2026.09.03
「自分は強欲な人間」……コンビ解散後、新たな一歩を踏み出すライブに。【テツロー ファーストライブ『満たされない男』インタビュー】
2025年4月、若手筆頭の有望株だったコンビ「キャプテンバイソン」が解散した。
お笑いを完全に断ち切る時期を経て、元・キャプテンバイソンのテツロー(高野哲郎)は現在、社会人兼ピン芸人として活動をしている。

解散後、テツローはどんな想いで日々を過ごしていたのか。そして10月15日(木)に開催予定のファーストライブ『満たされない男』は、どんなライブになるのか……。新たな一歩を踏み出そうとするテツローに、話を聞いた。

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期待してくれる人の存在があり、踏みとどまった
———2025年4月にコンビ「キャプテンバイソン」を解散し、現在はピン芸人として活動しています。約1年半の間、どんな気持ちの変化がありましたか?
解散してすぐは、とりあえず「一回休みたい」と思ってました。コンビ時代の5年間は全力を注いだので、体感で10年ぐらいやった気持ちだったんです。だから俺の勝手な体感で「あと5年余ってるから、ちょっと休んでも良いかな」と。マネージャーさんはいろいろ提案してくれたんですけど、僕は「休みます」の一辺倒で(笑)。解散後、最初の1ヶ月は完全にお笑いを断ちました。ひとり旅で沖縄に行って、ゆっくり過ごしたりもして。だけどどこかで「物足りない」って気持ちもあって……かといってコンビ時代と同じ勢いでやったら嫌になっちゃうかもと思って、ピン芸人「テツロー」として週1くらいのペースで舞台に出はじめました。

———コンビ解散後、事務所を離れるという選択肢もあったと思います。それでもプロダクション人力舎に在籍し続けたのはなぜですか?
芸人を辞めたり完全に休業したりすることも、すごく考えました。でもこの人(マネージャー)がすごく熱くて、いろいろ言ってくれるんですよ。俺もゴリゴリの運動部出身だし、情に厚いところがあるから(笑)。無碍にはできないなと。
———マネージャーに言われて印象に残っていることはありますか?
なにか印象的なひとことがあったというより、ずっと声をかけ続けてくれたのが大きかったです。なにか名言を残しておけば良かったですね(笑)。
【マネージャー】たしかに(笑)。テツローは、芸歴2年目ぐらいからすでに面白かったんですよ。本当はマネージャーとして担当したくて立候補したんですけど、僕よりも若手の社員が担当することになって。その後もずっと担当したい気持ちは変わらず、解散話を聞いたときも止めましたけど、結局解散することになってしまいました。でもテツローは人として才能があるし、社長とも話して「辞めさせるのはもったいない」と。
マネージャーの熱さが行き過ぎて、そんなことひとことも言ってないのに「高野さん(テツロー)が別の事務所に行こうとしてる」っていろんな人に話してました。
【マネージャー】行くと困るから、行かないように(笑)。

———かなり期待されていますね。期待されることについては、どう思っていますか?
本当は苦手なんですけど、30歳も超えたし「苦手」とか言ってられることばかりじゃないなと(笑)。期待されなくなったら寂しいでしょうしね。子どものころからデカくて落ち着いてたんで、それだけでいろんな仕事を押し付けられてました。無理やり生徒会に入れられたり、部活で「あいつだけじゃ危ないから支えてやってくれ」と副キャプテンさせられたり。人間関係の間に入るのは嫌なんですけど、親父もそういうタイプらしくて。結局似た感じになるんでしょうね。
———解散後、お笑いへの熱量に変化はありましたか?
お笑いは、結局一回も嫌いにはならなかったですね。好き度合いは変わっていなくて、お笑い以外の時間を増やした感じです。もともと好きだったひとり旅とか映画を観る時間とか、それまで減っていたものを戻しました。

———活動を減らしていた時期、芸人のネタは見ていたのでしょうか?
ネタを見る頻度は減りましたね。賞レースの決勝しか観ない、ぐらいになりました。YouTubeではじめしゃちょーとかヒカキンを観てましたよ(笑)。コントを見て、気持ちが動いたら嫌だなって……また熱が入って空回りするのも嫌だし、お笑いを嫌いになるのも嫌だし。自分のなかで、バランスをキープする必要があったんです。
———当時、相談していた人はいましたか?
いや、沖縄にひとりで行ったときに、自分のなかで整理しちゃったかもしれません……でもザ・ギースの尾関さんはドトールで働いたことがあるという共通点で仲良くて、解散してしばらくしたタイミングでわざわざ呼び出してくれました。そこで「絶対辞めないほうがいい」って言ってくれて。「オリエンタルラジオの藤森さんを初めて見たときぐらいの輝きがある」とか(笑)。そんなわけないと思いつつも、そう言ってくれる人がいたから、完全に辞めるっていう選択肢は出てこなかったですね。辞めるにしても今じゃない、という感じで。

