嫉妬心との付き合い方《春とヒコーキ「VIP ROOM HARUHIKO」第53回》

『VIP ROOM HARUHIKO』は、春とヒコーキがバーのVIP ROOM で本音を語るような、そんな場所。

‟語りつくされた、でも正解はなく、各々で考え方が異なる”普遍的なテーマについて、ぐんぴぃと土岡がそれぞれの視点で綴ります。

今月のテーマは、『嫉妬心との付き合い方』


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theme.嫉妬心との付き合い方

ver.ぐんぴぃ

嫉妬の多い人生でしたが、30代半ばを過ぎてだんだんと減ってきました。

きっと諦め始めているのでしょう。ジェラシーは辛いので。ハナから白旗をあげる、出来ないことは出来ない。敵うわけないぜってなもんで必死になることを避けています。それを大人になったんだと言い聞かせている。ガッツこそ減りましたけど、そのぶん明るいですよ最近の私は。

比べる相手が少ないポジションにいるのも一因です。

芸人なんだけどYouTuberみもあって。ネットミームでもある。比較対象があまりいません。

オリジナルな苦悩(©︎小松海佑)を抱いている。常に熾烈な競争に身を置かれる芸人社会から、ちょっと身をかわすことができている。それがいいか悪いかはさておき。誰にも似てないことが肯定される仕事なのが幸いしてます。

誰かに嫉妬心を抱きそうになったら、立川談志さんの言葉をいつも思い出します。

「己が努力、行動を起こさずに対象となる人間の弱みを口であげつらって、自分のレベルまで下げる行為、これを嫉妬という」

「一緒になって同意してくれる仲間がいれば、さらに自分は安定する。本来なら相手に並び、抜くための行動、生活を送ればそれで解決するんだ。しかし人間はなかなかそれができない。嫉妬しているほうが楽だからな。だがそんなことで状況は何も変わらない」

「よく覚えとけ。現実は正解なんだ。時代が悪いの、世の中がおかしいといったところで仕方ない。現実は事実だ。そして現状を理解、分析してみろ。そこにはきっと、何故そうなったかという原因があるんだ。現状を認識して把握したら処理すりゃいいんだ。その行動を起こせない奴を俺の基準で馬鹿という」

立川談春「赤めだか」より引用

弟弟子の志らくさんに嫉妬する談春さんにかけた言葉だそうです。

人を羨む暇があったら芸を磨けよ、己を磨けよと。

それができれば苦労はしねェ!!!とネテロ譲りの気性が顔を覗かせますが、やっぱり正論です。嫉妬がムダだと教えてくれる金言です。現実は正解。

最近は嫉妬心を逆手にとってコンテンツにしたことがあります。

「嫉妬しちゃう人発表会」という動画で、堂々と妬ましい人を発表する企画です。オモコロ、令和ロマン、ラランド、ダウ90000蓮見、三宅香帆さん、QuizKnock。挙がった名前はだいたい同世代の近しい人たちです。全員天才。同じ時代に生まれて大変ですよ。

この回が好評でした。視聴者もそうですが、当人たちからも。嫌がられるとばかり思っていたのですが、嫉妬されるって適切な距離感と温度感なら心地いいのかもしれない。

特にダウ90000の蓮見。あらゆる芸人がやりたかったこと、やりたくても諦めたことをいとも容易くこなせている印象があります。ネタの上手さ、面白さに加えて、テレビの振る舞いの達者さ。羨望を抱かない芸人っていないと思うぐらい天才です。

彼と飯に行った時に「蓮見に生まれ変わりたいよ」なんてダル絡みをしました。

笑いながら、ちょっと困った顔をして「もし生まれ変わったら、生まれ変わらなきゃよかったって後悔すると思いますよ」と返ってきました。

確かになぁ。天才には天才なりの、きっと血反吐を吐くような努力と地獄があるのでしょう。どんどん顔色悪くなってるもんな。改めて嫉妬ってムダだよな、と思わせてくれる出来事でした。自分だけの地獄に向き合いましょう。


ver.土岡

嫉妬と聞くとぼくがパッとイメージするのは、燃えている悔しさ。ネチネチだとしてもパワーのある情念で攻撃的。でも、そのイメージに囚われていると自分の嫉妬を見落とす気がする。例えば芸人なら、他の人が自分よりウケていたときや売れていくときが、分かりやすく嫉妬する状況。でも、そのときに必ずしも燃えるような悔しさが湧くわけでもない。自分の場合、しょんぼりと落ち込んで「はぁ……」となる。そのときの「おれもあれが欲しかったなぁ。なんで自分は……」という気持ちも、ダウナーだけど嫉妬(そもそも嫉妬はダウナーかも知れないけど)。だから、それを含め自分の嫉妬を紐解くとこから考え始めよう。

嫉妬するときの感情の内訳は様々。他の芸人がめちゃくちゃウケているとき。これは「みんなの目はあっちに釘付けで、気にされていない」という寂しさもある。他人が賞レースで勝ち上がったりバラエティではねたりして、売れていくとき。これは、取り残される焦り、恐怖もある。ただ、このどちらも、面白いものが見れて楽しいとか面白い人がちゃんと売れて嬉しいとも感じている。その一方で燻る「今回、自分はそっち側じゃない……」という部分が嫉妬。正しいことが起きていて、でも自分じゃない。それこそが根深い嫉妬。ズルをして得をしてる人に嫉妬することもあるだろうけど、それは怒りを抱くというシンプルな答えがあるから悩む必要はない。素晴らしい状況なのに湧いてしまったネガティブ感情こそ、自分のせいだから手強い。

大学生のとき、大好きな椎名林檎のコンサートを観て、生意気にも林檎さんに嫉妬した。当時のぼくは部活で落語をやっていて、人前でパフォーマンスする立場というくくりで勝手に嫉妬した。コンサートが終わり、会場を出て歩いているとき、駅に向かうたくさんの観客の1人である自分を自覚した。「今日は、自分じゃない人が観客に自分のパフォーマンスを見せて夢中にさせていた。悔しい」と思いながら帰った。なんでそんなこと思ってるんだと意味不明に思いながらも。でも、それをいまだに覚えているということは、自分のやりたいこと、こうでないと嫌だということの根幹を知る出来事だったんじゃないかと思う。

嫉妬は、自分が何を求めてるのかを雑に指さしてくれる感情かも知れない。雑だから、羨ましいのはあの人の持ってる結果なのか、個性なのか、反響なのかがパッと判断できないけど。だから、落ち込んだあと、嫉妬の部分を見つめて、「で、どれが欲しかった?」と自分に聞いてみる。そうしてみようかな。


文:春とヒコーキ
編集:堀越 愛、サムネイル:つるみ32

PROFILE

タイタン 所属

左:ぐんぴぃ
右:土岡 哲朗

★公式プロフィール:https://www.titan-net.co.jp/talent/haruhiko/
★公式YouTube:春とヒコーキバキ童チャンネル【ぐんぴぃ】