若手コント界のダークホース!「こんなに面白い顔のヤツと組むチャンス、人生で二度と無い」〈GEININ DATABASE file.4 スパイシーガーリック〉

編集部が「次のスター」として注目するお笑い芸人に話を聞く新連載『GEININ DATABASE』。

芸歴や事務所に制限を設けず、今注目したい芸人さんを取り上げる新企画です。お笑い専門メディアを掲げるWLUCK PARKだからこそ、いち早く次のスターに注目したいと考えました。

第4回に登場していただくのは、プロダクション人力舎所属の芸人・スパイシーガーリック

スパイシーガーリック(左:片山 智勝、右:村木 侑平)

スパイシーガーリックは、お笑いファンが今もっとも注目している若手コント師。2020年10月に結成し、コンビ歴はわずか2年。『キングオブコント2022』準決勝に進出、勢いそのまま『NHK新人お笑い大賞』決勝に駒を進めました。

ダークホースとして急激に頭角をあらわしたスパイシーガーリック。変化の渦中にいる二人に、コンビ結成のきっかけやターニングポイントとなったネタなど、話を聞いてきました。

就職は芸人になるための布石

———芸人になろうと思ったのはいつ頃ですか?

片山 智勝(以下、片山): 僕は、就職活動の時期ですね。芸人になりたいと親に伝えたら、僕が覚えてないだけで小学生の頃からずーっと言ってたらしいです。小さい頃から志村けんさんが大好きで、バカ殿様は絶対に観てました。だから、僕のルーツは志村けんさんですね。「芸人になったらいつか会いたい」ってずっと思ってて。でも親に「いったん就職してほしい」と言われたんで、大学卒業後3年だけ働きました。

———就職時点で「3年後辞めよう」と決めてたんですか?

片山: そうです。辞めるために、あえて離職率の高い職場を探したんですよ。年功序列で給料が上がるところよりインセンティブで稼げるところが良いなと思って、不動産の営業マンになりました。営業成績は、すごく良かったです(笑)。

村木 侑平(以下、村木): やらしい(笑)。

———在職中にタイで働いた期間もあるそうですね。「いずれ辞める」という気持ちで、仕事を頑張れたのがすごいです。普通なら、身が入らなそうなものですが……。

片山: それが、逆なんですよ。親から「成績をちゃんと残してから辞めなさい」と言われてたのもあって、納得してもらうために必要だったので。「早くお笑いやりたい」という気持ちで、結果が出ちゃった(笑)。タイは、「給料もらいながら海外に行けるなんて、エピソードもできるし良いな」と思って行きました。

———就職は、完全に芸人になるための布石だったんですね。村木さんはいつ頃から目指していたんですか?

村木: 僕は高校3年生のときですね。それまでは全く芸人になろうと思ってなかったけど、人を笑わせること自体は昔から好きだったんです。小・中学校はクラスの人気者ポジションにいたんですけど、高校は知り合いがいないところに入ることになって。この状態から人気者になれたらお笑いの道も考えてみようかな、って感じでした。そしたら、あれよあれよと打ち解け、人気者になり、最終的には「レジェンド村木」と言われるくらいになり……頂点に立ったので、これは「芸人になろう」と(笑)。

片山: 学校の外でも人気者になれるぞ、と。

村木: はい、自分は「天才なんだ」と思って芸人になりました(笑)。

———高校時代は、どんな笑いの取り方をしてたんですか?

村木: 人前で漫才をやったりしたこともあるんですけど、基本的には授業中ですね。“先生も不快にならない笑い”というものを目指しておりました。例えば英語の授業で、先生が英文を日本文にして教えてくれるとき。「computer」って出たとき「先生、コンピューターの漢字が分かりません!」と僕が言うと、先生が「コンピューターに漢字はねぇだろ!」とツッコんで盛り上がるみたいな……

片山: 高校生だもんね。

村木: そうそう、高校生ですから(笑)。当時は先生との瞬時の対話で、クラスを沸かしてました。この積み重ねで、知らぬ間に「レジェンド」と呼ばれるようになってました。

———クラスの人気者で満足せず、芸人になろうと思うきっかけはありましたか?例えば、好きなお笑い番組があったとか……

村木: DVD借りて、深夜のコント番組をよく観てました。『はねトび(はねるのトびら)』、『笑う犬(笑う犬の冒険)』、『リチャードホール』とか……。ネタ中に笑っちゃうような、アドリブ感のあるコントを観て「やってみたい」と思ったんですよ。自由で、台本があるのか無いのか分からないコントにめっちゃハマってました。

芸人引退の危機を止めた現相方

———前のコンビを解散して、スパイシーガーリックを結成したそうですね。コンビを組む前のお互いの印象は覚えてますか?

