「美味くて面白いスタンダップコメディライブをしたい」【『夜中に送ってごめん』第2夜/放送作家・長崎 周成】

『夜中に送ってごめん』は、放送作家・長崎 周成さんによる連載。

アイディアを思いついたら夜中でも人に送りつけてしまう長崎さんの衝動を反映し、“仕事では言っちゃいけないこと”や“企画案”など、いろんな側面から「放送作家の日常」を綴ります。

夜中に思ったこと① 会話のハードルをできるだけ下げたい

こんばんは、放送作家の長崎周成です。

毎日が夏休み最終日みたいなもんなので今日も溜めに溜めた宿題を前に、天井を見上げています。こういう時は一旦スマホで連絡系から手をつけるのですが、優先度を間違えて返信してしまう時がある。

僕は会話のハードルが低い友人たちとのチャットがかなり好き。仕事そっちのけで即レスしてしまいます。なんであんなに軽やかに指が動くのか。

大人になると「わかる」→この一言だけをメッセージを送れる界隈があることがかなり貴重だと思う。気を使わない相手と内容。高速餅つき中にちょっとお餅にペタッと触るくらい、意味あるのかないのかわからないくらいインスタントな相槌だけど、流れていく様がとても心地よい。

「わかる」「それ」「たしかに」は、会話の潤滑油。ただの雑魚ワードじゃないはず。まぁ仕事相手には使わないですが。

前回も書いた関西­歌唱隊のグループLINEもかなり軽やかだと思う。先日もひわぼーい(ママタルト)から「来週の単独で4人でTシャツを売るというのはどうでぃ?」とメッセージが届き、「いけるでぃ!」「かなり売りたいでぃ」「でぃ」と即レスの応酬があり、ママタルト単独のTシャツの物販のお手伝いをした。(僕らの語尾は常に“でぃ”で統一されているし、4人とも同じようなことを言う)

15分で117着というハイスピードで売り捌いたが、スタッフさんに「今の5倍の速さじゃないと開演間に合いません」と言われて、白目を剥いた

物販的な仕事が大学生ぶりだったのでかなり緊張していたが、はじまると一瞬だった。終わってから、みんなで売り上げの精算をして、金額が合っていることを確認してハイタッチをした。打ち上げもした。いずれ、4人でフジロックなどにも出店して、さらなる物販の高みへと登っていきたい。

今年で34歳になったがずっと“あの頃”みたいにいてしまう。「子どもの頃思い描いた30代ってもっと大人だと思ってた」みたいな話がよくあるけど、最近はその感覚を自覚した上で抗っている。これ以上前に進みたくない。このままじじいになりたい。

夜中に思ったこと② 今、うまいこと言わんでえぇねん

34歳は若いのか。あの頃あの頃と言ってられない時もある。

今年に入って、同年代の仕事仲間の訃報が相次いでいる。

先週お葬式に行った友人も一見すると健康体だったが、内側がボロボロだったらしい。会うたびに謎の韓国ダイエット漢方を勧めてきて、「1ヶ月で15キロ痩せたよ」って言ってたけど、普通に病気やったんかい。信じて買うところやった。漢方よりまた一緒にロケハンに行って宇都宮の餃子を食べたかったで。

仕事仲間はカメラマンで、僕がやっている「黙喜利」や「AUNコンビ大喜利王決定戦」など大喜利系の企画を撮ってくれていた。葬式参列者も僕と同様に旧知の仲である20〜30代の同世代が多かったように思う。

基本的にワイワイと思い出話をしていただけど、最後に棺桶で眠る姿を見た時は胃を鷲掴みされたような感覚になった。ガリガリに痩せ細っていて、髪型でギリ本人と視認できるくらい面影が無かった。とても悲しい気持ちになった。

色々な思いを巡らせながら立ちつくしていたら、同じくいつもお世話になっているAUNのスタッフさんに話しかけられた。

世間話をしながら、お互い棺桶を見た感想を話した。故人を偲びながら重くなりすぎず冗談混じりに話していたが最後に、「いや〜本当痩せてますよね。最後棺桶になに入れてあげようかなって考えたんですけど…この“大喜利”だけは解けませんわ」と言われた。

咄嗟に「そうっすよね…」と返答したが、この一言が異常に僕の中で引っかかった。なんだろう。もちろん悪意なんてないだろうし、たぶん普通に空気が重たくなりすぎないようにユーモアの一つとして“大喜利”に引っ掛けて話しかけてくれただけなんだろうけど。

とにかくこういう時はうまいこと言わん方がよくない!?と思った。

普段から基本的に、いつでも明るく、ユーモアを飛ばし合う会話がコミュニケーションの主軸なのだけど、なぜか今うまく言うのは違う気がした。

(このスタッフさんはとても良い人)

以前とある芸人さんが亡くなった時に、スタッフの方がその芸人さんのギャグに引っ掛けた追悼コメントをSNSに投稿していて、それもすごく違和感を感じた。故人への真っ直ぐなメッセージではなく、追悼コメントを見た人の反応を意識している気がする。右脳じゃなくて左脳が動いてる感。タモリさんと赤塚不二夫さんくらいの関係性ならわかるのだけど。

人が亡くなった時に、うまいこと言わない方が良い。引っ掛けない方が良い。

ウケなくていい、笑えなくていい、そんな時もある。

自分もいい大人なので気をつけたい。

夜中に思ったこと③ 「面白い×美味い」をしたい

うまいことを言うのは、技術だけでなくシチュエーションもあるはず。

前述を見るとすごく尖っているようにも思えるかもしれないが、あたりまえだけど僕はユーモアが大好きです。お葬式以外ならいつでもユーモアを浴びたいし、発したいです。

あと美味いも大好きです。

それを先日、BLUE NOTE TOKYOで初めて生でスタンダップコメディを見た時に再確認しました。関西歌唱隊のメンバーであり、スタンダップコメディアンでもあるしょっちゃん(宰務翔太)に招待してもらって見ました。

今まで大喜利をはじめ、お笑いライブは見てきたし作ってきたけどスタンダップはそのどれとも違いました。圧倒的に多幸感がある

ここでしか見れない・聞けない面白話を、食事をしながら、お酒を飲みながら観劇する。2時間の間に満たされる幸福量が段違い。見終わったあと、心がホクホクでした。これはもっと広めたい。

その後、スタンダップに最近取り組んでいるこたけ正義感さんとも話して、より気持ちが高まりました。

ちゃんと美味しい食事を提供できて、スタンダップを堪能できる「面白い×美味い」の最高空間を作りたいのが、今です。

今月の企画案

美味くて面白いスタンダップコメディライブをしたい。

PROFILE

長崎 周成

1991年生まれの放送作家。芸人、テレビ制作会社勤務を経て現職。地上波テレビ番組の企画構成を担当しつつ、2018年に「フワちゃんTV」/「フワちゃんFLIX」をフワちゃんとともに開設。2019年に20代放送作家を中心とした企画会社「チャビー」を設立。お笑い・バラエティ企画を中心に、CMや映像コンテンツを横断して企画。

・Instagram:shuuuuuusei0630
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