紙袋を被った人々が集う集会、不気味なのに笑える大喜利ライブ『回答者~赤坂7−2−21の集会~』【「秘密結社Q’X」主宰・上田航平 終演後インタビュー】

2024年3月24日(日)、大喜利ライブ『回答者~赤坂7−2−21の集会~』が開催された。

『回答者』は表向きに「大喜利で物語が解かれていくライブ」と告知されていたが、公式X(@KAITOUSHA)には「秘密結社Q’Xの結社集会です」と怪しげな記載が。観客はもちろん大喜利に挑む芸人たちにも詳細が伏せられたまま、当日を迎えた。

『回答者』受付の様子。スタッフは全員紙袋をかぶっており、会場には奇妙な雰囲気が漂っていた

『回答者~赤坂7−2−21の集会~』は、同日に昼の部・夜の部が開催された。いずれも軸となるストーリーは同じだが、出演芸人が違うため、ライブはまったく異なる雰囲気になっている。いち公演だけでも十分楽しめるつくりになっているが、昼・夜公演の違いを見比べてみるのもまた面白い。

〈配信チケット〉
昼の部:https://pia-live.jp/perf/2411479-001
夜の部:https://pia-live.jp/perf/2411479-002
※販売期間:~4月7日(日)21時/視聴期間:~4月7日(日)23時59分

昼の部に出演した芸人。左から、ナユタ(ホリコシ・オノハラ)・パンプキンポテトフライ谷・ひつじねいり(細田・松村)
夜の部に出演した芸人。左から、9番街レトロ京極・ダイヤモンド野澤・Aマッソ加納・9番街レトロなかむら・ダイヤモンド小野

また、『回答者』において重要な鍵を握ったのが役者陣。秘密結社Q’Xには、救いを求める人々から多種多様な悩みが寄せられていた。役者陣はそれらの悩みを実演し、芸人たちを『回答者』の世界に誘っていく。

役者陣。左から、オツハタ(ノーミーツ)・青山祥子(贅沢貧乏)・八木光太郎・三葉虫マーチ(劇団「地蔵中毒」)

そして、大喜利ライブ『回答者~赤坂7−2−21の集会~』……もとい「秘密結社Q’Xの集会」を実施するにあたり、もっとも重要な人物が“秘密結社Q’Xの主宰”とされる謎の男。彼の正体は集会終盤まで明かされず、芸人・観客を翻弄することとなった。

秘密結社Q’Xの主宰。紙袋を被った謎の男
本番がスタートし、なにも知らない出演者たちが舞台上に連行される様子
観客たちも紙袋を被り、集会に参加。芸人たちが紙袋を取ると、この光景が広がっている

ワラパーでは、「秘密結社Q’Xの主宰」という大役を担った男・上田航平に終演後インタビューを決行。

秘密結社Q’Xの主宰として、観客にポーズ指導をする上田航平

インタビューのため楽屋に行くと、そこにいたのは2公演を終え興奮冷めやらぬ様子の上田。紙袋を被ったまま2公演を走り抜けたこともあり、酸欠気味なのか、頬が上気している。“自身の素性を明かさないまま本番が進行する”という新しい取り組みに対し、上田が感じたこととは?

秘密結社Q’Xの主宰・上田航平 終演後インタビュー

———本番を終えて、率直な感想を教えてください。

上田 航平(以下、上田): これまではあんまり感じたことのない気持ちになっています。今まで出てきたライブは自分の素性がわかっている状態ではじまっていますが、今回は素性を明かしていない。今は「走り切った」という感じでしょうか……。あと、昼公演の反省を活かし夜公演で急遽演出を変えたりとてんてこまいでした。気付いたら2公演終わってましたね……でも、楽しいライブでした。

芸人たちに上田の正体をはっきり明かすことはなく、物語が進行した

———「これまではあんまり感じたことのない気持ち」とは?

