【YOAKEMAE芸人】~file.2 無尽蔵~ 人生の岐路に立つ二人「一緒に芸人になりたいけど、決めるのは本人だから」

『さらば青春の光 東ブクロの学生芸人YOAKEMAE』(ラジオ関西)、4月18日放送のゲストは「無尽蔵」。東京大学の落語研究会に所属する現役学生芸人です。収録直後の二人に、お話を聞きました。

無尽蔵(左:野尻 佐央、右:山際 勘太)

東ブクロさんの印象「プロの声量と間」

――収録お疲れ様でした!今の感想を教えてください。

山際 勘太(以下、山際): こんなこと言っていいのか分かんないですけど、下ネタが出てきて……嫌でした(笑)。普段真面目な環境にいるもんですから。「来た!芸人の世界だ!」って思っちゃいましたね。

野尻 佐央(以下、野尻): まったく同じこと思いました。「うわー、僕、大学生なのに~!」って(笑)。僕たちは生活を捨ててないんで。

山際: そうですね(笑)。まぁ、良い経験だったかな。

――下ネタの話題が出ることは、打合せでは言われなかったんですか?

野尻: そうですね。完全に騙されました。

山際: 先輩方に、裏で僕らのことを聞いてくれていたみたいで。これが「業界」っていうんですかね、すごいなと思いました(笑)。

野尻: こんなことも言わなきゃいけないのかと‥…(笑)。

――東ブクロさんとやりとりしてみて、いかがでしたか?

野尻: めちゃくちゃ緊張しました。

山際: 東ブクロさん見たら、緊張しましたね。

野尻: 声の出し方とか、めちゃくちゃプロだなぁと思いました。最適な声量と間で喋ってて。「あ、プロってこうやってやるんだ」とは思いましたね。

山際: なに喋ろうか考えて本当に緊張してたんですけど、始まったら東ブクロさんが誘導してくれたんで。やりやすかったです。すごくありがたかったなと思います。

――この番組のことは、出演依頼が来る前からご存じでした?

野尻: 『お笑いナタリー』で見て、知ってました。(「学生芸人」がテーマということに対して)「えっ!?」って思いました(笑)。「大丈夫?」って。

山際: すごいっすよね。

野尻: 「ラジオ関西」と聞いてたんで、関西の学生芸人が出るんだと思ってたんですよ。出演依頼が来たときは、「なんで僕たちが?どこで知ってくれたんだろう」と思いました。

山際: よくよく聞いたら、大会(『ガチプロ2020』)で優勝したことがきっかけみたいで。びっくりしましたね。

野尻: 緊張しちゃうんで、びっくりよりも不安が勝ちました。

山際: 僕は「ラッキー!」と思いました(笑)。在学中にラジオ出れるなんて。

プロか就職か。学生芸人のリアル

――用意してきたのに、本番で話せなかったエピソードはありますか?打合せとは違う収録内容だったと思うので……。

野尻: 大学でどんな勉強してるのか聞かれるかなと思って、話す準備してました。東大って、入学後の成績で進む学部が決まるんですよ。僕は西洋史を勉強してるんですけど、ここは東大でも1番下くらい。内容も「古代マケドニアの王様の墓を研究して、誰のお墓か考えよう」みたいな……。(興味が持てなくて)勉強に身が入らないんですよ。だから、今の僕にとって楽しいことはお笑いだけなんです。

山際: 僕は、(収録で)けっこう話せました。僕は大学院に進みたいんで、お笑いだけでなく勉強も頑張りたいんですよね。

――収録でもお話がありましたが、野尻さんは卒業後も芸人を続けたいんですよね。対して、山際さんは大学院への進学を考えているとか。

山際: そうですね。良いところに就職できるなら、(芸人になるより)そっちの方が良いのかなって。野尻は「芸人にならないか」と言ってくれるんですけど……自分の中で踏ん切りがつかないというか。結論を出しきれてないんですよね。

――収録中のネタ見せで、東ブクロさんが褒めてくれていましたよね。プロから言われて、気持ちが動いたりはしないんですか?