片山: 出会った初日から思ってたんですけど、村木は顔がとにかく面白い。しかも、割とキレイな顔をしているのにも関わらず“面白い顔”。これは天性の才能だし、コントをやる上ですごい武器になるんじゃないかと思ってました。あと、本当に良いヤツです。誰に対しても偉そうにしてるところは見たこと無くて、同期に対してもへりくだるようなヤツなんですよ。組む前からめちゃくちゃ仲良くて、すごい優しくて思いやりのある人間だと思ってました。

———元々仲が良かったんですね。では、組んでからのギャップもあまり無かったですか?

片山: 思ったより「学が無い」くらいですね(笑)。内面的な部分は、ずっと関わってきたし変わらないです。

———村木さんは、最初の印象はどうでしたか?

村木: 僕は正直、第1印象は怖かったです。

片山: 養成所の頃は、いろんな人と喋るような感じではなかったもんね。

村木: 近寄りがたいところがありましたね。でも、なにがきっかけか分からないんですけど、どんどん打ち解けて最終的には二人で飲みに行くくらい仲良くなりました。だから、印象はだいぶ変わりましたね。後から、最初の頃は「カッコつけてたんだな」と気付きました(笑)。ちょっとスカしてたというか。

片山: 最初は威嚇してました(笑)。

———前のコンビを解散してスパイシーガーリックを組んだ裏には、どんな経緯があったんですか?

片山: 村木は「あまからひやし」っていうトリオを組んでたんですけど、解散のタイミング(2020年4月)で彼が「芸人を辞める」って言い始めたんです。コロナ禍でみんなが家にこもってる時期、同期とリモート飲み会をやったときにそれを聞いて。ほかの同期が「辞める」って言っても僕はまったく引き留めようと思わないんですけど、村木だけは“もったいない”というか……あと「社会人のほうが楽に稼げる」とか言ったんで、経験者の僕はなんか腹が立って(笑)。「社会人だって簡単にメシ食えるわけじゃねぇからな!」ってブチ切れて、「辞めんな!」って。

村木: 説教されました。

片山: 「辞めんな!」って言いつつ、内心は「やべぇ、村木が辞めちゃうかも」と焦って。当時僕が組んでたコンビがうまくいってなかったのもあったんで、そっちを解散して村木と組もうと。

———村木さんと組むために、前のコンビを解散したんですね。

片山: そうですね。解散のときはだいぶ揉めたんですけど、誰にどう思われても良いから「村木と組みたい」と思って。当時の相方には申し訳なかったです。でもあんな面白い顔のヤツと組めるなんて、たぶん人生で二度と無いんじゃないかと。チャンスだと思ったんですよ、僕は。

村木: 正解でしたね。

片山: 今となってはね(笑)。

———片山さんから「組もう」と言われたとき、村木さんはどう思ったんですか?

村木: 「片山さんとなら良いかな」と思いました。他の人だったらそうは思わなかったんですけど、片山さんの熱量もすごかったし、片山さんの面白さは養成所のときから知ってますんで。でも最初は本当に不安でしたね。

片山: ちょっと威圧的に誘ったしね(笑)。「辞めたら殺す」くらいのこと言った気がします。怖かった……よね?

村木: 怖かったっす(笑)。引き留めるために「社会人は辛い」と洗脳されまして……で、考え直そうかなと。

片山: 村木は断ることが苦手なんで、多分「本当は辞めたい」って気持ちもあったよね。

村木: 当時は半々だったかもしれないですね。微妙なところでした。

片山: だよね。顔見てて「そうかな」って思ったんだよね。

———片山さんは、そこまでしても本当に引き留めたかったんですね。

片山: そうですね。だからこそ半端なことはできないし、責任も感じてこの2年頑張れたのかなと思います。

元エレジョン森枝さんのアドバイスが転機に

———今年に入ってから、急激に頭角を現した印象があります。4月に事務所ライブで優勝、8月に『あらびき団』出演、『キングオブコント』準決勝進出、『NHK新人お笑い大賞』決勝進出……と、ネタを評価されることが増えていますよね。

村木: 本当に、去年まではなにも無かったんです。『キングオブコント』も1回戦で落ちちゃいましたし。自分たちでエントリーフィーを払ってフリーライブに出るようなことを繰り返してたけど、急に結果が出始めました。

———なにか、明確に変えたことがあるんですか?

