「粉吹いてんのかよ!」で逆転した印象【カナメストーン インタビュー(前編)】

東京の若手芸人でトップクラスの注目を集めるのが、マセキ芸能社所属のカナメストーン。ライブシーンで知らない人はいない、実力派の芸人です。今回は、カナメストーンに結成~未来のことまでたっぷりお話を伺いました。インタビューは前編・中編・後編の3部作。前編では、二人の“最悪の出会い”からネタ作りのことまで、お話いただきます。

コンビを組みたくて、2週間に1度、東京から静岡へ

―お二人がコンビを組んだ理由を教えてください。中学は一緒ですが、大学は別なんですよね。

東峰零士(以下、零士): 中学生のときからずっと、山口とお笑いをやりたかったんです。節目節目で誘ってましたね、気持ちが離れないように。山口が静岡、僕が東京の大学だったんですけど、2週間に1回は山口のところに遊びに行って。

山口誠(以下、山口): インフルエンザにかかっても遊びに来てました。

零士: で、看病してもらって、遊ぶ、みたいな。

―絶対に山口さんとやりたい、という信念があったんですね。山口さんが根負けした感じなんでしょうか?

山口: まぁ、そうですね。やっぱり零士の熱意に。

零士: 山口はずっとサッカーをやってて、大学卒業のときプロテストまで行ってたんですよ。受かったらプロに行っちゃうので、俺はもう、ずっと落ちろ、落ちろと……。で、落ちた!やったー!ということで、「お前もうやることないだろ、やろう」って。

山口: 零士と2週間に1回遊んでたんで、やっぱこれが楽しいなっていうのがあるんですよね。楽しさが刷り込まれてて……

零士: 俺の作戦が成功した!

―出会った当初から、仲が良かったんですか?

零士: 最初はマジで、学年でいっちばん嫌いだったんですよ。

山口: いやいやいや、俺が一番嫌いでしたよ、零士のことを。

零士: なに競ってんだよ!マジ超生意気で、最悪でした。

山口: 中学校って、近い小学校が集まるじゃないですか。(小学校で)お互いサッカー部だったんですけど、違う学校にロン毛のキーパーがいるんですよ。試合で会ったときから、「こいつ調子こいてんな」と……。で、中学校で同じサッカー部に入って。俺が蹴ろうと思ってボールを置いたら、零士が走ってきて、バーン!って。思いっきり遠くに蹴り飛ばしたんですよ。

零士: これ、まったく覚えてないんすよ。だから捏造してる可能性があるんですよ、俺を陥れるために……

山口: それで「なんだこいつ、もう嫌いだわー」と。あと中学1年の修学旅行のとき、俺が“パンツ忘れ物係”だったんですよ。

零士: お風呂で忘れ物があったら、それを回収してみんなに聞きに行く役ね。

山口: 脱衣所にパンツがあったんで、A組から順番に聞いていくんですね。で、B組のドアを開けたら零士が出てきて、「はい!調子こいてる!」って言われてドアを閉められた。

零士: それも覚えてない。うっすら思い出すのは、山口がタオルを頭に巻いてたんですよ。さまぁ~ずの大竹さんに憧れてるのか知らないけど。それで言ったんじゃないかな……。

―そんなに嫌い合っていたのに、なにがきっかけで仲良くなったんでしょうか。

山口: 中2の冬くらいに、サッカー部で集まる機会があったんだよな。で、零士がラルフローレンのタートルネックに、ラルフローレンのカーディガンを着てて。「あれ?こいつやる男か…?」と。

零士: ファッションで認められたんだ、俺!

山口: で、冬だから俺の顔面、粉吹いてて……

零士: 歴史に残るツッコミだな、俺の。

山口: お前が入ってきて、第一声で「粉吹いてんのかよ!」って突っ込んだんだよな。

零士: 最高のツッコミね!なんも言ってない相手に、「粉吹いてんのかよ!」って。

山口: そうそう。で、「俺に立ち向かえるんだ」と。

零士: こいつ、自分に遠慮するやつが嫌なんですよ。自分にグイグイくるというので、俺は認められたみたいです。で、やっぱり山口って変。中学でもタコ糸に5円玉を通して人をぶん殴ってて、「あー、こいつおかしいんだ。俺が持っていないものを持ってるんだ」と。面白かったですし。

山口: 銭メリケンね。

零士: 知らない。名前は知らない!こんな感じで「変わったこところがあるな」と思って、一緒にやりたいと決めたんです、僕は。

「最強の先輩たちを倒したい」、この想いでマセキを目指した

―「カナメストーン」というコンビ名の由来はどんなものなんでしょう?

零士: 僕らの出身地に、鹿島神宮という有名な神社があるんですよ。そこに “要石(かなめいし)”というものが祀られていて。母ちゃんに「要石って良い逸話ばかりあるから、それをもらったらいいじゃん」と言われたんですよ。それで山口に電話で「“要石”にしよう」と言ったら「ケツメイシと被るから嫌」と言われて……。それで、“石”を英語にして「カナメストーン」になったんだよね。

山口: それがバチっとハマったんですよ。

零士: このコンビ名、今ではめちゃめちゃ気に入ってます。「ん」がつく名前が良いと言われてたし、それもあって「カナメストーン」になりました。

―マセキ芸能社には、どんなきっかけで所属されたんでしょうか?