社会人と芸人のバランス
———現在は、芸人をしつつ社会人としても働いているそうですね。なぜこのスタイルになったのでしょうか?
がっつり芸人活動してる時期はライブが多くてバイトもほぼできない状態だったんで、借金ができてしまったんです。芸人としての活動量が落ちてもその借金は消えないままなので、「一回清算したい」と思って。それで、短期の倉庫仕事に応募しました。それが、気づいたら契約社員になってました。パソコンで応募したときに凄い文字が多くて読むのしんどくなってきて、読み飛ばすためにエンターキー連打してたらいつの間にか社員に。キーボードを押しすぎました(笑)。
———芸人一本だった時代と比べていかがですか?
ライブを断るときに「この日は無理なんで」って気軽に言えるようになりました(笑)。今は、自分的にちょうど良いペースでできてるなと思ってます。

———職場で、芸人時代の話はしますか?
芸人の僕を知ってる人は、誰ひとりいない環境なんです。そもそも8割ぐらい外国人で、言葉が通じないんですよ。「GOOD」とか「NO」とか、それぐらいでしゃべってます(笑)。芸人って、最新情報を取り入れている人も多いじゃないですか。でもこの前、一緒に働いてる人が“最新曲”みたいに歌い出したのが「こっちのけんと」の曲で(笑)。だいぶ遅れてるなと。もし芸人として僕が売れたとしても、3~4年後になにかで優勝してやっと「おめでとう」って言われるくらいかもしれないです(笑)。だから、お笑いに関する人間関係のストレスはマジでないですね。精神的にも良い感じです。
———兼業芸人をやることに、どんなメリットがありますか?
“行き過ぎない”ことですかね。ライブシーンにいすぎると、裏の裏というか、面白さを追求しすぎて奥に行き過ぎることがあるんです。でもライブシーンでウケるような喩えツッコミを会社でやっても、伝わらないじゃないですか。以前、倉庫に荷物を運んでいたとき、荷物が“デデン”と落ちたんですよ。それを見て「Netflixじゃん」みたいに言ったんですけど、全然ウケないんですよね。同じことをライブ中にやったら、多少の笑いは起きると思うんです。“行き過ぎない”ことって、これから先大事なことだなと気付きました。あと、けっこう身体を動かす機会の多い仕事なんですよ。体力がつきました。

ピン芸は「好きなことをやる時間」
———ピンで活動しつつ、ユニットで賞レース予選にも出ていますよね。そのバランスについてはどうお考えですか?
ユニットは、最初に「俺のリハビリに付き合ってくれ」って説明した上で組んでます。ピンだけやってると、コンビのネタづくりができなくなっちゃうかもしれないから。コンビを組みたいという気持ちはあるんですけど、「組もう」と踏み込むというより、今はなるべく一緒に楽しくやろうという感じです。
———今ユニットで組んでる相手が必ずしも本命というわけではなく、あくまでも「コンビのネタをやる」のがメインなんですね。
そうですね。ピン芸人って、こんなにユニットの話が来るんだなって最近思います。“コン活”みたいな感じで、定期的に新しいユニットの話が来る。これを繰り返してたら、誰ともコンビを組めなくなっちゃうんだろうなって思いますね(笑)。

———今、ユニットはいくつあるんですか?
実際にライブに出ているのが二つ、約束してるのが二つ。なので、四つですね。
———では4通りのコンビネタを考えるんですね。さらにピンのネタもあるので、バランスをとるのが大変そうです。
ピンは、自分の好きなことをやる時間につかってます。コンビのネタは、二人でやるからこそ面白いことを優先してますね。コンビ時代は完全に俺がつくってたんですけど、今思うのはコンビネタは「二人でつくるのが良いんだろうな」ということ。時間はかかりますけどね。

