【WEST ANTSストーリー-vol.7 ブルーウェーブ(後編)】東京遠征を経て「売れてる人のウケ方や立ち振る舞い」を知った ~西の地下で轟く、新たな笑いの息吹~

2021年4月、大阪のライブシーンで活動する9組18人の芸人によるユニット『WEST ANTS』が誕生しました。発起人は、大阪・西心斎橋で「BAR舞台袖」を営む加藤進之介さん。大阪のお笑いを盛り上げるべく、本当に「面白い」と思う芸人を集めました。(加藤さんインタビュー:大阪を「芸人が飯を食える場所」にしたい

ブルーウェーブの“基礎”を聞いたインタビュー前編に続き、後編では所属するユニット「WEST ANTS」のことを中心に話を聞きました。切磋琢磨するライバルができたことはもちろん、東京遠征で共演した“売れている”芸人を見て気付くこともあったという二人。ブルーウェーブが描くこれからとは、どういったものなのでしょうか。(インタビュー前編はこちら

【WEST ANTS ストーリー -vol.0-】大阪お笑いに、新たな息吹!芸人ユニット『WEST ANTS』とは

ブルーウェーブ(左:四番サード西澤、右:すみかわ)

「月15万」以上の努力は難しい

———今は大阪で活動されていますが、大阪でやり続ける理由はありますか?

四番サード西澤(以下、西澤): これがマジで、特に無いんですよ。……大阪の難波、心斎橋、梅田はちゃちゃって移動できるじゃないですか。東京は渋谷とか新宿とか、電車も混んでるし。あんなんやっていけないと思います(笑)。……ほんまに、特にそんなに理由はないです。

すみかわ: 大阪にいるからいるだけのことです。

———「東京に行きたい」みたいな願望もないですか?

西澤: 「東京行った方がウケるんちゃうか」とか、そこのレベルにまでまだ行ってないですね。大阪ですらろくに笑いを取れてないんで(笑)。

———「大阪のテレビに出たい」という想いはありますか?

西澤: そうですね。やっぱ、深夜に観てた賞レースは出たいですね。まだ今も続いてるやつなんで、あれ出るために松竹入ったから。

———それも含め、『M-1』など、賞レースに対する想いはいかがですか?

西澤: いや~、想いは強かったですよ。ただ、最初は「乗り越えられる高い壁」やって思ってたけど、近付けば近づくほど、「高いだけじゃなく分厚い壁や」って。で、最近になって「これは越えられへん壁や、無理じゃね?」って。……いやでも、優勝はしたいですよ。優勝したら安心して続けられるのかな、みたいな。「君たちは一生続けていって良いよ」って言われているような感じはありますけど、別にそこがすべてではないかな。それよりも、僕らが思うおもろいことをやっていくことのほうが大切かな、と。でもやっぱ、安心はしたいですね。ただ、目標を「月15万稼ぐ」で設定したがゆえに、それ以上の努力は自分の身体が拒絶反応を起こします(笑)。

———西澤さんにとっては、月15万稼ぐことが「売れる」ということでしょうか。

西澤: そうですね。僕の中では「15万」です。

———すみかわさんにとってはいかがですか?

すみかわ: 難しい話ですね。まぁ、もちろん(月収が)高ければ高いほど良いですね。

西澤: やっぱ、現実は見てまいますよね。15万でも厳しいぐらいの感じ。

すみかわ: (売れるというのは)やっぱり「みんなが知ってる」みたいなことじゃないですか?

西澤: それは、『広辞苑』に載ってる「売れる」の意味じゃない(笑)?

目標の芸人は……

———お二人が目指す芸人像はありますか?

西澤: 養成所入るときに「目標にしてる芸人いますか」って言われて、「海原やすよともこ」さんって言いましたね。やっぱ、あの人らの漫才ってもう、ほんまの日常会話でウケてるじゃないですか。あっこがやっぱ究極かなって。まあ、キャッチーでありたい。

すみかわ: 僕は、松竹入るときに「理想は爆笑問題の太田さん」って言いましたね。

西澤: 太田さん! へえ~。

すみかわ: 洗練された笑いなんですけど、一般の人が見たら全力ではしゃいでる感じの。そのように歳をとれたら良いなと思いますね。

———どんな言葉が返ってくるかわからない感じとか、ちょっと雰囲気が似てらっしゃるようにも思います。

西澤: 放送コードに触れるような強メンタルは持ってないですけどね(笑)

すみかわ: 攻めるか。

———お笑いをやっていて一番楽しいときはどういうときですか?

西澤: お客さんの笑顔が見れるときです(笑)。ほんまにそうですね。やっぱウケたら楽しいよ、もちろん。滑ってても、なんで滑ってんのかが分かったらもう、全然楽しいですよ。そこを改善したら良いだけなんで。だから、ウケたら一番楽しい。楽しくないのは、例えば客席にスマホいじってる人がおって、その光でネタどころじゃない……みたいなパターンでウケへんかったときとか。舞台出てる限りでは分かんないじゃないですか。そういうときはやっぱ、もどかしいですね。なんで滑ってるのか分からないから。

———では、今後「こういうことをしたい」という目標はありますか?

西澤: 特にそんなにないですよね、家でゴロゴロしてたら良い。

———すみかわさんはいかがですか?

すみかわ: 今は、毎回毎回のライブしか考えてないですね。確かにそう言われてみると、「将来何がしたい」とかあんまり考えたりしなかったです。

西澤: 僕が見る限り、こいつは楽屋とかで芸人とわいわい喋っていたいだけのやつなんです。こいつは芸人を友達やと思ってる。僕はほんまにライバルやと思ってるので(笑)。

最初はユニットに乗り気じゃなかった

———最初に「WEST ANTS」の話を聞いたときはどう思いましたか?

