「あっち行っても幸せにな!」ういろうプリン最後の『激漫』をレポート

2021年1月29日(金)、「ライブ制作まによん」主催の『激漫』が新宿バティオスにて開催された。『激漫』は、リニア・ういろうプリン・魂ず・三福エンターテイメントが中心となり、2017年から開催されているお笑いライブ。この日でういろうプリンが解散するということもあり、劇場だけでなく配信でも多くのファンがライブを見守った。節目となったこのライブを、レポートする。

 

1月29日(金)の『激漫』は、お笑いファン、そして多くの芸人にとっても特別なライブだった。この日をもって、ういろうプリンが解散するからである。1月19日(火)に解散発表、その10日後にラストライブ。ファンにとっては、寝耳に水だった。心の準備ができないまま、この日を迎えた人も多かったのではないか。解散発表後、チケットは即刻完売。さらに生配信も300人以上が視聴(1月29日時点)。ういろうプリンの漫才を「関東トップクラス」と評する芸人も多かった。たくさんの人に見守られながら、ライブが始まった。

レギュラーメンバーが舞台上に登場し、オープニングスタート。ういろうプリン・内間は「最後にこの『激漫』を選ぶことができて、僕は本当に感慨深いですね」とコメント。続けて「今日で完全におしまいですよ。泣いても良いですよ」と客席に投げかけた。また、この日の新宿バティオスには、ういろうプリンを見送るべく出演者以外も多くの芸人が訪れていたそう。

左からリニア(しょうへい・酒井啓太)、ういろうプリン(内間一彰・丸山雄史)、三福エンターテイメント、魂ず(コバシ・翁長玄)
「エゴサの鬼」という、ういろうプリン・丸山(右)。解散発表の反響が大きく、驚いたそう
三福エンターテイメント。芸歴が長いと多くの解散を見送るが、いちいち悲しむのはキリがない。だが「ういろうプリンに関しては悲しまざるを得ない」
「引退と言うと後戻りできない。余地は残しておいてほしい」と言う丸山に、「ガチでダサいよ」とリニア・酒井が言う一幕も(リニアも解散を経て復活した経緯がある)。丸山がピン芸人として復活する未来も示唆された

『激漫』では通常、各コンビが新ネタをおろすことになっている。しかしこの日解散のういろうプリンは、特別に「丸山が選ぶネタ」「内間が選ぶネタ」「激漫メンバーが選ぶネタ」「お客さんが選ぶネタ」の4本を披露。その中には、ブルーセレブ(旧コンビ名)時代のネタも含まれている。

この日の『激漫』はういろうプリンの解散ライブという目線で見ている人も多いため、「どういう気持ちで(新ネタを)やったらいいんだろう」とリニア・酒井。出演メンバーもういろうプリンのネタを見たいが、新ネタの準備をしないといけない……という葛藤を示しながら、『激漫』ネタパートに突入。

ういろうプリンからういろうプリン!『激漫』スタート

トップバッターはういろうプリン。ブルーセレブ時代のつかみ「どーもー、ブルーセレブです。セレセレ」で漫才が始まった。「名言」をテーマにしたこのネタは、丸山が選んだもの。

ういろうプリン(内間一彰・丸山雄史)

次に登場したのは魂ず。「織田家」の家系図をたどりつつ、独自の視点からネタを展開。

魂ず(コバシ・翁長玄)

3番目は、リニア。「啓太のバスツアーをしよう」というしょうへいの言葉から、二人の攻防がはじまる。

リニア(しょうへい・酒井啓太)

4番目には三福エンターテイメントが登場し、まさに“この日限り”の漫談を披露。「M-1でういろうプリンが決勝に出た翌日のライブMC」という設定だ。二人をよく知る三福だからこそのリアリティあるネタに、グッときてしまった人も多いのではないか。

三福エンターテイメント

「(M-1)優勝おめでとうの拍手で!」という三福のフリで、再びういろうプリンが登場。客席からの大きな拍手に、内間が「非常にやりにくいですね」とコメントしつつネタへ。丸山が「おならのにおいを嗅いでほしい」とお願いするこの漫才は、内間が選んだネタ。

