【YOAKEMAE芸人】〜最終回 チームザリガニ&とうもろこし〜 大学お笑いは「一発逆転できる」場所。NOROSHI優勝チームに聞く、学生芸人の今

『さらば青春の光 東ブクロの学生芸人YOAKEMAE』(ラジオ関西)、3月20日放送のゲストは、大学お笑い冬の団体戦『NOROSHI』で優勝した「チームザリガニ&とうもろこし」。法政大学お笑いサークルHOSに所属する、海老車(コント)、現代仏具(漫才)、坊屋(ピン)からなるチームです。

約1年続いた【YOAKEMAE芸人】のインタビュー連載は、今回で最終回。急激に注目度が高まり、変化の渦中にいる学生芸人たちに「大学お笑いの今」について話を聞きました。

奥 左から、中村 俊介・大根 勇樹・佐伯 暸(海老車)
手前 左から、室田 真人(現代仏具)、高瀬 雅之(坊屋)

入部希望者が倍以上に

———2018年入学の皆さんは、大学生活の半分がコロナ禍でしたね。活動に制限があった一方、「大学お笑い」への注目度がグンとあがった数年でもありました。変化の渦中にいて、どう感じていましたか?

中村 俊介(以下、中村) 内々で活動してるつもりだったので、最初はこそばゆかったですね。最近だと、入ってくる時点で「モザンレーションのファンです」みたいに言ってる新1年生もいます。後輩が勝手にやってるネットラジオがあるんですけど、それを聴いてるらしく。

大根 勇樹(以下、大根): 学生芸人ファンが生まれてますね。

中村: 僕らが入った当時は、真空ジェシカさんとかもアングラの代名詞みたいな存在で。知る人ぞ知る存在でしたけど、今はみんな「真空ジェシカさんが好きで……」って言ってますね。HOSは人が増えすぎて、新入生切ろうとしてなかった?

室田 真人(以下、室田): 佐伯から電話かかってきた記憶あるよ。「人数増えすぎて後輩たち大変だからさ、もう切ったほうが良いんじゃない?」みたいな。

中村: ちっちゃく狭くやってたのに、注目度が上がって志望者が増えたことに反発してるというか。僕らが好きだった“地下”っぽいお笑いがウケなくなって、テレビ向けみたいなネタがウケるようになっちゃうんじゃない? みたいな。なんか、勝手に恐れおののいてました。

大根: 僕はそんなこと全然思ってなくて。もっとデカくなればいいと思ってたんで、良い感じだなと。

———サークルに入りたいという新入生は、以前に比べてどのくらい増えたんですか?

大根: 1.5~2倍くらいですかね。もしかしたら倍どころじゃないかもしれないです。

中村: LUDO(早稲田大学)は人が増えすぎて、LINEグループが3つくらいあるみたいです。追加できる人数の上限になっちゃって。

高瀬 雅之(以下、高瀬): 僕は、なんにも思わなかったです。人数が増えたところで、自分がやることは変わらないので。

大根: アスリートみたいなこと言ってる。

高瀬: ネタとか、自分がやることは特段変わらないので。

室田: 俺は、大学お笑いが“かっこいい”ものになってるのがちょっと……嫌過ぎますね。

佐伯 暸(以下、佐伯): それはちょっとあるな~。

室田: 所詮、お笑いじゃないですか。だけど「プロと違って限られた時間でやってる」とか、「青春」みたいなくくりが大学お笑いに入ってきて。そのせいで「大学お笑い=かっこいいもの」みたいに思われて人が増えてると思うんですけど、それって多分、プロに行くときに壁になっちゃうんですよ。かっこいいと思ってやってるお笑いは、俺は好きじゃない。

大根: まぁまぁ、これは本当に、個人の見解ですね。

中村: 最初は、はぐれ者みたいなつもりでやってたのに。

室田: そうなんですよ。それなのにちょっと結果残すと、チヤホヤされちゃう。

中村: 『YOAKEMAE』みたいなラジオだったり、取材していただいたり。

大根: あと、コロナ禍になって主催ライブが増えたんですよ。(活動制限により)ライブが減るから、ネタをやるには自分らで打っていかないといけない。

中村: 僕らが1年生のころは、主催ライブなんて4年生のスターみたいな人だけがやるもので、しかも1年に1回やるかやらないかみたいな感じだったのに。今は1年生でも「主催やります!」みたいな……それは悪いことでは無いんですけど。

大根: でも、最初は「なんでお前らがやってんだよ」とは思ったよね。時代を理解したら「こうやらないと無理なんだな」と思うようになったけど。

中村: そうしないと舞台に立つ機会が無いからね。

大根: 環境はめっちゃ変わったね。

———大学お笑いへの注目度が高まっただけでなく、コロナ禍もあって環境がだいぶ変わったんですね。

中村: そうですね。受け身だった学生芸人が、能動的にならないといけなくなって。自分でやらないとなにもできない4年間になっちゃうから。

大根: マジで行動力がカギになりましたね。

佐伯: 大会も増えたね。

大根: 大会、僕も開催したんですけど……

———開催ですか?

