関西の学生芸人が大集合!『関西学生お笑いフェス』レポート

2021年9月18日(土)、大阪・難波にある道頓堀ZAZA POCKET’Sにて、『関西学生お笑いフェス』が開催された。MCににぼしいわしを迎え、立命館大学・京都産業大学・大阪芸術大学・同志社大学・関西大学・関西学院大学・佛教大学・近畿大学から16組、また「WEST ANTS」から学生芸人のガングリオン(クボは「WEST ANTS」、北村文化財は近畿大学落語研究会所属)が参加した。

『関西学生お笑いフェス』は関西の学生芸人による、新しいお笑いフェス。今回はその記念すべき一回目となった。主催者は、自身も学生芸人として活動する穂村ベイビースターダストとイシコの二人。

★穂村ベイビースターダスト・イシコ インタビューはこちらから:【YOAKEMAE芸人】〜file.12 イシコ&穂村ベイビースターダスト〜 芸人×裏方で切り開く!「関西アマチュアお笑いを盛り上げたい」

「関西の大学お笑いも、関東のように盛り上がってほしい」という思いから2021年4月に立ち上がったこの企画。新型コロナウイルスの影響で当初の予定から1ヶ月延期、また会場の変更などを余儀なくされた。関西のお笑いサークルが横の繋がりを持ち、交流を深める第一歩となったこのライブをレポートしたい。

お客さん入りすぎ!注目度大の学生芸人達とハイマン出身のにぼしいわし!

にぼしいわし(右:にぼし、左:いわし)

『関西学生お笑いフェス』はその名の通り、関西にある大学生がつくる、お笑いのフェスである。運営陣・演者共に学生で、開演前からあたたかい空気が漂っており、皆で作り上げる姿に期待が高まった。

MCとしてにぼしいわしが登場すると客席を見ていわしが一言、「入りすぎ!」。関西でも学生芸人に関心を持っている人は多い。ほぼ満席となった会場からは大学お笑いへの期待の高さが伺えた。ハイスクールマンザイ出身のにぼしいわしは今まで大学お笑いとあまり縁がなかったようで、「あんまりハイマンハイマンしないように」と、大学お笑いと対立関係にあることを匂わせつつ、楽しみであると話した。

フリップ、コントにしゃべくり漫才、多種多様な前半ブロック

トップバッターは立命館大学のANNO。「配色」をテーマにフリップネタを披露した。心地良い訛りでツッコんでいき、会場はANNOワールド一色に。

ANNO(立命館大学現代お笑いサークル「かわらんものたち」所属)

続いては同じく立命館大学の西田蟻巣。ピンのコントで一人三役こなす演技派だ。天使と悪魔の王道コントかと思いきや……、少し不思議な日常コントで笑いを誘った。

西田蟻巣(立命館大学現代お笑いサークル「かわらんものたち」所属)

三組目に登場した京都産業大学のハイライトは、しゃべくり漫才で爆笑をさらった。渡邉の飄々とした喋りと相馬のコテコテの関西弁が対照的なこのコンビは『M-1グランプリ2021』一回戦を通過した実力派である。

ハイライト(左:相馬、右:ぎよる/京都産業大学「落語長屋」所属)

四組目は大阪芸術大学の桃源。シンプルで無駄のない構成はまさにコントの理想郷であり、おしゃれな笑いで客席を魅了した。

桃源(左:向井真那斗、右:山本大貴/大阪芸術大学「落語研究寄席の会」所属)

五組目は同じく大阪芸術大学の言い得て妙。演技力が高くはつらつとしたキャラクターの3歩散歩。に堀井が的確にツッコんでいくことで笑いを誘った。

言い得て妙(左:堀井椋平、右:3歩散歩。/大阪芸術大学「落語研究寄席の会」所属)

続いては同志社大学の鬼とドラゴンが登場。神田が演じるキャラクター達はどれも憎めなくて面白く、笠原の臨場感あるツッコミで笑いはさらに倍増していった。

鬼とドラゴン(左:神田、右:笠原/同志社大学「喜劇研究会」所属)

七組目は同じく同志社大学のアップルドンドン。演技力が高く、慌てる栗林にしっかりとした児玉のツッコミが馴染む。静かなバーを舞台に、爆笑をかっさらった。

アップルドンドン(左:児玉、右:栗林/同志社大学「喜劇研究会」所属)

八組目は、特別枠として同志社大学から『学生M-1』チャンピオンのベグBOGが登場。初っ端からフルパワーで漫才を披露し、会場は大爆笑の連続。王者の貫禄を見せつけた。

