【教えて!さすらいセンパイ! ~進路相談・清水編~】裏での振る舞い方・ネタは通用するのか・大人が怖い

さすらいラビーが学生芸人三人のお悩みに直接答える、『学生芸人の不安を解消!教えて!さすらいセンパイ!』。個別進路相談最後のゲストは、明治大学お笑いサークル木曜会Z所属の清水駿平。ライブでの振る舞い方・ネタがテレビで通用するのか・大人が怖い……と悩みを相談していると、意外なところに活路が見つかりました。

【教えて!さすらいセンパイ!】さすらいラビーが学生芸人のリアルなお悩みに回答!~「プロになる?」学生芸人アンケート~

明治大学お笑いサークル木曜会Z所属・清水駿平

挨拶も戦略のひとつ

清水 駿平(以下、清水): よろしくお願いします!

中田 和伸(以下、中田): いい加減にしてくれ!

宇野 慎太郎(以下、宇野): なににだよ(笑)。

中田: がっかりだよ。

宇野: なんもしてないよ、これからだから(笑)。


お悩み①
会場入りしてからの常識が分かりません。
知らないうちに、先輩の芸人さんに失礼なことをしていないか不安です。


宇野: (大学お笑いの)外のライブでの常識ってことだよね。

清水: はい。プロの方もいらっしゃると、自分が一番下っ端なので。失礼が無いかとか分からないまま帰ったりしてるので……。

中田: そっかそっか。今はどうしてんの? ビクビクしながら?

清水: ビクビクしながら、「すみませんすみません」みたいな。知ってる方だけに挨拶して、面識無い方や怖そうな方は会釈だけして、みたいな感じで……。

中田: 愚問です! こんなね、時が解決する系のやつは大丈夫だから。どうせ。

宇野: まぁね、ライブ出ていくうちに「こんな感じか」ってなるね。

中田: まず「誰々に挨拶しよう」とか、教わったことないじゃん。

宇野: それは、養成所でも教わることではないからね。事務所によっては挨拶しないとめちゃめちゃ怒られたりとかあるだろうから「先輩に会ったら絶対に挨拶しろ」とか教えられることもあるのかもしれないけど。別に俺らはなんも教わってない。ただ、初めて会う先輩には一応挨拶はする。でも、してないやつも全然いる。

中田: 「ご挨拶よろしいですか? 太田プロのさすらいラビーです。よろしくお願いします」みたいに言うけど、これも合ってるのか分からないし。

宇野: 挨拶してこない後輩もいるけど、それに対してなにか思ったりもしないし。だから、今のまんまで良いんじゃない? 最初はビクビクするだろうけど。

中田: それも戦略と言うか。怒られるかもしれないからどうしようかじゃなくて、「名前を覚えてもらおう」って思いで挨拶に行くのか「別に覚えてもらわなくても良いか」なのか、っていう……。そこに気を使うのがストレスで、自分のためにならないから挨拶はしない、って決めるとかね。

宇野: それならそれで、全然ね。

中田: まぁ、楽なほうを選んじゃって良いかと。もちろん失礼のないほうが良いっていうのはあるけど。でもその感じなら大丈夫じゃない?

宇野: 「ここは芸歴が上の人が座るんだろうな」みたいなでかいソファがあったら座らないようにするとか、それくらい気を付ければ(笑)。

中田: そうだね。

宇野: リバティ(しもきた空間リバティ。現在は閉館)には奥にソファがあって。そこだけは絶対に座っちゃダメなんだろうなと思ってた。スピードワゴンさんやオジンオズボーンさんが座ってたから、「俺らが座って良い場所じゃない」みたいな。そういうのは、周りを見てればなんとなく分かってくるから。

中田: ライブで「大学生の人が来てるらしいよ」って、なんか異分子と言うか、失礼になっちゃうのはしょうがないのよ。今だから分かるけど、「大学お笑いってなんだよ」って思う人はいるから。その段階からなんの失礼もなく、つつがなくコミュニケーション取れるやつは、キモイよ。

宇野: 絶対、誰かにはなにか思われてるから。しょうがないよ。だからそんなに気にせずで良いと思うけどね。

中田: 愚問です! がっかりしてる。君には。こんなくだらない質問をするとは。もっと魂の質問があるだろ!

ルールの中でセンスを出すのか、ルールが無い場所を攻めるか


お悩み②
ネタが通用するか不安です。
キャラクターや芸能人の映像・音響を使うなど
権利的にグレーなネタをやっているので、オーディションで通用しないのでは……。


中田: 確かにねぇ。清水のネタは数個しか見たこと無いけど、それでも「絶対アウトだな」ってネタはあるね。

宇野: テレビになると難しいかもね。

中田: 清水の『おじゃる丸』のネタがあるじゃん。どういうのだっけ?

