声をなくした大声魔法使い。今月は小声で失礼します【ストレッチーズ 高木貫太『大声魔法使いかんちゃん』 第15声】

『大声魔法使いかんちゃん』は、ストレッチーズ・高木貫太さんの大声コラム連載。

『大声魔法使いかんちゃん』は、文字媒体にもかかわらずイヤホン必須の新感覚コラム。どんな局面も大声の技術を用いてなんとかしてくれる“大声魔法使い”かんちゃん(ストレッチーズ高木貫太)が、日常で見つけた様々な違和感にツッコミまくります!

魔法使いの言い訳

雨の続く9月を抜け、秋晴れの気持ちいい日が増えてきた10月、皆様いかがお過ごしでしょうか。まずはすみません。謝罪から入らせてください。こちらのコラムは毎月はじめごろ更新するペースでやっていましたが、どうでしょう。もう10月も後半に入ろうというところ。なぜ更新がなかったか。

言い訳をさせてください。

体調、崩してました。

言い訳をさせていただきました。

10月頭くらいから徐々に身体が異変を感じ始め、遂に声が全く出なくなってしまいました。
大声魔法使いという肩書きにファンタジー的な幻想を抱いていた皆様には申し訳ありません。
僕は皆様と同じ人間で、かなり喉を頻繁にやります。麒麟、ペガサス、大声魔法使い。

完全に声を飛ばした時に出たライブでは、舞台袖で俺らのネタを聞いていたセンチネルのトミサットに、「福島さんと椿鬼奴さんのユニットが出てきたのかと思った」と言われるほどの潰れっぷり。

その前日も、パーマ大佐と2組で野外営業に行った。1組10分出番だったところを、「貫ちゃん喉しんどそうだったから15分やったから!」と先の出番だったパーマ大佐に言われた。別にパーマ大佐が15分やったところで、俺らが5分で済むわけではないので普通に10分やった。多分気持ちよくなって5分延びた言い訳に俺を使っただろ、パーマ大佐。

2人とも喉に良さそうなものを買ってくれた。優しい。

危なかったねえ

どうしようもなくなったので、芸人の間では有名なお医者さんに診てもらった。
この病院は芸人に限らず、役者さんやアーティストさんも沢山通っているそうで、とにかく喉や声に関してはプロ中のプロ。
受診して部屋に入るとまず、先生は椅子をくるっと回して、「いつが本番?」と一言。頼もしすぎる。
「芸人です」と言うと、「M-1?そろそろ2回戦?」とかも聞かれる。下手なネタ見せ作家より詳しいんじゃねえか、賞レース事情。
隣接している処方薬局の薬剤師さんたちもプロで、「本番はいつですか?」と必ず聞いてくれる。

以前、ギターを持った女性が薬剤師さんに、「本番いつですか?」と訊かれて、ガスガスの声で、「3ジカンゴ、デス…」と言っていた。

さすがに間に合わねえだろ。

そんなガスガスなら今は丁寧語じゃなくていいよ。「です」の分の声勿体無いって。
「早く飲まないと!!!」と、薬局のカウンターで薬をがぶがぶ飲まされていた。間に合ったのか、あの人。

そんなこんなで今回も先生にお願いすることにした。声帯を見てもらったところ、「危なかったねえ!!!」と言われた。

危なかったねえ???

「もうちょっとで完全に声奪われるところだったよ!よく耐えたよ!」
リトルマーメイドか。そんな状態だったんかい俺の声帯。

写真で見せてもらったが、確かに声帯を楽器として見た時、音が鳴るはずのない材質になっていた。オノマトペを使って表したいところだが、ちょっとグロいのでここでやめておく。
「本番までに治せるように、処方箋書くから!任せて!」と言われ、精神的にかなり落ち着いた。センセ、カッコイイ…、スキ……。

その後謎の機械で何かを吸引した。
「終わったら受付に行ってください」と言われ、黙って吸っていた。機械にデジタルの砂時計のような表示があったので、これがなくなったら終わりなんだなと思って暫く吸っていたら、「高木さん、もう終わってます!」と背中を叩かれた。終わってたんかい、じゃあなんなんだこの砂時計。確かに機械自体は止まったなと思ったけど。

終わって待合室で会計を待っていたら、見覚えのある姿が前方に見えた。
吉本所属の、「ぺ」というコンビの、おかっぱちょび髭じゃない方のヤツだ。
でも申し訳ない、「ぺ」というコンビの、おかっぱちょび髭じゃない方、としか言えないくらいの関係性だ。個人名までは知らない。何度かライブは被っている。
しかも、「ぺ」というコンビの、おかっぱちょび髭の方、でもない。「ぺ」というコンビの、おかっぱちょび髭じゃない方、なのだ。
「ぺ」というコンビの、おかっぱちょび髭の方ですら、個人名は知らない。いわんや、おかっぱちょび髭じゃない方の個人名など知るわけがない。
その程度の認識なので、声をかけるにしても、本当に「ぺ」というコンビの、おかっぱちょび髭じゃない方のヤツなのかも怪しい。
違ったらどうしよう。ていうか、なんて声かければいいんだ?「ぺのおかっぱちょび髭じゃない方じゃん〜」か?スマホで調べるか、「ぺ 芸人」。これで本当に出るのか?トレンディエンジェル斉藤さんが出てくるんじゃ?

そうこうしているうちに、「ぺ」というコンビのおかっぱちょび髭じゃない方のヤツが診察室に呼ばれた。声をかけようと思ったが、俺の弱った声帯は震えなかった。「ェノ…」くらいしか出なかった。「ぺ、の…」と本来なら言おうとしている。

ずっと気になっている。あれが、「ぺ」というコンビのおかっぱちょび髭じゃない方のヤツだったのか。もしそうだったとしたら、「ぺ」というコンビのおかっぱちょび髭じゃない方のヤツも喉をやってしまったということか。「ぺ」というコンビのおかっぱちょび髭じゃない方のヤツ、お大事に。

文・声:ストレッチーズ 高木貫太
編集:堀越 愛
サムネイルデザイン:TSURUMI32

PROFILE

ストレッチーズ・高木貫太

・公式プロフィール:https://www.ohtapro.co.jp/talent/stretchees.html
・X:@komekami2010
・YouTube:ストレッチーズOfficial YouTube Channel