ベグBOG(左:葭本、右:ヨモギダ/同志社大学「喜劇研究会」所属)

前半最後を飾るのは「WEST ANTS」からガングリオン。一人空回りする北村文化財とそれにキレキレでツッコむクボの掛け合いに客席は笑いで包まれた。

ガングリオン(左:北村文化財、右:クボ/「WEST ANTS」所属)

各大学のサークルの特徴を紹介する企画コーナー

各大学を代表して京都産業大学「落語長屋」からハイライト、大阪芸術大学「落語研究寄席の会」から桃源の山本・言い得て妙の堀井、同志社大学「喜劇研究会」からアップルドンドンの児玉・鬼とドラゴンの神田が登場。

にぼしが堀井に命名、「君は今日から“おげむ”だ」

同志社大学は、さらば青春の光・東ブクロがMCを務める『学生芸人YOAKEMAE』(ラジオ関西)で他の学生芸人から「同志社の喜劇研は他大との交流を好まない、トガっている」と言われてしまったことに対し、「全員人見知りなだけで本当は仲良くしたい」と弁解した。

※参考:#20「同志社にちょっと物申したい!? 関西のお笑いサークル事情」

大阪芸術大学は「様々な芸術に特化した才ある部員が多いのに誰も自身の才能を活かしてくれない」と不満をこぼした。おげむは文芸学科だが、特に活かせないためSNSでの広報だけ頑張っていると言う。

京都産業大学は「崩壊寸前だった京産の落研」として、一・二回生が15人ずついるのに対して三回生が相馬1人のみであることを打ち明けた。相馬は同期が次々と辞めていってしまったため新入生に対しても「どうせ辞める」と思ってしまっていたとか。

「35歳が混じってる」「Google勤務」「子供2人おる」と総攻撃を受ける相馬

大盛り上がりの後半ブロック

後半ブロック一組目は関西大学の木琴アラート。老人ホームのコント漫才を披露し、若者らしさが垣間見えるボケの数々に客席の笑いは爆発した。

木琴アラート(左:後藤、右:太田垣/関西大学お笑いサークル「ストラット」所属)

後半二組目は、同じく関西大学よりダイワダイが登場。熱心に訴えかける小幡とそれを興味津々に聞く本田のやり取りがクセになる漫才で、会場を爆笑の渦に巻き込んだ。

ダイワダイ(左:小幡、右:本田/関西大学お笑いサークル「ストラット」)

三組目は関西学院大学のジンバ。魅せ方にプロの片鱗が見えるジンバは、松竹芸能所属の学生芸人。夫婦で新婚旅行先を相談するコントで笑いを誘った。

ジンバ(関西学院大学お笑いサークル「theater」所属)

続いては同じ関西学院大学のタグチ・タニシュンが登場。ストーリー性のある毒気満載なネタで会場を沸かせた。

タグチ・タニシュン(関西学院大学お笑いサークル「theater」所属)

後半五組目は佛教大学のあんず。学校を舞台としたコントだと思って観始めるとあっという間に異世界に誘われる。ラストは、笑いとともに映画を一本観たかのような謎の満足感が得られる、インパクト大なネタで会場を魅了した。

あんず(左:ゆいぃ、右:ゆきc。/佛教大学お笑いサークル「showcase」所属)

続いては、同じく佛教大学からショウトウがしゃべくり漫才を披露。遠藤の絶妙に冴えないキャラクターがじわじわ来る男女コンビであり、後半につれて笑いが増幅していった。

ショウトウ(左:遠藤、右:マツダ/佛教大学お笑いサークル「showcase」所属)

後半七組目は近畿大学のMs.ポストマンが登場。お決まりの「いや~眩しいな!」を決めると、大勢のお客さんを前に「幸せだなぁ」と声を漏らしていた。動きが激しく思わず笑ってしまう漫才で爆笑をさらった。

Ms.ポストマン(左:簑城、右:池田/近畿大学「落語研究会」所属)

続いては同じく近畿大学の樫本が、サングラスをかけて銃を片手に登場。マイクを小道具とするスタイルは樫本の得意技である。独特でアクロバティックなネタで会場を沸かせた。

樫本(近畿大学「落語研究会」所属)

大トリを飾るのは、にぼしいわし。圧巻のネタで大爆笑をとり、猟奇的なラストもその笑いは留まることを知らず、さらに膨れ上がっていった。

にぼしいわし

後半ブロック、各サークルの特徴を発表のはずが……!?

