2022.02.12

【WEST ANTSストーリー-vol.7 ブルーウェーブ（前編）】「リアリティの中で、どんだけ変わったことができるか」～西の地下で轟く、新たな笑いの息吹～

2021年4月、大阪のライブシーンで活動する9組18人の芸人によるユニット『WEST ANTS』が誕生しました。発起人は、大阪・西心斎橋で「BAR舞台袖」を営む加藤進之介さん。大阪のお笑いを盛り上げるべく、本当に「面白い」と思う芸人を集めました。（加藤さんインタビュー：大阪を「芸人が飯を食える場所」にしたい）

松竹芸能所属の芸人・ブルーウェーブは、四番サード西澤とすみかわによるコンビで、結成は2016年。2021年末に開催された「カドキング2021 いっちゃんおもろい松竹若手は誰！？～カド決勝～」（松竹芸能の若手No.1決定戦）で優勝し、2022年のブレイクを期待されています。インタビュー前編では、芸人を目指した理由やコンビ名、ネタのこだわりなど、ブルーウェーブの“基礎”をお伺いしました。（インタビュー後編はこちら）

★【WEST ANTS ストーリー -vol.0-】大阪お笑いに、新たな息吹！芸人ユニット『WEST ANTS』とは

芸人か漁師か

———お二人はなぜ芸人を目指されたのでしょうか。

四番サード西澤（以下、西澤）：　僕は、ほんまシンプルに働きたくなかったんですよ。それと、月15万で良いからだらだらのんびり過ごしたいと思って。「10～15分喋ってだらだら暮らす」みたいなのに憧れてたんですけど、芸人になってみたら離島でサバイバル生活しているような（笑）。15万とかね、自分の中ではめちゃくちゃハードルを低く設定したつもりだったんですけど。

すみかわ：　芸人になる前はね。

西澤：　「10～15分喋って15万貰える仕事」ぐらいに思ってたけど、フタ開けてみたら漁師になっとけば良かったなと（笑）。

———芸人と漁師で迷われていたのですか？

西澤：　そうです。一応、水産学科がある高知大学に受かってたんですよ。ただ、そこで4年だらだら過ごすぐらいやったら芸人を4年やったほうが良いんじゃないかと。だらだら4年芸人やってれば「月15万」の目標には余裕で届くやろうと思ってしまって。……漁師やっとけば良かったなって（笑）。

———カツオの一本釣りとかしてたほうが儲かってたかもしれない、と。

西澤：　ね！　おいしいっすよね。今の僕のセリフにしといてください、「カツオ一本釣り」（笑）。

———すみかわさんは、なぜ芸人を目指されたのですか。

すみかわ：　大学行って就活を真面目にやってたんですけど、手も足も出なさ過ぎて。「芸人でもええかぁ」って、軽い気持ちでしたね。

西澤：　出身は石垣島やん。無いやん、芸人の文化が。

すみかわ：　いや、大学は神戸やから。

西澤：　おもろな！　おもろなお前！

すみかわ：　小中高は石垣島なんですけど、大学は神戸やから！

西澤：　おもろな！

———お二人はどこで出会われたのでしょうか？

西澤：　養成所です。最初僕はピン芸人で、こっち（すみかわ）は別のコンビ組んでたんですよ。

すみかわ：　大学の同級生と一緒に松竹に入ったんですけど、ある日いなくなって。

西澤：　なんで？

すみかわ：　ある朝いなくなって。

西澤：　それだけ書かれても読む人分からんから。

すみかわ：　10時にライブのオーディションがあったんですけど、来なくて。直感的に「これはもう完全に飛んだな」と思いまして。10時10分に西澤に電話して、「お前、暇やろ。コンビ組まへんか」って言いました。そしたら、「俺やる気ないけどええかー？」って（笑）。