上田: 思っている以上に「気付かれないんだ」と思いました(笑)。「知らない人がMCをやってる」という空気がずっと流れていたので、「早く暴露したい」という気持ちでやっていましたね。

———何度か「MCは〇〇さんではないか」……と疑惑が出る場面がありましたね。

上田: そうなんですよ。「そんなわけないじゃない!!」、と(笑)。誰が出ているのかわからない状態でライブが進んでいくのは、斬新でしたね。

“最近暴露等を行い某事務所を抜け、急にコンビ解散することになった方”の「相方ではないか」……などと疑われていた

———出演依頼が来たときは、どう思いましたか?

上田: そもそも、僕はあんまりMCをやったことが無いんですよ。でもMCとはいえ「秘密結社Q’Xの主宰」という役柄があったので、出演を決めました。あとコンビを解散したので、仕事を選んでいる場合じゃないという思いもあります(笑)。「なんでもやってみよう」という前向きな気持ちでチャレンジさせていただきました。

———上田さんは昨年11月に解散発表をし、直後にコントを観るためアメリカに行っていましたよね。大喜利はアメリカにもあるんですか?

上田: ありました。ライブ中のコーナーで「アメリカにもっとも影響を与えた人物は?」というお題が出て、出演者が「捕まった大手映画会社の社長の名前」を答える……みたいな感じでした。固有名詞で笑いを取る文化なのかな。

寄せられた悩みにちなんだお題に答える形式で、芸人たちが大喜利を回答

———日本の大喜利とも、共通点はあるのでしょうか?

上田: いや、日本の大喜利は異質ですね。アメリカでは、ここまで文化として成熟してはいないと思います。あくまでもライブのワンコーナーですし、そんなにひねったお題でもないし。『回答者』では、僕の解散までお題になってましたよね。日本の大喜利は細分化しすぎ(笑)。すごい文化だなと思います。

上田は2023年11月にゾフィーを解散した

———『回答者』を振り返って、特に印象に残っているハイライトを教えてください。

上田: みんなが僕に気付いた瞬間ですかね。黒幕になることってあんまりないですから。真犯人側に立てた瞬間は、昼公演と夜公演で全然空気感が違ったんですよ。というのも、全然面識のない後輩のほうが、意外と解散をガンガンいじってくる(笑)。でも解散の辛さを知っている人は、意外と大喜利に答えられなかったり……。僕はライブを進行しつつ、空気感の違いを感じていました。僕としては笑いにしてもらって全然良いんですけど、距離の遠い人が言いたい放題言っている一方、距離が近い人ほど逆にいじれない。2公演やって「こんなに違うんだ」と思いました。僕の収穫としては、「みんな親身になってくれて優しいな」という気付きがありました(笑)。

ゾフィー解散を止めるためのアイディア(一例)

———今回は芸人だけでなく、役者の皆様が重要な役割を担っていました。共演してみていかがでしたか?

上田: いやぁ、すごかったです。あんなヤジを飛ばされながら演じるって、すごい(笑)。集中力も必要ですし、全力でやらないと面白くないじゃないですか。皆さん全力で面白くしてくれて、プロだなと感じました。

役者が演じている最中、フリーダムにヤジを飛ばす芸人たち
役者は演技中で先輩芸人たちが真剣に回答を考えているのに、小道具が気になりすぎる無邪気なナユタ

———最後に、『回答者』未視聴の方に向けてメッセージをお願いします。

上田: 両公演見たほうが、違いを感じられて面白いと思います。あと、昼夜で奇跡的に同じ回答だった瞬間もあるんですよ。そういうのも是非観てほしい。2公演それぞれ盛り上げ方が全然違ったので、比較するとめちゃくちゃ面白いと思います!

ライブ終盤には、もっとも優れた回答者「最高救済者」を決めるための審判も行われた。果たして、もっとも優れた回答者とは誰だったのか……?

文, 編集, 撮影:堀越 愛