笑いの仕事をつくるオンラインサロン「WLUCK」発プロジェクト『芸人キングダム』。これは“芸人界の勢力図を作る”という取組で、芸人のメディア・ライブ・SNS活動を約5か月にわたり徹底調査。先日、ついに勢力図が完成しました。(関連記事:芸人キングダム2020 ~大きく変わりつつある“芸人勢力図”〜 )今回は、『芸人キングダム』の総合パワーランキング“トップ12”に注目。第7世代がどこまで芸人界のトップに食い込んでいるのか、分析します。
前回の記事では、『芸人キングダム』勢力図の見方や算出方法についてご紹介しました。この記事では、勢力図の前段階として作成したランキングのうち、特に「総合パワーランキング ベスト12」を見ていきたいと思います。
TOP12にランクインしている芸人は、下記の通り。
サンドウィッチマン/オードリー/千鳥/さまぁ~ず/バカリズム/霜降り明星/かまいたち/ミキ/NON STYLE/東京03/ジャルジャル/EXIT
TOP12の芸人を勢力図に落とし込むと、4パターンに大別できることが分かります。(下図①~④を参照)
これを4つの型に落とし込み、ひとつひとつ紐解いていきます。
【4つの型】
① バランス型、②メディア・SNS重視型、③劇場重視型、④SNS・劇場重視型
勢力図から見る、4つの傾向とは?
① バランス型
1位 サンドウィッチマン 278/100/78/100
2位 オードリー 225/100/25/100
3位 千鳥 222/72/50/100
4位 さまぁ~ず 218/68/50/100
5位 バカリズム 204/54/50/100
(合計/メディア/SNS/劇場)
TOP5に輝いた芸人は、すべての項目でコンスタントに数値を獲得していました。そしてかなりの売れっ子にもかかわらず、単独ライブで全国ツアーを行っているという共通の特徴がありました。オードリーは『オードリーのオールナイトニッポン 10周年全国ツアー in 日本武道館』を全国ツアーとして換算(イベント中で漫才をしていたため)。芸人の原点である「ネタ」を根幹に持ち続けていることが『芸人キングダム』でトップになるための必須条件なのでしょう。
中でも1位のサンドウィッチマンは2位のオードリーと50ポイント以上差をつけています。サンドウィッチマンはグレープカンパニーの公式YouTubeをSNSに換算しています。理由は、”再生回数が1000万回を超えているネタが多い”から。他所属芸人とは圧倒的に異なるため、SNSの数値として換算しました。公式・非公式含めネタで1000万回再生を超えている動画はほとんどないので、いかにサンドウィッチマンのネタが愛されているかがわかります。
3位の千鳥は、言わずもがな近年安定した露出を続けている芸人 。5位のバカリズムも脚本を中心に活躍しています。そんな中でさまぁ~ずは芸歴30年越えながら4位に食い込む大健闘。2人はよく「売れっ子がするバラエティ1周の中に入っていない」と自虐していますが、それだけ独自の地位を確立している証拠とも言えます。
②メディア・SNS重視型
6位 霜降り明星 192/87/100/5
7位 かまいたち 183/86/62/35
(合計/メディア/SNS/劇場)
続く2組は、ここ2年で一気に売れっ子になった芸人がランクインしました。
この2組の特徴はSNS。これまでの売れっ子はメディア露出に力を入れる人が多かったと思いますが、この2組は売れている最中にYouTubeを始め、オリジナリティある動画を定期的に更新することでさらに自分たちをPRしています。特に霜降り明星はコラボなしで毎日配信というストロングスタイルを貫き、芸人で6組目となる登録者100万人を達成。現在芸人で登録者100万人達成者は7組いますが、これだけTVやラジオのレギュラーを持っていながら達成しているのは彼らだけです。かまいたちも様々な場面で「今年が大事」と公言しており、メディア露出を始めさらなる飛躍が期待されます。
③劇場重視型
8位 ミキ 171/48/35/88
9位 NON STYLE 166/16/50/100
10位 東京03 159/6/53/100
(合計/メディア/SNS/劇場)
続く3組は劇場でのライブを重視しています。
ミキは「将来NGK(なんばグランド花月)でトリを務める漫才師」を目指していると公言しており、テレビと劇場の出番が被っていた場合は劇場を優先するようにマネージャーとも話しているそうです。
NON STYLEもテレビ露出が多くないにもかかわらず、2019年に『水曜日のダウンタウン』で放送された「女子中高生の人気芸人ランキング」では1位のサンドウィッチマン・3位の千鳥に挟まれて2位を獲得。現在も特番で放送される『エンタの神様』などでネタファンが増え続けています。
東京03に至っては2019年の単独ライブ『人間味風』で4万人の動員を記録。これはお笑い史の中でもラーメンズに次ぐ歴代2位の記録だそうです。コロナ禍でもリモートライブを配信するなど、とにかくコントに熱いトリオということがわかります。
④SNS・劇場重視型
11位 ジャルジャル 153/2/81/70
12位 EXIT 152/35/67/50
(合計/メディア/SNS/劇場)
最後の2組はSNS・劇場重視型。ファンとの距離が近いのが特徴です。
ジャルジャルは今年の『キングオブコント』優勝が記憶に新しいところ。彼らは自身のYouTubeチャンネルで毎日ネタ動画をあげていますが、今年『キングオブコント』で披露したネタにはコメント欄の反応を反映させたと語っています。これまで芸人がネタを磨き上げていく場合は劇場でネタをかけていくことが主でしたし、YouTubeチャンネルでネタ動画をあげるのは「違法で観られるくらいだったら公式で」という消極的な側面も正直あったと思います。そんな中、ジャルジャルは新たな形のネタの磨き方を見つけたのではないでしょうか?
そしてEXIT。彼らの功績は何と言っても公式ファンクラブ「entrance」 の設立でしょう。吉本で近年例の無いファンクラブを半年かけて作るというだけで、どれだけファン想いなのかは伝わってきます。チャラいだけではなくネタにも真剣に向き合っていることも人気の秘訣でしょう。ジャルジャルも昨年からネタサロン『ジャルジャルに興味ある奴』 を開設しており、一見共通点がなさそうなこの2組は「メディア以外で自分たちが活動できる場を増やしている」という点では似ているのかもしれません。
まとめ
さて、最後にタイトルにもあるように「第7世代はどこまで食い込んでるか」を検証します。TOP12にランクインしているのは、霜降り明星、ミキ、EXITの3組でした。一見少ないようにも見えますが、これまでのお笑いブームを考えると、MCクラスの中に20代中心でこれほど入り込めた世代も久しぶりでしょう。そもそもTOP12の中に芸歴11~15年目がいないことからもこの3組がどれだけ飛びぬけて活躍しているかがわかります。
メディアを中心に頑張り、最近では蛙亭やコウテイなどの同世代の露出増加にも一役買っている霜降り明星、全世代に愛される最強漫才師を目指すミキ、ファンをとにかく大切にしながらお笑い界に大きなうねりを生み出そうとしているEXIT、この一見バラバラな3組が今現在切磋琢磨していることは奇跡的なことではないでしょうか?今後も個性的な第7世代から目が離せません!