山際: サークルのライブで、目の前のお客さんを笑わせられていることに満足しちゃってる自分がいるんですよね。素質を持っているから有名になりたいとか1番になりたい、っていう気持ちはそんなになくて。お笑いはひとつの「経験」として、大学生活を楽しんでる感じなんですよね。

野尻: 彼の人生なんで、何も言えないですね……。

山際: 芸人になりたいやつもいて、現実的に進学や就職したいやつもいる。人生の岐路にいるみんなが、どうなっていくのか……本当にリアルなタイミングですね。

野尻: 芸人になるって、ある種、頭のおかしいことだと思うんで……強引に誘うことはできないなと思います。嫌々やってもしょうがないし。それだったら、お笑いじゃない好きなことをやったほうが良いと思う。……けど、まぁ、一緒にやりたいんですよね。僕は。

――だいぶリアルですね……。二人は今何年生ですか?

山際: この4月で4年生になりました。

――じゃあ、まわりは就職活動中ですか?

山際: 早い人は3年の夏くらいから動き出して、今の時期に内定決まってる人もいっぱいいますね。

野尻: 僕は、就活まったくしてないです。卒業したらフリーターにでもなるのかな。山際は大学院に行く予定なんで、大学卒業後も引き続きお笑いやろうよと言ってます。

――ご家族は、芸人になることを反対しないんですか?

野尻: 僕の親は、全然反対しないですね。お兄ちゃんが漫画家目指してたり、妹がアイドルやってたりもしてるんで……「好きなことやれば?」って感じです。でも、「いっぱい勉強して東大にまで入ったのに、良いの?」っていう雰囲気はあります。良いところに就職できるんじゃないの、って。

山際: 僕は、親に大学でお笑いやってること言ってなくて。……バレてたんですけどね。僕が芸人になることは、予想もしてないんじゃないかなと思います。関西から上京してきたということもあって、口には出さないけど、「関西に戻って就職してほしい」という雰囲気は感じますね。

野尻: 山際にとって、芸人になることって相当大それたことなんですよね。僕は「なるっしょ!」みたいな感じなんで。この溝はどうも埋まんないですね~。

山際: (親は)「自由に選んだら良いよ」と言ってくれるんですけど、関西に戻ってほしいという空気は感じます。すごく。

野尻: 山際は上京してきてるんで、何かを背負って来てる感じがあるんですよね。

こんなに面白いやつ、就職して良いの?

――相方の尊敬しているところはありますか?

山際: 書くネタがめっちゃおもろいです。僕も、高校の頃は漫才のネタ書いてたんです。僕は、賞レースで優勝した人の(ボケ・ツッコミの)型を使って書いてたんですけど、野尻は全然そういうことはしない。あんまり他の人が思いつかないようなネタを書いてくれるんで、純粋にすごいなと思います。

野尻: 山際は、顔が面白いっていうのがまずひとつ(笑)。最初から「面白い人がいるなぁ」と思ってて。僕はもともと関西弁が好きで、関西弁の人と組みたいって思ってたんですよ。動きも面白いし、「こいつしかいない」と思って山際と組んだんです。

山際: (収録で)東ブクロさんに、彼女がずっといないこといじられて複雑な気持ちなんですよ……。面白い顔だからこそお笑いでは輝くかもしれないけど……。

野尻: 僕はネタ書くの好きですけど、ネタ書ける人間なんて、世の中にいくらでもいるんですよ。でも、山際は一人しかいないから。極論、僕なんか芸人にならなくて良いから、山際だけでもなれば?って思います。

――そのくらい、山際さんに才能があると思うんですね。

野尻: そうですね。

山際: たまたまこの顔だったっていう。(顔はネタと違って)作り出せないからね(笑)。

野尻: 僕自体はそんなに面白い人間じゃないというか、ちょっとネタが書けるくらいなんですよ。山際だけでも芸人になれば良いのになぁ。

――もし一緒に芸人になれなかったとしても、山際さんが辞めちゃうこと自体が悔しい、と。

野尻: 使命感というか……「良いの?山際、就職しちゃうよ!みんな!」って。こんなに面白いやつ、就職して良いの?って。だから一緒に芸人になりたいと思うんですけど、まぁ、決定するのは本人だから。何にも言えないですよね。