清水: まず『おじゃる丸』のオープニングが始まって、(外国人風に)「カモンカズマ、カモンカズマ……」で、カズマが出てきたらめっちゃ喜んで「カズマ~~~!!!」って言いまくる。ただ「カズマ」って言いまくる、“カズマファン”のネタです。

※アニメ『おじゃる丸』に出てくるキャラクター・田村カズマのこと。

中田: (カズマと叫ぶ)少年が見ているパソコンの映像を、舞台の後ろに映してたよね。

清水: そうです。

中田: お客さんは映像を観てて、カズマが出たきたら(清水が)「カズマ~!!」って言う……音だけ聞いてるとわけが分からないネタなんだけど(笑)。でもあれウケてたよね。レジスタリーグ(K-PROが主催する16~22歳のバトルライブ)で優勝してたっけ?

清水: 優勝しました。

宇野: 面白くはあったけど(笑)、じゃああれをテレビで流せるかって言ったら、うーん……。

中田: 自分が面白いと思うものを貫いて良いんだけど、『おじゃる丸』を作った人がいるじゃん、この世に。しみったれたことを言うけど、その人が観たときにどう思うか。別に「知らねぇよ」って感性もあって良いと思うんだけど、この世って全部、誰かしらが関わって作ったものの積み重なりだったりするから。分かりやすいラインとして“著作権”というものがあって、「人が作ったものを適当に使わないでください」ってルールじゃん。なんかね、まずそこに立つっていう感覚は大事かもしれない。「著作権厳しいよな」っていうのは分かるんだけど、その縛りの中で、どう自分の“面白い”を表現するか。

清水: そうっすね……。

中田: この『おじゃる丸』のネタ、めっちゃ面白いじゃん。『おじゃる丸』使えたら最高だけど、使わずにどう出すか、っていうのがセンスじゃない?

宇野: それができそうだしね。使わずに面白いことができる人なんだろうなって、ネタ見て思うよ。どこにでも出せるネタも作れるんじゃない? 

清水: 1回挑戦したほうが良いですかね。でも自分の中で、「これが最高だ!」って思えたのが『おじゃる丸』だったんですよ。

宇野: 清水の感性としてね。

清水: ネタに対して妥協したら、やる価値が自分の中でなくなっちゃうというか……

中田: 妥協っていうかさ、それは『おじゃる丸』の面白さでしょ?

清水: そうですね。『おじゃる丸』が面白い……。

中田: 「清水駿平の面白さ」じゃないでしょ。だから、面白さの根拠がそこ(おじゃる丸)にあるとダメなんだろうね。

清水: ヤバいっすね……。じゃあ「グーフィー空手道場」とかもダメですよね。

中田: ダメだよ! ……グーフィー空手……面白いだろな……。

宇野: そこは、今後ぶち当たる壁なのかもしれない。

中田: でもそのセンスがあれば。

宇野: 面白いことは考えられる人なんだから。

清水駿平「福山雅治」

中田: 「面白いのにそれやっちゃうか~」ってのは、清水駿平とAKIRAにはめっちゃ思う。

宇野: AKIRAっていう学生のピン芸人ね(笑)。

中田: 結論として、耳が痛いところでもあるかもしれないけど、直さなきゃいけないところは絶対出てくると思う。っていうか、逆転の発想かもしれないよね。『おじゃる丸』のネタを出してもバズるやり方があれば全然良いんじゃない?

宇野: 確かに。

中田: 逆にルールが無い側を攻めるというか。

宇野: テレビじゃ無理だろうけど、極端にそういうことだけやって食う道はあるかもしんないしね。ライブでカルト的な人気になれば食えるだろうし。

中田: オーディションっていう、ある意味“制作側が作った土俵”に乗るなら、その土俵の中で戦わないといけない。まぁどっちを取るか、うまく調整だよね、そこは。

清水: オーディションのときは、気合い入れて自分の“面白い”を作ります。

宇野: それなら全然それで良いと思う(笑)。

中田: 多分、器用にやってる人いるだろうしね。

宇野: 全然いる。ライブではこんなことやっちゃうけど……で売れてる人も絶対いると思う。

中田: そこは場面場面でね。

Twitterルール


お悩み③
大人が怖いです。
怒られたらどうしよう、と不安です。


清水: 芸人の先輩は優しいイメージがあるんですけど……マジで大人が全員怖くなっちゃうんですよ。事務所とか入っても、ちょっとでも怒られちゃったりしたらずっと怯えてしまいそうで。どうしようかって。