大根: はい。僕は事務的なことはなにもやってなくて「やろう」って言っただけなんですけど。

中村: 冬は団体戦(NOROSHI)しかないので、個人戦をやろうということで。「アルティメットレクリエーションフェスティバル」っていう大会を再開させて。

大根: あと、1年生が主催して、1年生だけの大会をやったり。

中村: 来年には、アマチュア向けのコントの大会ができるって話もあります。学生とアマチュア社会人の境界線もあやふやになってきてますね。

室田: 学生お笑いの歴史が積みあがってきて、今こんなふうに変わってきてるのはしょうがないっていうか、必然という感じがします。コロナとか無くても、こんなふうにならざるを得なかったのかなとか。

露出が増えて、賛否が生まれた

———この1年は特に、『YOAKEMAE』も始まりましたし『大学お笑いMONSTERS』(テレビ東京)もあって、注目されるだけでなく実際のメディア露出も増えましたね。

佐伯: 仲間がいっぱいメディアに出るのは、超楽しいっすね。めちゃくちゃ嬉しい。

中村: でも、たまに普通にTwitterに嫌なこと書かれたりすることもあって。いや、学生だからね? と思うこともあります。

大根: 批判的な意見が上がるのも、嬉しいっすけどね。

佐伯: 「誰々のほうが面白かった」とか書かれたりすることもあるけど、いろんな意見があるのも面白いと思いますね。

大根: 賛否があるのは良いよね。

中村: 賛否があるのは良いんですけど、Twitterって全世界に発信されるじゃないですか。僕はたまたまプロに行くんで言われても良いんですけど、社会人になるヤツもいるんで。

室田: メディアに出ると、やっぱり“否”が絶対増えるんですよ。それ自体は本当に嬉しいことだと思ってます。多分、今後は大学お笑いがプロの下位みたいになるし、下火になる時代が絶対に来ると思うんですよ。そういうときに、“否”の人たちがちゃんと「大学お笑いはクソだ」って言ってほしい。そしたら、また地下のお笑いみたいなところに戻ってこれると思うんですよ。

大根: マジで個人の見解だ(笑)。

———体感としても、注目度が上がってることは感じますか?

佐伯: そうですね。エゴサしてると、知らない人が海老車の名前出してくれてることがあって。すごいなと思います。

中村: 僕、知らない方からDMいただきました。「面白かったです、また観に行きます」って。

室田: あと、大学お笑いの人気が高まると、「ライブ観に来てよ」とか言いやすくなります。だから外に広まってるのもあるかもしれないです。

大根: 今後、「大学お笑い出身」がどっちに転ぶのか……

中村: もし俺が大学お笑い通ってなかったら、鼻についてるかもな。

大根: 俺も、高卒で養成所入ってたら……(大学卒業してから)「芸歴1年目? ふざけんじゃねぇ!」って思うかも。

中村: そういうのも絶対あると思うし、その通りだと思う。取り返しはつかないし、背負っていくしかない。

大根: まぁでも、面白いのが正義だからね。

中村: 結局ウケたら認めてもらえるんで。お笑いはそれが最高。

大根: そこはマジで良い世界。

欠けている部分を愛せるようになる

———まもなく、大学入学の季節です。これからたくさんの新入生がお笑いサークルの門を叩くと思うので、そういう子たちに向けてメッセージをお願いします。

高瀬: 僕自身がそうだったんですけど、「プロに行く勇気は無いけどお笑いには興味がある」くらいの軽い気持ちで入っちゃえるコミュニティなので、少しでも気持ちがあるなら入ってみると良いと思います。そうすることで、自分がやりたいお笑いが分かったり、いろんな経験ができると思うので。本当になんでもできる場所だし、学生芸人じゃないとできないこともあるので。

室田: お笑い好きだったら、1回演者側になってみると、今後さらにお笑いを楽しめると思います。やってみないと分からないことがたくさんあるんで。あと、学生芸人をやると絶対に自分を客観視しないといけないんですよ。人にどう思われてるか、突き詰められる。最初に養成所に行くと、作家さんとかに言われるわけじゃないですか。でも大学お笑いだと友達から言われるんで、受け止められるんです。