西澤：　でも飛んだ認定にするには早いやん。次の日もハマチ釣りに行くって約束してたんやろ？

すみかわ：　そう、当時の相方と釣りに行くって約束してたけど、ハマチにも来なかった（笑）。そこから音沙汰無しで。

———お二人は、なぜ松竹芸能に入ったんでしょうか？

すみかわ：　軽い気持ちで芸人やったんで、吉本とか松竹とかなにも知らなかったんです。

西澤：　騙されたんや。

すみかわ：　騙されたとか言うな（笑）！

———西澤さんは、松竹に入った決め手があったのでしょうか？

西澤：　僕が高校生のとき、深夜に関西若手芸人の賞レースの番組がやってたんですよ。15組出てるうち、だいたい3組が松竹なんですよ。

すみかわ：　毎回出るんよね、順位が。

西澤：　毎回最下位がその3組なんで、「これやったら俺も全然いけるんちゃう」って。でも今は、漁師になっとけば良かったなぁって（笑）。

すみかわ：　思ってるより芸人は難しかったと。

西澤：　うん、オーディション通るのすら難しいから。テレビ出れてるだけですごいんやなって。

すみかわ：　高校生の頃はいけると思うわな。

西澤：　いやほんと、すごい先輩らやで（笑）！

コンビ名の由来

———ブルーウェーブというコンビ名の由来を教えてください。

西澤：　こいつ（すみかわ）は毎回、それを聞かれると5パターンくらいの嘘をつくんすよ（笑）。

すみかわ：　ほんまのことを言うと、特に理由は無いんです。

西澤：　二人とも野球が好きなんで……って感じで、ほんまにそれぐらいなんすけど、僕が見る限りこいつが5パターンぐらい嘘をつく。

すみかわ：　確かに嘘つくな。

西澤：　それを先輩が笑って。「そんな感じで組んだんや」って言われたら、「そうなんですよ」って言うしかない（笑）。

すみかわ：　『パワプロ』っていう野球ゲームのペナントレースをAIにさして、「1位になったチームにしようぜ」って言って優勝したのがブルーウェーブなんでとか。

———ありそうですね。

西澤：　あるかぁ（笑）！

すみかわ：　海が好きなので、西澤が「ブルーオーシャンズ」、僕が「ブルーウェーブ」って言って、争ってブルーウェーブが勝ったので。

西澤：　弱いな（笑）。B案弱いなあ。

すみかわ：　C案D案もめっちゃ弱いわ（笑）。

西澤：　じゃあCいらんわ。Dだけ言って。

すみかわ：　青が好きすぎて。

西澤：　採用。それでいきます（笑）。コンビ名の由来は「青が好きすぎて」です。

「やる気ない」から始まったブルーウェーブ

———西澤さんがネタを作っているそうですが、ネタ作りで意識してることはありますか？

西澤：　リアリティは結構大事にしてます。そのリアリティの中で、どんだけ変わったこと、キャッチーなことできるか。だから、「漫才の格好で服脱ぎだす」とかは違うんですよ。僕の中で、あぁいうのはちょっと邪道というか。だから、僕の中ではシンバルモンキーのジャンベも無しですね（笑）。マイクの前に2人で立って、その中でどんだけキャッチーなことをできるか。

———今の漫才の形は、どのようにして生まれたのでしょうか？

すみかわ：　僕ら、コンビ組んで序盤の3年を無駄にしているからね。

西澤：　そうです。最初は僕の「やる気ない」で始まって。僕は喋りたくない、でも笑いが欲しいってなったときに、僕が昔ピンをやってた時代に「動物に対して悪口を言うだけ」のネタを思い出したんです。同じことを言うんだったら、こっち（すみかわ）のほうがおもろい。だから僕が動物を言って、その悪口を言ってもらう。

すみかわ：　2年くらいやりましたね。

西澤：　はい。でも、もちろん『Ｍ-1』は一回戦で落ちて。「ちゃんと漫才やろう」って言ったのが3年目くらいだったかな。このとき、漫才の技量みたいなのは0なんです、漫才なんかそれまでやってなかったから。だから、後輩にもどんどん抜かれて、会社のライブも出れへんみたいな。底まで落ち切ったとき「毎日ネタをやろう、これはやばいわ」ってなって、路上漫才を思い切ってやったりとか。頑張ってた時期がありましたね。……なんの話やっけ（笑）？

———今の漫才の形になるまでです。

すみかわ：　あながち間違ってなかった。

西澤：　きっかけは4年目ぐらいで、『M-1』三回戦行ったときですね。ネタには書いてないんですけど、彼がネタ中に「楽しくない」っていうワードを頻繁に言うてて。あるライブ終わりに作家さんに「楽しくない」がおもろいから、楽しいことを言うた後に「楽しい」「楽しくない」みたいに彼のリアクションで笑いとってみたら？　みたいな。それきっかけですね。

すみかわ：　上げて下げてみたいな。

西澤：　そうですね。ってなったらやっぱ笑いも取りやすいし。

———それぐらいの時期から、すみかわさんの特徴的な手の動きはあったのですか？

西澤：　これに関しては、僕は認識してないですから。知らないです（笑）。

すみかわ：　確かに。いつからかでしたね、これは。

西澤：　ロケかなんか行ったときも、こうやるじゃないすか（指をさすポーズ）。これがテレビ的に良くないからやめてくれとか、オーディションでもそれやめてくれって何回もこれに対する「待った」がかかってるのに、やり続けるんですよ。そこは何かあるん？

すみかわ：　これ（指をさすポーズ）が拳銃やからっていうことでしょ？　あかんの。でも拳銃じゃないもん（笑）