零士: 僕ら、もともと吉本所属だったんです。4~5年目くらいの頃、メイプル超合金さんや虹の黄昏さん、ローズヒップファニーファニーさんとか、錚々たるメンバーの「バスク」というライブに出してもらったんですよ。

山口: 当時ちょっとウケていたということもあって、調子こいてたんですよ。でも、俺らの前の出番が街裏ぴんくさんだったんですけど……

零士: それがもう、見たことないウケで、お客さんもすごい揺れてて。次に僕らが出て行ったら、一つもウケなかったんです。それで「このまま吉本にいちゃだめだ」と。別に吉本が悪いとかではないんですけどね。

山口: 甘いな、と。

零士: うん、甘いし、この人たちに勝つためには外でいろいろ経験しなきゃいけないんだと思ったんだよね。「最強の先輩たちを倒したい」と思って、吉本を辞めることに決めました。で、当時『THE MANZAI』でモグライダーさんや三四郎さんが認定漫才師になってたんですよ。「若手で面白い漫才師がいる事務所に入りたい」と思って、マセキに入りたいなと。

山口: それですぐ、吉本を辞めました。翌月からマセキを受け出したんですが、入るまで2年かかりましたね。

零士: 2年入れなかったのか……

相方の面白さが客席に伝わるよう翻訳する

―お二人は一緒に住んでいるそうですが、ネタ作りはどのようにしているんでしょうか?

山口: 月・火・金・日は休みにしてるんですよ、俺ら。

零士: この4日間は、朝起きたら2人で身支度して、ご飯を一緒に買いに行って、食べながらYouTubeでお笑いを観て、気持ちを高めていきます。山口が作業用BGMをかけたら、ネタを作る時間ですね。で、テーマを決めて、ボケてくれるのを待ちます。

山口: 零士のツッコミじゃないと、俺のボケがお客さんに伝わらないんですよ。

零士: ボケてくれないと、ツッコミができないじゃないですか。だからひたすら、ボケるのを待つ。2人で立って、「今の面白いね」とかしゃべりながら作ります。

―朝から一緒に過ごす中でネタを作るんですね。そんなにずっと一緒にいて、仲良くいられるのが凄いと思います。相方に対して、尊敬や感謝していることはありますか?

零士: 尊敬してるのは、全員を見下しているところですね。もちろん後輩は馬鹿にしてますし、どんなに上の人でも見下してるんで。このブレない姿勢は凄いなと思います。

山口: 見下しているというか、評価してるってことです。

零士: いや、それが見下してる!上の人に対して、「あいつのこと評価してる」って言わないじゃん。「あいつなかなか良い仕事するじゃん」みたいなことでしょ。

山口: 認めてる。リスペクトってこと。

零士: そうそう、リスペクト……っていや、違う違う!ニュアンスでごまかしてますけど、ちょっと違うんだよな。

―山口さんはいかがですか?

山口: うーん……。俺、けっこうお客さんに伝わらないことを言っちゃうことが多くて。

零士: え!自覚あるんだ!

山口: 自分では面白いと思ったことでも、お客さんに伝わってないなぁと思うこともあるんですよ。そういうのを笑いに変えてくれるのは感謝してますね。

零士: 翻訳機というかね。山口は、あえて全部言いたくない、説明したくない人じゃん。でしょ?

山口: (説明するくらいなら)伝わんなくて良いと思う部分もあるし。

零士: それを、「彼はこう言ってますよ」と僕はお客さんに伝える。当然ウケたいですし、せっかく面白いこと言ってるんだから。

山口: 負担は大きいと思いますけどね。

零士: いやいや、別に。「大変だなぁ」って気持ちではやってないですよ。「楽しいなぁ」です、ずっと!

<カナメストーン|プロフィール>
2010年4月1日結成。マセキ芸能社所属。

左:山口 誠(やまぐち まこと)
1986年6月24日生まれ。AB型。茨城県鹿嶋市出身。静岡産業大学経営学部スポーツ経営学科卒業。趣味は危険生物の動画を観る、駅伝を観る、皮膚科に通う。特技はサッカーのボランチの知識、人物描画、良い皮膚科かどうか見極められる。

右:東峰 零士(とうみね れいじ)
1986年12月19日生まれ。B型。茨城県鹿嶋市出身。拓殖大学商学部経営学科卒業。趣味は鹿島アントラーズ、ショッピング、洗濯、カナメストーンのことを呟いてくれているツイートにいいねを押す。特技はボクシング、大声、街でカツラの人にいち早く気付く。

公式サイト:https://www.maseki.co.jp/talent/kanamestone


★中編はこちら:売れるとは「狩野英孝」。目指すはテレビスター
★後編はこちら:「ネタで勝つ!」売れてもずっと漫才を続けたい

インタビュー:渡辺 陽、撮影:秦 法爾、編集:堀越 愛

PERFORMERS

  • 山口 誠(やまぐち まこと)/カナメストーン

    マセキ芸能社所属

    Twitter:@ks_yamaguchi
    Instagram:@ks_yamaguchi/

  • 東峰 零士(とうみね れいじ)/カナメストーン

    マセキ芸能社所属

    Twitter:@REIJITTY
    Instagram:@ks_reiji

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