片山: 昨年末か今年のはじめくらいに、元エレファントジョンの森枝さんに「動きを使うネタが面白い気がするから、そういうネタをどんどん作ったら調子良くなるんじゃないか」ってアドバイスをいただいたんです。そこから“動き”をメインにネタを作るようになって、とんとん拍子に。

村木: めっちゃ迷ってる時期があったんですよ。ネタがウケたとしても、なにでウケてるのか気付けてなくて。動きがウケてることを分かってないから、座って喋るだけのコントをしてみたり……。で、「動いたほうが良い」と言われて「なるほど」と。

———ウケるようになった、ターニングポイント的なネタはありますか?

片山: 「公園デート」ですかね。森枝さんが「動きも上手いし面白い」と評価してくださって。「動き中心で作ったほうが良いんじゃないか」って言ってくれた、きっかけのネタですね。

村木: これ、ネタ見せで拍手笑いが起きたんですよ(笑)。ネタ見せってそんなにウケないのに。

片山: こっちも釣られて笑っちゃったもんね。あと、事務所ライブで優勝したのが「ゾンビ」のネタです。『あらびき団』や『キングオブコント』でもこれをやりました。

———いろんな景色を見せてくれたネタなんですね。

片山: それから、「ロウリュ」で、『新参者』というライブで優勝できました。これもだいぶ動きを使うネタですね。僕らはこれが1番の勝負ネタだと思って『キングオブコント』に挑んだんですよ。そしたら違ったみたいで……。準決勝の1日目に「ゾンビ」、2日目に「ロウリュ」をやったんですけど、2日目のほうが弱くなってしまって。

※『新参者4』ライブレポート:https://wluck-park.com/live-report/5365/

村木: あー、そうか……と。

片山: 賞レースでなにが評価されるのか、この辺の感覚はまだ無いんですよね。お恥ずかしい話、準決勝は「行けちゃった」みたいなところがあるというか。

———どういうネタがウケるのか、実践で学んでいる感じなんですかね。

片山: そうですね。あと、年代が近いコント師のネタはYouTubeやライブで観るようにしてます。今どんな流行りがあるのかとか、そういうのはチェックするようにしてますね。

———自分たちが考える面白さというより、「なにがウケるか」を戦略的に抑えてネタを作っているんですか?

片山: 「勝つ」ためには、それもやらないといけないのかなと思ってます。でも、基本はネタ合わせで二人とも笑っちゃうようなネタを作るようにしてますね。「楽しい」と思うネタって、セリフが飛ぶことが無いんですよ。

村木: 無いんですよね、不思議なことに。

片山: 楽しくてね。

———ネタは、マイムがリアルなのもすごいなと。マイムはどこかで学んだんですか?

片山: 「ゾンビ」のパントマイムに関しては、小学生くらいの頃から遊びでやってたんですよ。それをネタに取り入れた感じですね。で、このネタをやるときはすっごいスパルタで教えて、何度も練習してもらって。

村木: エスカレーターを下るマイムですね。普通はできないと思うんですよ(笑)。コツを掴んだら僕のほうが上手くなって、本番ではかなり滑らかに降りれるようになりました。

片山: そのくらい練習してくれたんだよね。

———ここまでマイムにこだわるコント師、なかなかいないですよね。

村木: が~まるちょばさんくらいですよね。

片山: でも、長いセリフやシリアスな演技が苦手だからこそ、動きに行ったっていうのもあるよね。変な顔や動きをすることが、多分僕らの強みなのかなと。

村木: これしかできなかった、というのもあります。できないことに、早めに気付きましたよね。

———早いタイミングで武器を見つけて、シフトしてちゃんと結果につなげるって、なかなかできないですよね。

片山: 芸歴4年目に組み直したので、焦ってました。遠回りできないというか、必死にできることを探してましたね。

———『キングオブコント』で準決勝に残ったことで、芸人さんからの見られ方に変化は感じますか?

村木: はじめましての先輩に挨拶に行くと、すでに知っててくださって「準決勝のネタ見たよ」とか言っていただけることが増えました。

片山: 今までは「はじめまして、人力舎のスパイシーガーリックです」って言っても興味なさそうな顔されるとか、そっけない態度の先輩が多かったんです。でも最近は「あ、噂の」とか言ってくれたり。

村木: 誰ですか?興味なさそうにした先輩。

片山: 言わないよ。いっぱいいるからね(笑)。村木が前に組んでたあまからひやしは、ライブシーンではそこそこ知られてる存在だったんですよ。だから挨拶すると、「あれ、トリオじゃなかったっけ?君は誰?」みたいな反応されることが続いてて。それが準決勝行ってから、やっと「スパイシーガーリック」として見てもらえるようになりました。

村木: 確かに。そこは大きな変化です。

———準決勝に行くまでは、前のトリオがずっと付きまとってたんですね。

片山: それがすっごいコンプレックスでした。

村木: 僕も嫌でしたね。トリオ時代にちゃんとコミュニケーションできてなかった先輩たちと再度ご一緒するようになって、「1回終わったヤツ」みたいに思われるんじゃないかな、なんて。誰も思ってないとは思うんですけどね。

片山: 村木はトリオ時代に『キングオブコント』準々決勝まで行ってるので。引退を引き留めてやってる以上は、その上に行かないとって思ってました。

———この数ヶ月で、だいぶ見られ方が変わったんですね。ちなみにお笑いファンからの見られ方に変化は感じますか?