関西大学お笑いサークル「ストラット」からダイワダイ、関西学院大学お笑いサークル「theater」からタグチ・タニシュン、近畿大学「落語研究会」からMs.ポストマン、佛教大学お笑いサークル「showcase」からあんずの4組が企画コーナーに登場。

あんずのゆいぃの落ち着いた佇まいを見たにぼしが「ぼる塾の田辺さん?」と聞くと、ゆいぃは「違いますよぉ」の一言で爆笑をさらった。その後も田辺さんとして意見を求められ、穏やかに話す姿に会場全体が幸せな笑いに包まれた。

後半ブロックでは、各サークルの特徴を発表。

関西大学、近畿大学の二組は、普段から関西学院大学「theater」のライブに出ている。関西学院大学のタグチ・タニシュンは自由奔放な二組に挟まれ、「関学が二校の植民地」と化してしまっていることを打ち明けた。

次にダイワダイとMs.ポストマンは、サークルの特徴を「にぼしさん」「いわし」と回答。小幡が「どっちか好きな方を選べみたいな問題が後ろに書いてあって……」と言い訳すると、それに対してにぼしは「うちら『THE W』決勝行ってんねんぞ!」「書いたらおもろいと思ってるやろ!」と一蹴り。

「小幡のどんなとこが変?」「全部変やから……」回答に困る本田と笑い崩れるいわし

一致団結、ハートフルなエンディング

エンディングには全組が登壇し、各々告知を行った。ガングリオンのクボは「WEST ANTS」のライブを、同志社大学「喜劇研究会」は毎月YouTubeにて行われる無観客配信ライブを告知。

3歩散歩。が大阪芸術大学「落語研究寄席の会」のYouTubeを告知すると、舞台上は謎の大盛り上がりを見せた。

締めの言葉を”田辺さん”ことゆいぃが読み上げ、ライブは大成功に終わった。

ライブを終えた学生芸人たちの感想は……?

“Google”ことハイライト・相馬

――ライブを終えてどうでしたか?

相馬: コロナ禍で場数を踏めていないので、「げらっぷ」等たくさんライブに出て舞台慣れしている方達との差を感じました。平場でにぼしいわしさんに”Google”とイジってもらったことについては、すごい良い位置づけにしてもらってありがたかったです。

――学生お笑いへの思いを教えてください。

相馬: 関東の学生お笑いがすごい勢いあると思うんですけど、僕は関西弁の漫才が好きで愛もあるので、もっと関西もフィーチャーされてもいいのかなというのが正直なところです。


あんず(左:ゆいぃ、右:ゆきc)

――ライブを終えてどうでしたか?

ゆきc: めちゃくちゃ緊張したんですけど楽しかったです。

ゆいぃ: すごく良い体験になりました。

――ゆいぃさんは“田辺さん”とにぼしいわしさんからイジられていましたね。

ゆいぃ: こんなにイジられるとは思ってなかったです(笑)。

ゆきc: 普段はイジる方が好きらしいです。

――これからはどの路線で行きますか?

ゆいぃ: このまま、変人路線で(笑)。


共同主催者の二人(左:イシコ、右:穂村ベイビースターダスト)

――運営として走り抜けてきてどうでしたか?

穂村ベイビースターダスト(以下、穂村): しんどいですけどもちろん楽しかったし、やって良かったですね。ネタも期待以上に盛り上がったのでちょっと焦りましたね、ネタやる立場として(笑)。

イシコ: お客さんもそうですけど、何よりも演者さんが楽しんでくれていたので開催して良かったです!

穂村: 面白かったコンビは11月の学生芸人強化月間に呼んで……。

イシコ: 誰が出んの?

穂村: まだマジで決まってへん。だから「呼ばれてないねん!」って言われても「そうじゃねえんだよ」って(笑)。

※ライブのエンディングにて、11月に学生芸人強化月間として四回生をフィーチャーした穂村主催のライブを行うことが告知され、その場にいた四回生が誰も呼ばれていないということでザワつく時間があった。

穂村: 今日一番やって良かったなって思ったのが、3歩散歩。さんが「大阪芸大は有客のライブ全然出来てなくて、こんなにネタ観れる機会無いので」って言って袖からかじり付くように見てて。やって良かったなって思いました。

イシコ: これはほんまに良い話なんで、書いてください(笑)。


来年度以降も年に一度、『関西学生お笑いフェス』は続くという。彼らが広げていく関西学生お笑いの輪に、今後も目が離せない。

取材(写真・文):藤田うな
編集:堀越 愛

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