中田: うん。めっちゃめちゃ分かる。

宇野: 中田はマジでそう(笑)。中田はずっと、大人が怖い怖いって言ってる。

中田: 太田プロに入って1~2年のころは、事務所に行きたくなくてしょうがなくて。今思うと、別に堂々としてれば良いんだけど。

宇野: 太田のルールで、全社員に挨拶をしなきゃいけないの。事務所行ったら。

中田: 社長、副社長、経理、部長ゾーン……

宇野: 一人ひとりに挨拶しなきゃいけなくて。ルールだからしょうがないんだけど、確かに中田は嫌がってたね。

中田: そうそうそう。怒られるのが嫌なんだよね、とにかくね。

清水: そうですね。

中田: これは経験則として言わせてもらうと、意外に大丈夫。

清水: 怒られても大丈夫ってことですか?

中田: いや、怒られない。あんまり。ちゃんとしてれば。

宇野: 確かに。怒られたこともゼロではないけどね。あとね、嫌な怒り方してくる人ってみんなから嫌われてるから、大丈夫(笑)。たまにいんのよ。1回あったのが、アンケートで「〇〇を一言で」って書いてたの。だから、“一言”で書くじゃん。そしたら偉い人が来て「アンケートは、びっちり埋めないといけないの。誰々も誰々も、アンケートびっちり埋めるんだから!」って。……“一言”って書いてあるだろ、ババァ!!!……って思ったの。

中田: やめて!!

宇野: もちろん言わないよ?

中田: ここ見るかもしれないんだから……。

宇野: そのときは「後で書き足しておきます」って言って、「なんなんあいつ」ってお互い喋って。後から聞いたら、「あの人マジでやばいよな」って周りも言ってて。嫌な人は、ちゃんと「嫌な人」みたいな感じになってるから。そこは腹括って「そういう人」。どうしても一定数はいるからね、少ないけど。そこはもう、しょうがない。

清水: すごい嫌なことがあったとしたら、フォロー外しちゃうと思うんですよ。Twitterの。

宇野: (笑)。

中田: フォロー外すってのは、ちょっと角が立つから。ミュートって手がある。

清水: (フォロー数より)フォロワーが多い方が良く見えるので、フォローする数を保ちたくて……

宇野: 好きね、Twitter(笑)。

清水: フォローの数は995を保ってるんです。なので「なんでこの人のことフォローしてるんだろう」ってなっちゃって。外したいんですけど、大丈夫ですか?

中田: (笑)。いやまぁ……知らねぇよ。

宇野: マジで知らねぇ(笑)。お前のTwitterのアドバイスはしないよ(笑)。

中田: でも分かる分かる! Twitter面白いよなぁ~。俺も芸人始めたてのころは、ファンの方にフォローされたら都度都度返すようにしててね。

宇野: お客さんにフォロー返すって芸人もいるからね。

中田: 「キリないわ」ってなってきて、今は返してないんだけど。でも「ライブに来てないこの人のことを、なんでフォローしてるんだろう。でも外すのもなぁ」みたいな、そういうのある。で、清水の「知らねぇよ」って悩み自体がめっちゃ面白かったりするから(笑)。具体的なルールとか決めてもいいかも。

清水: Twitterのですか?

中田: Twitterは面白いよね。俺の周り、あんまりいないけど。Twitter面白いっていう人。

宇野: 中田たまに、「Twitter頑張ってて良かったなぁ」って言ってて、どういう感情? って思うけど(笑)。まぁでも、それは一個の個性だからね。自由にしてもらって良いと思う(笑)。

中田: 俺は、Twitterで嫌な人見つけたらミュートっていうのを推奨してて。で、今1,800人ミュートしてんのね。

清水: ……え?

宇野: 引いてんじゃん。Twitter大好きな清水が引いちゃってるよ。

中田: 嫌なことがあったら避ける「自分ルール」みたいなものは早めに決めておいて、フォロー外すなら外すで良しだよ。

清水: ミュートしてて、その人のツイートを見逃してて辻褄が合わないぞ、みたいなことはありませんか?