山際: 人生の、まさしく岐路ですね。

野尻: 本当に岐路ですね。自分が面白い人間じゃないから、面白い山際と一緒にやってギリギリ、お客さんにウケてるんだと思うんですよ。だから、どうしようって僕はずっと思ってます。

山際: でも、こんなこと言ってますけど、こいつ周りからすごい愛される人なんですよ。東大合格したときの動画とか113万回再生(2021年4月10日現在)されてるし、今回のタレコミも野尻のほうが多いし。なんていうんですかね、みんなと仲良くできる人間なんですよ。だから、(自分とじゃなくても)うまくやっていけると思うんですけど。

「野尻の東京大学合格発表(現役と一浪)」野尻佐央チャンネルより

野尻: いやー、無理無理無理。やっぱ、山際がいないとダメなんですよ。僕。

――聞いてて、切なくなってきました……。

山際: (笑)。すみません、本当に真剣に二人で考えてることで。

野尻: 割とホットな話題なんですよ。4年生になったタイミングだし、「どうする?」って。

――芸人を続けるかどうかのリミットは、いつになるんですか?

山際: 僕が大学院に行ったら、リミット延長ですね。

野尻: モラトリアムみたいな。でも大学院に行っても、途中から就活始めないといけないんですよ。だから、あと1~2年ですね。

山際: そうね。

――では、これから1~2年活動を続ける中で、考えが変わるきっかけもあるかもしれないですね。

野尻: まぁ、どうですかね……。今回のラジオ収録みたいに、プロの芸人さんと関わる機会もたまにあるんですよ。プロがMCをするライブに出たりとか。そこでアドバイスをもらったりもするけど……でも、山際は煮え切らないですよね。

山際: やっぱり、苦労話も聞きますし……。

野尻: なにがマイナスに転ぶか分からないんで。「こんなんならやりたくない」みたいな……今日だって、下ネタの話が出ちゃったし……

山際: (笑)

野尻: 良いことばかりではないじゃないですか。

山際: いやいや、今日ラジオに出れたことはありがたいですよ(笑)。

ガリベンの真面目なお笑い「これから東大落研が来る!」

――「無尽蔵」だからこその強みって、なんだと思いますか?

野尻: 僕らは東大なんで、結局ちゃんとしてるんですよ。人間が。

山際: 頑張って受験勉強してきてますからね。

野尻: お客さんを置いてきぼりにしたくない、人に優しいネタを作りたいとは思います。結局ガリベンがやってるんで、そこの真面目さはあると思いますね。

山際: そうですね。こういう機会をいただいたのも、「東大だから」というのがあるのかなと思うので、単純に得してると思います。なにか振られたとき、難しいことを言って返すとかもできますし。やっぱり人よりも持ってるカードが多いのかなというのは、活動していて感じますね。あと、周りにいる人たちが面白い。いろんな道を究めてる人がいるんで、プロフェッショナルと話せるのは東大で良かったなと思うことです。

ネタを披露する無尽蔵

――最後に、「YOAKEMAE」リスナーやこの記事を読んでいる方に伝えたいことはありますか?

山際: 東大落研の先輩で養成所に進んだ人もいるし、これからどんどん面白い人が入ってくると思うし、是非サークルに注目していただきたいですね。外のライブに出て頑張ってる後輩もいますし。

野尻: これから「東大落研が来るぞ!」っていうのはお伝えしたいです。

山際: ライブにも是非来て欲しい。面白いものをお届けします。

取材 文:堀越 愛、写真:リカコサカキ

PROFILE

<無尽蔵>
「東京大学落語研究会」所属。

左:野尻 佐央
1998年8月14日生まれ。東京大学文学部。

右:山際 勘太
1999年6月23日生まれ。東京大学農学部農業資源経済学専修。

『YOAKEMAE』無尽蔵 出演回

「東京大学落語研究会」情報

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