40代になってまで、過去の功績を称えられたくない。【放送作家・長崎周成 インタビュー(後編)】

「笑いをつくる仕事」にスポットを当てて紹介する本コーナー。記念すべき第1回目は、放送作家の長崎周成さん。”なんとなくは知っているけれど、なんとなくしか知らない”放送作家という仕事について、お話を伺いました。

前編:どうやって放送作家になるか。企画の仕事はそこから始まっている。【放送作家・長崎周成 インタビュー】


4.どんな仕事をしてるんですか?

群雄割拠する世界で見つけた自分なりの突破口。

―YouTubeをはじめとするネットメディアの台頭によって、放送作家が担う仕事の範囲も広がってきていると思うのですが、具体的にはどんなことをされているんですか?

今、放送作家100人にこの質問をしたら、100人とも違うジャンルの回答をすると思います。それぞれ戦っているフィールドが違うので。フィールドによってけっこう変わるんですよね。

例えば、ぼくらよりも上の世代の作家さんたちはテレビを主戦場とされています。40代の作家さんたちはテレビの企画を考えるのがメイン。もうひとつ下の30代の作家さんたちはそれに加えて、ネット等を活用して若い人たちにどうやってテレビを観てもらえるかを考えていたりします。

20代後半のぼくたちは、テレビとネットのハイブリッド世代。地上波の番組もYouTubeもWEB番組も全部やります。今僕が担当している「田村淳のコンテンツHolic」という番組は、まさにテレビで様々なコンテンツを紹介するハイブリッドな番組だったりします。

そして、これから放送作家を目指す人たちは彼らの背中を見ていくことになると思うんですけど、もうひとつ下の20代前半の世代になると、テレビはほとんどやってません。YouTubeとネットの番組で生計を立ててます。しかもそれで食えてるんですよね。

―長崎さんの世代からテレビだけではなく、ネットにも進出するようになった理由ってあるんですか?

“責任感への渇望”だと思います。

大勢で作り上げていくテレビの現場において、ぼくたち若手作家は制作の一端を担うことしかできません。一方でネット系のお仕事の場合は少し立ち位置が違います。制作陣は最小構成。だから、良くも悪くも一人ひとりに責任が伴います。失敗しても自分、成功しても自分の責任になるんです。

実際、いま「ゴマキのギルド」という後藤真希さんのYouTubeチャンネルを担当しているのですが、入っているのはぼくと25歳の後輩作家だけ。現場にも行き、企画だけでなく、ディレクションもしています。 別に我々世代が、軒並み承認欲求が高いわけでもなく、みんなシンプルにもっと頼られたい、ディレクターや演者と二人三脚で一緒に作りたい、と思ってるんじゃないかなぁ。そんな思いと“20代のエネルギー”がかけ合わさってネット進出していくのだと思います。


5.今後、やっていきたいのはどんなことですか?

おもろいやん、これ!という衝動をカタチにしていきたい。

―テレビやYouTubeにとどまらず、新しいチャレンジを続けておられますが、笑いの仕事をつくるオンラインサロン「WLUCK」を立ち上げられた背景についてお聞かせください。

仲間とおもしろいことだけを突き詰める場として立ち上げたのがWLUCKです。

映像、音声、文章、イベントなど、「笑い×〇〇」の数ってきっとまだまだあって。実際、ラジオやイベントの他、LINEのグループチャットを使った企画など、WLUCKではいろんな企画が進行中です。そうやって的を絞らずに、おもしろいというジャンルでいちばん最初に「それを見つけてきたか!」っていうことを、みんなでつくりたいなって思ってます。

―長崎さんのWLUCKでの立ち位置は?

オンラインサロンを立ち上げたことで、周りの方々から「もう、そっちにいったんや、すごいね」って言われるんです。企画を選ぶ側であったり、みなさんに知見をお渡しするポジションにいったんだと思われてるみたいで。

でも、個人的にはそうはしたくないし、そうはなりたくない。みんなで企画やアイデアを出し合っておもしろいものをつくれたらいいと思ってるし、メンバーの中でも自分がいちばんおもしろい企画を出そうと思ってます。プロデューサーみたいにまとめる役に回りたいんじゃなくて、いちクリエイター、いち企画者としてやっていきたいんです。選ぶ側にまわったらつまらないし、成長も止まると思うんですよね。

―昨年2019年11月には20代の放送作家やクリエイターで構成されるチャビーという会社も立ち上げられましたが、それも同じような背景ですか?

そうですね。衝動的なおもしろいことをやりたいと思ったときに個人でできる活動の限界がどうしてもあるんですよね。規模感にしても、お金にしてもそうなんですけど。みんなで「おもしろいことをやろうや」ってなったときに実現できる組織・カタチがほしかったんです。

今年でいうと約20個のYouTubeチャンネル企画構成、生配信の番組、広告、Web番組など、チームとしてつくりあげることができました。

―周りに先駈けて新しいことに挑戦する理由を教えてください。

40代になってまで、フワちゃんの仕掛け人って言われたくないんです。フワちゃんとはずっと友達だし今までのことを感謝しているけど、個人的な目標でいうと、その時代、その時代で最大級におもしろい代表作がある人になりたいんですよね。本気でそこを目指すのなら数字と真面目に向き合ってるだけではだめ。

いつの時代もエンタメには衝動が大事だと思うので。ぼくは得体の知れないパワーがすごく好きで、芸人さんってそれがすごくあるじゃないですか。フワちゃんはその最たるもので、最初に会ったときから何かわからんけどおもしろいっていう。

学生の頃に漫才を始めたのもそうですけど、結局は何かを打算的に企んでるわけじゃなくて、ずっとそういう衝動の赴くままに突き進んでいるだけなのかもしれません。

<長崎周成さん|プロフィール>
1991年生まれ。29歳。兵庫県神戸市東灘区出身。株式会社チャビー代表。高校生のときにM-1に衝撃を受け、同級生と漫才コンビを結成。大学卒業後はテレビ制作会社を経て、放送作家に。テレビを中心に活動しながら2018年にはYouTubeで「フワちゃんTV」「フワちゃんFLIX」を開設。ワラパーの母体である笑いをつくるオンラインサロン「WLUCK」の発起人の一人でもある。

ライター:ことばのラジオ、撮影・編集:堀越愛宮下若葉

WLUCK CREATORS