中田: そこは、えっとね。そこも計算した上で、マジでどうでも良い人をミュートにする。で、意外と困らない。しんどい人と絡む機会って無いからね。辻褄が合わなくて困ったことって、意外に無い。今のところ。

中田によるTwitterアドバイスを真剣に聞く。清水Twitter:@shunpei_shimizu

清水: 本当に勉強になりました。

宇野: なんの話だよ(笑)。良いよミュートの話は。

中田: あと、先輩芸人にクソリプしてる人もミュートにしていく。そうすると「おいおい、なんだこいつ」みたいな人を見つけると、既にミュートしてたりするのよ、過去の俺が。それ、すごい嬉しいよ。

宇野: 知らねぇよ(笑)。

中田: 合ってた! ってなるから。

宇野: 良いよ、そんな話は(笑)。

中田: Twitter YOAKEMAE。

宇野: 違うわ(笑)。まぁね、Twitterに関しては自由にしてもらって良いと思いますよ(笑)。

中田: そういう、ウジウジした「なんだそれ!」みたいなのが面白かったりする。

宇野: その感性はね、持っておいてほしいよね。

中田: 自分からひけらかすと鼻につくけど、自覚はしといて良いと思う。「こういうところが面白いんだ」って。

宇野: なんでも“おもしろ”になっていくからね。

番外編

宇野: プロになったら、深夜番組に出たいの?

清水: そうですね。

宇野: 「お笑い好きの層に楽しんでほしいので、そういう方が観る番組に出れたら良い。やりたくない仕事は報道番組です。知識が乏しいのに加え、自分は緊張の場で的外れなことを連発しますので、炎上してしまいます」(清水のアンケートより)。

中田: お前にオファーいかないから。報道番組。

宇野: どんだけ売れても、報道番組は(笑)。

中田: 「報道番組に出るのが不安です」って今から言ってるやついないから(笑)。売れて、コメンテーターとかになるのが怖いってことか。

清水: そうです。

宇野: それは断れば良いことだから(笑)。みんなまずは深夜番組を目指すよね。具体的に出たい番組あるの?

清水: 終わっちゃいましたけど、『有田ジェネレーション』とか好きでした。あと『ゴッドタン』とか。高校の友達とかで、ちょっとお笑い好きくらいの人でも観てる番組。

宇野: お笑い好きはけっこう観てるもんね。『ゴッドタン』とか出れそうだけどな。

中田: 確かにな。

宇野: 毎年「この若手がすごい」ってランキングがあって、僕らも何回か名前だけ出してもらってるけど、それにはけっこうライブシーンの人も出るし。

中田: あぁいうところにお笑いサークルが食い込んでくるのも、時間の問題な気がするね。

宇野: 全然あると思うよ。だから『ゴッドタン』に関しては、勝手なこと言うけど、出れそうだけどな。少なくとも名前が出るとかは、1~2年のうちにもありそうだと思っちゃう。

中田: 俺ら目線で言うと、シェイク・ヒロシが出るの!? っていうのがけっこうあるのよ。元から知ってる身からすると。

宇野: シェイク・ヒロシね、太田プロの……所属でも無かったからね。太田の養成所にはいたけど、所属はしなくて。ただ、同期だった芸人がすごい面白がってて。ろくに喋れない、ろくにネタ出来ない、ただただヤバいやつとして名前を書いたら、番組が面白がってTwitterのDMでオファーして番組に出てっていう。

清水: それがオンエアされたとき、シェイク・ヒロシさん気になって、「モータースLIVE!」観に行ったんですよ。

※ヤマザキモータースが主催する若手お笑いのライブ

中田: えー! マジで!?

清水: ずっと「遊戯王!」って言ってるだけで、徐々暗転していって……

中田: ヤバかったでしょ。

中田: 出るために、こういうこと頑張りたいとかある?

清水: けっこう喋りが苦手なんですよ。……でも、さっき言ってくれたような武器として、Twitter頑張っていきたいです。

中田: (笑)。それだよ! Twitterなんだよ。

意外なところに活路があった様子……

宇野: お前だけなんだよ(笑)。Twitterに活路見出してんの。でもTwitterって確かに、あんまりいないかもね。Twitterをめちゃめちゃ頑張ってる芸人って。みんなは、業務的に告知で利用したりとか。俺もそうだけど。だからガチでTwitter楽しんでるやつっていうのは、ちょっと面白いかもしれないね。

清水: Twitter頑張ります。

宇野: めっちゃTwitter頑張るってこと!? これから清水は。大丈夫かな、そんなアドバイスで良かったのかな。

中田: それもまた「芸人」だからな。

宇野: いろんな道がありますから。

中田: ひとつ言えるのは、責任は持てないってこと。

宇野: 炎上したときとか、俺らの名前出さないでね。

中田: 頼むよ、ほんと。

清水: 自分でケツ拭きます。


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写真・文:堀越 愛

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