景色の良い山にしか登りたくない
———子どものころは、どんなお笑いが好きだったのでしょうか?
昔は厳しめの野球部に入ってて、放課後野球して、家帰ってすぐ飯食って夜練に行く……みたいな忙しい生活を送ってました。だからテレビを観るのは深夜で、当時好きだったのが『ココリコミラクルタイプ』や『ワンナイR&R』。たぶんこれが、お笑いとの最初の出会いです。ココリコ田中さんのボケの間というか、あの独特な雰囲気がすごく面白くて。それで、コントにも興味を持ち出しました。世代的に『めちゃイケ』とか『レッドカーペット』も観るようになってどんどんお笑いが好きになって……本格的に意識し出したのは、サンドウィッチマンさんがきっかけです。出てきた瞬間から面白いし、お二人がボケツッコミしている姿が本当に面白くてM-1を観るようになって。
一時期はお笑いにハマりすぎて、すべてのお笑い番組を録画して倍速で見てました。初期のドパガキだったんです、俺は。NON STYLEさんだけは元々早いので通常のスピードで見てましたけどね。で、ネタを見過ぎて、1回嫌いになったんですよ。それでネタを見るのをやめて、トークを見るようになって……小籔さんの独特な思想のお笑いにハマった時期もあります。
大学に入ったタイミングでお笑いから離れたんですけど、根っこに「お笑いが好き」っていうのがあるから、所属してたアカペラサークルの舞台で、歌と歌の間にコントをしてみたりして(笑)。東京でやってもウケたし、社会人があんまり面白くなさそうだなって気持ちも出てきて、就職ではなく芸人に振り切りました。まぁ今思えば、ウケるのは当たり前なんですよ。通常のアカペラライブでは起こらないことが起きてるから。

———ロールモデルとしている芸人さんはいらっしゃいますか?
最終目標は片岡鶴太郎さんですね。性格上、ずっとお笑いをやり続けるのは多分できないと思ってて。お笑いで一番を取りたいとは思ってるんですけど、しばらくしたら別のこともやりたくなると思うんですよね。
最終的な夢は、喫茶店を開くこと。喫茶店の夢は最後にとっておきたいから、それまで飽きないようにいろんなことをやってる感じです。賞レースの優勝賞金があれば、ちょうど喫茶店が開けるぐらいの計算なんです。だから賞レースで優勝して喫茶店を開くのが、完璧なルートですね。頑張ってお金を貯めて開くこともできると思うんですけど、それだと俺の人生としてはちょっとつまらない。好きなもので稼いで、好きなことにつなげていきたい。強欲な人間なんです。景色が良い山しか登りたくないというか。
———いつまでに夢を叶えていたいですか?
お笑いをはじめたのが25~26歳ぐらいなので、20年ぐらいはお笑いをマックスでやりたいですね。で、あとは喫茶店に集中。だから46歳ぐらいから喫茶店ですかね。コーヒーを淹れて、あいた時間に数学を解いて……やりたいことはたくさんあります。

とんでもない場所への一歩になるかも
———ファーストライブ『満たされない男』が10月15日(木)に開催予定ですね。
タイトル自体は『満たされない男』なんですけど、その前につく言葉も「第1回単独」、「ソロライブ」とか、いろいろ悩みました。でも自分のなかで、なかなかピンと来なくて。ゲストも呼ぶつもりだから「単独ライブ」って言うのも違うかなとか。散々悩んで、コンビ時代や解散後の2年を経て、俺個人としての最初の一歩っていう気持ちを込めて「ファーストライブ」にしました。本当はマーベル映画『ファンタスティック4』最新作(ファンタスティック4:ファースト・ステップ)から取って『ファーストステップ』にしたかったんですけど、ちょっと露骨すぎるので「ファーストライブ」に(笑)。

最近、自分のことを強欲な人間だなとすごく思っているんです。『満たされない男』というタイトルには、最近のモヤモヤを一旦出したいなという想いを込めました。ネタは4本くらいの予定で、ゲストを2~3組お呼びする予定です。……本当は「5本やる」と言いたいんですけど、苦しくなりたくないからいったん「4本」にしておきます(笑)。
———今回のライブをひとことで表すなら?
やっぱり「ファーストステップ」ですね。俺にとっての最初の一歩。一回気合いを入れて、ここから一歩目かな、という気持ちです。

———読者の皆さんに、メッセージをお願いします。
解散から2年も経ってしまったんで、あのころ応援してくれてた人たちが今どこにいるかよくわからないですけど、久々に顔を見に来て良いですからね。このタイミングでカムバックしてもらっても良いですし、もちろん今まで見たことなかった人にも見に来てほしいですね。この一歩が、とんでもない場所への一歩になる可能性もありますから。応援し続けてくれてるファンの方にも新しい方にも、友達にも、今の姿を見せられたらなと思ってます。ぜひ見に来てほしいです。
PROFILE

テツロー
・X:@hige_takano
・Instagram:hige_takano
・note:https://note.com/hige_tetsurooo
取材:シマダネズミ
写真・文:堀越 愛
INFORMATION