三福エンターテイメントが話した「昨日のM-1エピソード」を回収するアドリブも

6番目に登場したのは魂ず。2本目のネタは、「バスケのルール」がテーマ。

魂ず(コバシ・翁長玄)

7番目に登場したリニアの漫才は、しょうへいが啓太に「イメージビデオをつくろう」と誘うところからスタート。

リニア(しょうへい・酒井啓太)

8番目にういろうプリンが再登場。漫才のテーマは「女の子とデートをする練習がしたい」。これは『激漫』メンバーが選んだネタ。

ういろうプリン(内間一彰・丸山雄史)

紆余曲折の14年、ういろうプリンの歴史

企画コーナーのテーマは、「ういろうプリンを振り返ろう」。コンビ生活14年を折れ線グラフにし、過去を振り返った。

ホワイトボードに描かれたグラフ

2006年、22歳の二人は養成所で出会った。コンビ結成のきっかけは、なんと「丸山のひとめぼれ」。二人一組で行う授業で、丸山が内間に声をかけた。まだお互いを知らない中、声をかけた理由は「初恋の先輩に顔が似ていた」から。

オーディションで披露したという、キレのある内間の動き。講師陣は“ブチ切れ”だったそう。「内間くんはギリギリだったよ」と言われながら合格
尖っていたわけではなく、本気で「顔で選んだ」と言う丸山に、魂ず・翁長は「だとしたら変ですよ」とコメント

養成所時代は成績が良かった二人だが、所属後2年程は滑り倒していたそう。ういろうプリン(当時はブルーセレブ)の1期上であるリニア・酒井も、「当時はただの漫才をしていて、あまり印象が無かった」と言う。2年目のM-1で2回戦敗退した帰り道、「何かを変えなきゃいけない」と思い立った丸山が提案したのは「腕にシュシュを付ける」こと。その足で竹下通りに向かいシュシュを購入したが、すぐに「意味がない」と気づき外したそう。

M-1で3回戦に進出したのが3年目。同期の中でも、群を抜いて早かった。この時期から前説が増え、たくさんの番組に行ったそう。魂ず・翁長によると、「最初の頃は前説の仕事が入ると、ういろうプリンに話を聞きに行け」と言われていたそう。

当時のエピソードをリニア・酒井が暴露し、丸山が止めに入る場面も
女性絡みの意外なエピソードに、「笑ってくださいね」と丸山

その後、『漫才新人大賞』決勝進出・優秀賞獲得、『THE MANZAI』で認定漫才師と、上昇の数年が続く。が、当時やっていた毒舌漫才に限界を感じ始めたという内間。2014~2015年はなかなか結果が出ず、内間いわく「地獄期」。2017年は『M-1』2回戦で敗退したこともあり、「もう辞めよう」という状態に。マネージャーになかなか言えないまま、“くだりだけ数個決めた状態”でライブに出たところ異常にうけ、ここから息を吹き返したそう。これがその後の漫才の原型となった。

2018年は「決勝に行くつもり」だったという内間。「この1年は魔法にかかったような状態で、滑っても“どうせ売れるし”という精神状態」。が、準々決勝敗退で魔法が解けた

傍から見ると順風満帆だったういろうプリン。だが、少しずつ歯車がかみ合わなくなっていく。「辞めたい」という丸山に強く言えない内間。二人の間には、周りには見えない葛藤があった。

「2017~2018年は丸山が確変的に面白くなっていた」というリニア・酒井。丸山によると、「(舞台上でいじられたとき)それまでは何か返そうと思っていたが、できないことに気づき“拗ねる”ことにした」という

丸山はこの苦しい時期、「M-1までの1年契約」のつもりで頑張っていたそう。「もし決勝に行っていたら?」との問いに、「そうね、辞めなかったと思う。たらればになっちゃうけど」と回答。賞レースの時期によく内間と食事をしていた酒井いわく、内間はいつも「丸山としかやりたくない」と言っていた。この”良い”エピソードに、「(自分で言って)鳥肌が立った」と酒井。