西澤: 最初に聞いたときは、正直「ほんまにやりたくない」って思いました。それまでは「WEST ANTS」が無い状態で「来年どうおもろなっていくか」を自分の中で組み立ててあったわけで。別にユニットが無くてもやっていけるんじゃないかなと。やることが増えてしんどなるんやったら、それはちゃうなって、最初はそんな乗り気じゃなかったんです。でも外部とのコミュニケーション担当とか全部こいつ(すみかわ)がやってるせいで、「WEST ANTS」について僕が聞いたときにはもう完成してて。加藤さん(Bar舞台袖)も、「あなたたちはそのままで良いから、あとは僕らに任してください。僕らがセッティングして売れさせるんで」って絶対に言ったんです。記憶力には自信があるんですけど、最近それ言うたら「言ってないって」(笑)。絶対に言ったんですけど(笑)。

すみかわ: 照れ隠しでしょう(笑)。

西澤: で、今はもう加藤さんにおんぶにだっこ。

———「WEST ANTS」が始まってからは、いかがでしたか?

西澤: ユニット名を決める会議みたいなのが最初にあったんですけど、これに2時間かかったんですよ。なんでも良くないですか(笑)? 1人1個案を出して多数決でやったら、15分ぐらいで終わるやつじゃないですか。それが2時間あったんで、僕は「無理や」って。

すみかわ: 合わへんなと。

西澤: で、1回「もう僕、これやっぱ無理です」って言うたんですよ。そしたら「にぼしいわし」のいわしさんに、飲みの席で「お前らが辞めるなら私も辞める!」って。……そんなん言われたらね(笑)。

———いわしさんに口説き落とされたんですね(笑)。

西澤: そのときね、いわしさん眼鏡かけてなかったんです(笑)。……まぁ、辞めないで良かったです。あの人、めちゃくちゃすごい人なんで。すごすぎるが故に、めっちゃ頑張ってはるんですよ。それを目の前で見せられるんで、「こんな頑張ってない俺やばいな」ってなる。いわしさんからネタのアドバイスいただいたり、実際めっちゃ助かってるので。

———すみかわさんは、最初ユニットの構想を聞いたときはどう思ったんですか?

すみかわ: 最初に言われたのは、「何人か集めてなにかしようと思ってるんですよ」くらいで、もうほんまに軽い感じ。なので「えへへへ」くらいやったんすけど(笑)、いやーびっくりしましたね、本当に。がっつりユニットにする感じじゃなく、「来年ぐらいから何組かでなんかやる感じなんですよー」くらいに思ってた。

西澤: うん、策士やな。ほんまにそんな感じです。そういうライブが月1ぐらいであるのかな? ぐらいだった。

ライバルなので誰も負けたくない

———「WEST ANTS」で活動してみて、メリットは感じますか?

西澤: フリーとか松竹とかだと、芸人の同期が少ないんですよ。でも同期で競い合ったら刺激になるじゃないですか。「WEST ANTS」は、向こうはそんな思ってないかもしれないけど、僕は「ライバルなので誰も負けたくない」と思えてすごく刺激になります。

すみかわ: ABCホールしかり、東京遠征しかり……普段は、多くて80人くらい、少ないと10人とか5人のお客さんの前でやってるんです。だから、大舞台に立たしてもらったらどんな反応だろうというのはありますね。

———東京のお客さんと大阪のお客さんの違いは感じますか?

西澤: お客さんは大阪と一緒やなと思うんですけど、東京だとテレビに出てるような芸人さんも一緒になるんですよ。そうすると、売れてる人のウケ方とか立ち振る舞いを見れるのでありがたい。僕ら、普段は売れてる人を目の前で見れないめっちゃかわいそうなやつなんで(笑)。「これくらいウケないとテレビに出られへん」とか、そういうのを知れるのはありがたいですね。

すみかわ: かわいそうですよ(笑)。僕も「東京に行ってどうなるんかな」とかめちゃくちゃ不安やったんですけど、大阪と変わらずだったんで良かったですね。

———最後に、この記事を読んでくださる方にメッセージをお願いします。

西澤: ライブに来ていただきたいですね。来てもらえたらもちろん全力で笑かすし、僕らの本拠地である松竹の角座が盛り上がってくれたらええかなと思ってます。最終的に角座で盛り上げたいと思ってるんで、角座に来てください。

すみかわ: ここまで読んでくれた皆さん、本当に素晴らしいです。よく見てくれましたよ! ……「そんなん言ってくれるなんて」って思ってるあなたは、素晴らしい人なのかもしれません(笑)。

【前編を読む】「リアリティの中で、どんだけ変わったことができるか」

取材 文:なかにし、写真:サトミメイ
編集:堀越 愛


<ブルーウェーブ|プロフィール>
松竹芸能。ユニット『WEST ANTS』に所属。

左:四番サード西澤
右:すみかわ

★プロフィール:https://www.shochikugeino.co.jp/talents/bluewave/
★公式YouTubeチャンネル:ブルーウェーブ.

PERFORMERS

  • すみかわ/ブルーウェーブ

    松竹芸能。WEST ANTS所属

    ・Twitter:@marinhiroaki

  • 四番サード西澤/ブルーウェーブ

    松竹芸能。WEST ANTS所属

    ・Twitter:@seabussnishi

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