を表すにあたり、わかりやすい存在が僕なのかなと。福井君に言わせると、「カルチャーの幻影」が僕なんだそうです(笑)。
芸人さんには芸人さんのお笑い道があるけど、僕はどちらかというと、お笑いとは違う道筋……たとえばマンガや演劇や音楽とか、“カルチャー”路線のなかにある笑いの要素を作品づくりに活かしてきた感じがあります。お笑いの現場に行ったら僕は「演劇の人」だと思われるし、演劇の現場に行ったら「芸人さん」と思われる。だからどこに行っても門外漢で……(笑)。今回も「演劇かお笑いかよくわからないヤツに声かけてみよう」ってなった感じでしょう?
長﨑: 『回答者』は大喜利ライブだけど、ちゃんと役者さんにも入っていただきたい……そう思ったとき、この領域を走っている人があんまりほかにいなかったんですよ。芸人さんに脚本を書いてもらってもめちゃくちゃ面白い話にはなると思うけど、でも企画内容的には役者さんの力があってこそ。そう考えると「神谷さんしかいない」と思っていました。
———ノーミーツさんの作品を見ていると、ところどころで笑いの要素を感じます。作品のなかに笑いの要素が入ることで、どんなパワーが生まれるのでしょうか?
広屋: 作品のなかに笑いがあることによって、お客さんとグッと距離が近くなる感じがあります。ノーミーツの作品はこれまでに無かった見方をしてもらうことが多いので、お客さんも「どんなふうに楽しんだら良いんだろう?」って構えちゃうことがあると思うんです。ガチガチにお芝居をつくって見せるより、笑いが入ることで安心できるというか。ノーミーツを立ち上げた当初はコロナ禍なのでZoomで演劇をつくっていたんですけど、コメディ要素があることで新しいフォーマットも馴染みやすく、親しみやすくなったと思います。僕自身がそもそもコメディ好きということもあるんですけど、笑いにはそういう良さがあるなと思いますね。
ターゲットは「コンビニでシュークリームを買っちゃうような人」?
———最後に、どんな方に『回答者』に来てほしいか教えてください。
神谷: 普段大喜利ライブに通っているような方には、もちろん来ていただきたいですね。
長﨑: そうですね。大喜利が楽しめるイベントになると思うので、普段から通っている方にはぜひ来てほしい。あと、大喜利を見ているときに起きるスカッとした感覚が好きな方にも来ていただきたいですね。大喜利を見ていると、「それ正解!」みたいな爽快な回答が出ることがあるじゃないですか。『回答者』でもそういう瞬間が訪れるんじゃないかと思っているので、大喜利で起きる爽快感が好きな方にも注目いただきたいです。それから、仕事が終わって疲れ果てた帰り道、コンビニでシュークリームを買っちゃうような人(笑)。そのくらいの救いがあるイベントだと思います。
神谷: そういう救いを求めて来てくれたらいいですよね(笑)。もちろん、演劇やお笑いのライブを観たことがない方にも来ていただきたい。アトラクションを体感しに来るみたいな感じで観ていただきたいです。
広屋: お笑いライブの「なにも考えず笑える2時間」ってめちゃくちゃ貴重ですよね。笑うことによって気持ちが楽になるという魅力がある。『回答者』はお笑い×物語の企画だから、「しんどいことがあったから笑いに行ってみるか」と気軽な感じで来てほしいです。あと『回答者』に来ていただくと、Q’Xという組織の集会に参加することになります。来ていただいたら、想像以上の不気味かつ奇妙、だけど満足度の高い時間が待っていると思うので、好奇心のある方は現地で観ていただきたいですね。
PROFILE
左:広屋 佑規
・X:@hiroyayuki
・ノーミーツHP:https://no.meets.ltd/
中:神谷 圭介
・X:@kamiya_keisuke
・画餅HP:https://www.emochi.info/
右:長﨑 周成
・X:@shuuuuuusei
・チャビー:http://chubby.work/
文, 編集:堀越 愛
撮影:イトウ
INFORMATION
『回答者~赤坂7−2−21の集会~』
●日時:2024年3月24日(日)
【昼の部】15時半開場/16時開演 予定
【夜の部】18時半開場/19時開演 予定
●会場:草月ホール(東京都港区赤坂7丁目2−21)
●MC:紙袋をかぶった謎の男
●出演者
<芸人>
昼公演:ひつじねいり、パンプキンポテトフライ谷、ナユタ
夜公演:Aマッソ加納、9番街レトロ、ダイヤモンド
<俳優>
昼夜共通:青山祥子(贅沢貧乏)、オツハタ(ノーミーツ)、三葉虫マーチ(劇団「地蔵中毒」)、八木光太郎
●料金
【客席観覧】3,800円(税込・全席指定)
【配信】2,500円(税込・枚数制限なし)
●チケット販売リンク
【客席観覧】https://w.pia.jp/t/kaitousha2/
【配信】http://w.pia.jp/t/kaitousha2/ ※配信は3月20日(水)18時より販売開始