リニア・酒井「内間は(丸山に指摘を)めっちゃ言うけど、実際はすごく深いところでつながってる」
丸山に良くなってほしくて「つい詰めちゃう」と内間。相方だから丸山が好きだと前置きをし「今後の人生、逃げてばかりでそこに幸せはあるのか?」という厳しい言葉も

今後のことはなにも決まっていないという丸山に、リニア・酒井は「辞めるの辞めちゃえば?」と囁く。解散後8か月で再結成した、リニア(元S×L)という前例がある。「(1度辞めたから)戻れないとかはなくていいと思う」と酒井は言うが、「もう決まってることだから」と内間。

「内間くんには(今後も芸人を)やってほしい。丸山とだからやる、というのはやめてほしい。俺とじゃなくても、違う人とまだ続けてほしい」と丸山。「内間くんは客観的に見て、関東で1番うまいツッコミだと思う。だったらもったいない。続けてほしいという気持ちがすごくある」と言う。「どういう人が内間に合うと思うか?」との問いには、「ネタが書ける人が良いと思う」と回答。ういろうプリンは二人ともネタを書けず苦労したので、(内間には)ツッコミに専念してほしいのだそう。

最後のネタに向かう直前のういろうプリン。落ちている時期も「お客さんが好きですとか面白いと言ってくれる言葉に励まされた」という二人

丸山「好きな芸人さんにはそうして欲しい(好き、面白いと伝えてほしい)ですし、これからの内間くんも応援してほしいなっていう気持ちが僕は1番強いです。内間くんは続けるんで」

内間「わかんないよ、俺が続けるか」

丸山「いや続けます」

内間「なんで俺の人生お前に決めらんなきゃいけないんだよ」

丸山「めちゃくちゃ感謝してるんで、ほんと。ありがとうございました」

内間「改名とかした時期は、頭おかしくなったんじゃないと言われることもあったんですけど。応援してくださる皆さんが、面白いとか言ってくれるとマジで明日のライブ頑張ろうってなるんで。どんだけ救われたか分からないです。僕ら。その言葉にね。なのでこれから先も、皆さんお笑い好きだと思うんで、いろんな芸人さん見ると思うんですけど、ほんとに応援してあげてください。マジでめちゃくちゃ力になってるんで」

丸山「みんな見てるんで。Twitterとか」

内間「本当に応援ありがとうございました。お世話になりました。ありがとうございます」

そして、最後の漫才へ。

 

「あっち行けよ!あっち行っても、幸せにな」

ういろうプリン、最後の漫才は「自転車の二人乗りをしたい」という切り口でスタート。これは、お客さんが選んだネタ。

内間「するわけないでしょ、おじさん同士で二人乗りなんて」
二人乗りするういろうプリン。客席からは、すすり泣きと笑い声
丸山「オンブオンブオンブオンブオン……」
「どうも、ありがとうございました」深くお辞儀するういろうプリン、そして鳴りやまない拍手

最後の漫才が終わると『激漫』メンバーが登場し、二人に花束が渡された。「最高だった」、「良い漫才だった」と声がかかる。

「ちょっとグッとくるもんあったなぁ。やばかった最後。丸山がブオンブオンブオンって言ってるとき泣きそうになった」と内間
『激漫』メンバーより、「あっち行かせる?」「あっち行かせましょうか」の声がかかり……

内間「あっち行けよ!あっち行っても、幸せにな」

丸山「はい」

メンバーと客席から、そして配信で観ていた方々の大きな拍手に包まれて、ういろうプリン最後の舞台が終わった

解散発表後、そして『激漫』ライブ終了後。SNSには、ういろうプリンの解散を惜しむ声が多数投稿された。ファンだけでなく、芸人からも。ういろうプリンは、お笑いファンからも同業者からも、心底愛されていた。二人とも今後のことは決まっていないそうだが、間違いなく伝えたいのは「あっち行っても幸せに」。これに尽きる。

内間さん、丸山さん、14年間お疲れ様でした!
ういろうプリン、ありがとう。

 

ライター・撮影:堀越 愛

WLUCK CREATORS