片山: ライブを予約するとき目当ての芸人を書くんですけど、僕らはずっとゼロだったんですよ。でもここ最近、ひとつのライブで2~4人くらい僕らの名前を書いてくれる人が出てきて。

———スパイシーガーリック目当てでライブに来てくれる人が増えてきてるんですね。

片山: 少数かもしれないですけど、だいぶモチベーションになるよね。あと、Twitterの自己紹介のところに好きな芸人として「スパイシーガーリック」って書いてくれてるお笑いファンの方もいて。あれ嬉しかったな~。こういう気持ち忘れないようにしたいよね。

村木: 確かに。片山さんは特にね。

片山: なんで(笑)。

コンビで過酷なサバイバルロケに挑みたい

———ついつい意識してしまう芸人を教えてください。

片山: 同期のGパンパンダです。同期なのに、何回ネタ見ても「適わねぇ」って思います。

村木: 僕は、同じ事務所のトンツカタンさんですね。大好きで、毎回ライブを見学させてもらってます。

———では、この人に「褒められたい」「認められたい」と思う芸人さんは?

片山: 人力舎で、活躍している先輩に認めてもらえたらむちゃくちゃ嬉しいです。トンツカタンさん、吉住さん、真空ジェシカさん、ザ・マミィさん、岡野陽一さん、あと東京03さんとか。「ゾンビ」のネタを吉住さんに褒めてもらったときは、脳汁出ましたね。「あのネタおしゃれだね」って言われて。

———おしゃれ!

片山: 「おしゃれだね」って言うんですよ、あの人。

村木: 面白いね、を通り越して。

片山: 嬉しかったですね。脳汁ぶわーっと出ました。

———東京03さんにネタを見ていただいたことはあるんですか?

片山: 飯塚さんから「ゾンビのコントでガッと来てるけど、早めにやめなさい」と言われました。特殊なコントなんで、このイメージがつき過ぎると他がやりづらくなるからと。先のことを考えたアドバイスをいただきました。

———今後メディアに出ていくことも踏まえた、すごく深いアドバイスですね。村木さんは、「認められたい」と思う芸人はいますか?

村木: 結局、1番認められたいのは……片山ですね。

片山: なんでだよ。

村木: いや、いろんな芸人さんに認められたいですけど、やっぱり相方に認めてもらうことが、コントをやる上で1番重要なんじゃないかと。僕は思っております。

片山: 恥ずかしいよ、普通に。大丈夫、面白いよ。

村木: ありがとうございます。Gパンパンダ以上に……“1人Gパンパンダ”になれるように頑張りたいです。

———1番手前にある、直近で達成したい目標はなんですか?

片山: NHK優勝ですね。どうしても獲りたいです。『キングオブコント』も結局負けてしまったので。「優勝」という賞を獲りたい。

村木: もっと世に存在を知らせたいですね。

———NHKで優勝することを踏まえ、1年後までにやれていたら嬉しい仕事はありますか?

村木: サバイバルロケとか。仕事で海外に行けたら嬉しいですね。

片山: けっこう過酷なことでもやりたい二人なんで、『黄金伝説(いきなり!黄金伝説)』とか『イッテQ!(世界の果てまでイッテQ!)』みたいな番組に憧れてます。

村木: ひな壇で見るより、「行ってきましたよ!」が良い。

片山: コンビで体当たりロケができたら、むちゃくちゃ嬉しい。

———「これができたら芸人辞めても良い」くらいの究極の目標はありますか?

村木: 僕は、僕と会ったすべての人が「また会いたい」と思うくらい必要とされる人間になれたら、もう良いかなと思います。芸人じゃなくても人として認められた感があるので。

片山: 僕は、前田敦子さんと結婚できたら。青春時代に1番好きだった人なんで、結婚できたら目標達成みたいなところあります。思い残すことはない。

———では最後の質問です。芸人になる前夜の自分に、ひとこと言うとしたら?

片山: 僕は、「前田あっちゃんと結婚できる可能性が出てきたぞ。無くはないぞ」と。

村木: 「素晴らシーガーリック」!

取材(文・写真)、編集:堀越 愛

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左:片山 智勝
右:村木 侑平

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