佐伯: 多分、学生芸人って就活弱くない。人間的にダメなところとかもめっちゃ言われるから。

室田: 自分が周りからどう思われてるか、どうしても考えなきゃいけない。

中村: 自分の良くないところを、どうしたら良く見えるようになるのか、とか。

大根: 就活してたら俺も内定取れたかな。

中村: 無理。反抗的な目をしてるから。俺みたいに朗らかな笑顔じゃないと。

佐伯: お笑いサークル入る人って、たぶん「ネタ書きたい」と思ってる人が多いと思うんですよ。でも、僕もあんまりネタ書いてないし、書かない人は書かない人なりの楽しさがかなりあるんです。プレーヤーとしての質を上げるとか、どう見せるかとか。「演じるだけで良い」と決めて入るのも良いと思います。

大根: それも才能だしね。

中村: 室田が「自分を客観視できるようになる」って言ってたけど、人の欠けてる部分を愛せるようにもなると思います。普通だったら「なんやねんこいつ!」って思っちゃってたヤツのことを、「おもしれーこいつ!」って思えるようになる。

大根: それまではないがしろにされてたヤツに、急にスポットライトが当たったり。

中村: そう。欠けてるところも愛せるようになるのが、お笑いの良いところだと思います。

大根: バイトで、平積みされてた皿を全部壊しちゃったことがあるんですけど……まぁ良いか、と。

中村: それは違う(笑)。

佐伯: なんで自分で愛してんだよ。

室田: ほかのバイトが失敗したときに、「面白いなこいつ」ってなるんだよ。

大根: あれ、違うか。

中村: なにに共感してたんだよ(笑)。

大根: 僕としては、サークル入るんだったら勝ってほしいですね。僕、単独とか主催ライブとかいろいろと好きなことやってますけど、やっぱり勝たないとダメなんです。正直、1年生とかに対して「お前がなにをしてんの?」って思っちゃうことあるし。僕は好きなことをやるために勝ってたみたいなところあるし、勝つことに貪欲になって良いと思う。

中村: たぶん、他のなにをやるよりも一番勝てるしな。勝つって、優勝だけじゃないから。

室田: 分かる。誰でもウケれるからな。

大根: 結果が出なかったとしても、やり続けることで好きなことできるポジション取れるし。勝ちを目指してやることで、なにかを得られると思う。

———今までの人生で負け続きだった人が、勝てるかもしれない場所?

佐伯: 本当にそうですね。中高うまくいってなくても、一発逆転できます。

高瀬: あと、演者だけじゃなく、裏方としてお笑いサークルを支えるのもありです。

中村: スタッフさんありきで回ってることがたくさんあるからな。(大会運営などで)大人とやりとりしたりもするし、サークルの裏方から芸人のマネージャーになった先輩もいるんですよ。ほかではできない経験してるよね。

———同じ学生ということで、支えられていることへの感謝も大きそうです。スタッフさんの苦労が分かる分、文句も言えないのでは?

中村: いや、言います。文句言うし、「なんなんあいつ」とかは日常茶飯事です。でもその上で、スタッフさんありきで回ってるんだってことはちゃんと理解してます。

大根: 最後にトゲ出す……

中村: トゲというか、きれいごとで終わらすのもあれなんで。

大根: 俺は、ちゃんと感謝してる。主催ライブで助けてもらってたんで、マジで感謝してる。

中村: 俺も感謝してるけど、かと言って大根がずっと「スタッフさんのおかげ」と言ってたわけではない。

大根: 言ってました、ずっと(笑)。僕は「音響照明はこの人にやってもらいたい」って思う人がいるんで、単独ライブやるときはその人を軸でスタッフを集めてもらったりもしました。スタッフさんのスカウトというか。

中村: 「次のライブ、音響〇〇らしいよ」みたいな会話はマジである。

大根: 『NOROSHI』の準決勝のとき、いつもお願いしている子がたまたま音響照明だったんですよ。マジで良かった! って安心しました。

中村: だから、スタッフだからといって演者と全く別物ではなくて、信頼関係も築けるし、スタッフならではの繋がりもある。楽しいと思います。

高瀬: お笑い好きでサークル入ってみたいけど、表舞台に立たなくても良いんだよなって人は、表も裏もどっちもあるってことを知ってほしいですね。見るからに演者しかなさそうだけど、いろんな役割があるので。

取材・編集 堀越愛

PROFILE

<チームザリガニ&とうもろこし>
法政大学お笑いサークルHOS 所属

奥左:室田 真人(現代仏具)
奥右:高瀬 雅之(坊屋)
手前左:佐伯 暸(海老車)
手前中:大根 勇樹(海老車)
手前右:中村 俊介(海老車)

『YOAKEMAE』チームザリガニ&とうもろこし 出演回

法政大学お笑いサークルHOS  情報

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