3人の個性がぶつかり、混じり合う! 次世代を担うトリオコント師【ハチカイ インタビュー】

ライブに通うお笑いファンであれば、ハチカイの噂は絶対に聞いたことがあるだろう。彼らが生み出す異質な空気感は、唯一無二。精巧につくられた小道具がネタの世界観を助長し、観客は彼らの世界に引き込まれる。

警備員ニシブチこんぽんからなるトリオのコント師・ハチカイ。三者三様の個性が光る彼らのルーツは、学生お笑いにある。学生芸人を取り上げるラジオ番組『さらば青春の光 東ブクロの学生芸人YOAKEMAE』(ラジオ関西)にゲスト出演した彼らに、収録後話を聞いた。

ハチカイ(警備員・ニシブチ・こんぽん)

前髪重い・眼鏡・大喜利やっている

———収録の感想をお聞かせください。

ニシブチ: 学生芸人がこれだけフューチャーされるということが、僕らの代ではそんなになかったので、こんなに大きなカルチャーになっているということが驚きでしたね。それから、僕たちは世代的にかまいたちさんやさらば青春の光さんのコントを見てきたので、東ブクロさんとの収録は緊張しました。

警備員: 東ブクロさんが優しくリードしてくれたので、そこまで緊張しませんでした。あと、『NOROSHI』に対する思いも自然に引き出してくれて、話していて楽しかったです。

———警備員さんは、東ブクロさんから「ギース尾関さんや夙川アトムさんのような雰囲気がある」と言われていましたね。どう感じましたか?

警備員: やっぱりそうなんだと思いました。

ニシブチ: うるせぇ。

警備員: 自分は「前髪重い・眼鏡・大喜利やっている」ということで先輩からなかなか可愛がられないタイプなので、そう言っていただいて光栄です。

———こんぽんさんはいかがでしたか?

こんぽん: 緊張しました~! 緊張めっちゃしました~! なんか、思ったより東ブクロさんがカッコよくて……なんか、緊張しちゃいました。

警備員: こんぽんの“女性”の部分が“芸人”の部分をぶち破って……。

こんぽん: うん……普通にカッコいいですね。

ニシブチ: 緊張はしてたんだね。

こんぽん: もう、血流が……。

警備員: 表現、官能小説じゃん。

ネタ・大喜利・アイドル

———トリオの中で、役割分担は意識していますか?

ニシブチ: 警備員には大喜利などの動画に出てもらって、こんぽんにはアイドルの活動をしてもらって、その間に僕がネタを書くという感じですね。

警備員: そうですね。僕はTwitterや大喜利を頑張ってハチカイの名前を広げて、その間にニシブチにはゴリゴリネタを書いてもらう。それが自分たちのスタイルですね。

こんぽん: 頑張ってま~す!

———皆さんは学生芸人からプロの芸人になったわけですが、ネタ作りの方向性に変化はありましたか?

ニシブチ: 僕はほとんど変わってないですね。

警備員: ニシブチが組んでいたヤスクニというコンビはコントをやっていて、今のハチカイと(ネタの方向性は)ほとんど変わりませんね。ただ、僕がやっていたコンビは漫才をやっていて。「エッチキメラ」というネタが代表ネタでした。

———ニシブチさんと警備員さんだけだと華が無さすぎるのでこんぽんさんを誘った、というのが、ハチカイ結成のきっかけなんですよね。こんぽんさんは、誘われたときどう思いましたか?

こんぽん: うまい話が来たなと思いました(笑)。学生時代、ニシブチさんに書いてもらったネタでいろんな大会で好成績を残せたので、「すごい人だ」と思ってたんですよ。だから、めっちゃ良いじゃん! と思いました。ただ同時期に、加入してたアイドルグループがデビュー直前だったというのもあって、ちょっと厳しくないか……? と。それで、断りましたね。

ニシブチ: そうですね、実は一回断られています。

警備員: それで、「30歳になったときどうするんだ?」の一言で説得して。

こんぽん: 確かになぁ、と納得して。ニシブチさんと警備員さんが、私を「テレビに出させる」って言ってくれて、じゃあやる! みたいな。

———学生時代はニシブチさんがこんぽんさんにネタを提供して、ピンネタをしていたんですよね。今後、こんぽんさんにネタを書いて『R-1』に出ることは考えていますか?

ニシブチ: うーん、“できれば”って感じですかね。とりあえず、まずはコントである程度の結果を残して、露出を増やしてからサブウェポンとして漫才やピン芸があればなと僕は考えています。まずはコントですね。

こんぽん: 覚えんのも大変なんで、今はやめてほしいですね(笑)。

———2021年の『M-1』は、ニシブチさんと警備員さんがジュウロッカイとして出場していましたね。

警備員: 自分はジュウロッカイの漫才を書いてはいるんですけど、ハチカイのコントを汚さないようには気を付けてます。けどやっぱり、(学生時代に)「エッチキメラ」というネタを書いた脳なので……葛藤中です。

———三人で漫才をすることは考えていますか?

警備員: 三人でやるなら、漫才よりコントかなと思ってます。元々、ジュウロッカイはこんぽんがアイドルの仕事で来れないとき、ニシブチと二人でやるために始めたのがきっかけなので。

頭脳派・中間・肉体派

———ニシブチさんは、ハチカイを組む前に1年間就職していたそうですね。大学卒業のタイミングでプロに進むことは考えていなかったんでしょうか?

ニシブチ: ヤスクニでプロに行こうとちょっと思ってたんですけど、相方が北海道のテレビ局に就職して、結婚すると言ってて……3回誘ってダメだったら諦めようと決めて、3回ともダメだったので諦めました。

———「お笑いがやりたい」という気持ちを秘めながら就職されたんですか?

ニシブチ: いや、一応やりきった気持ちはあったので折り合いはついていたんです。でも就職後に「お笑いやりたい」って気持ちが再燃して、そしたらちょうど警備員がなにもしてなくて。

警備員: なにもしてないっていうか、ちょっとゆっくりしてました。気付いたら大学卒業してて、気付いたら大喜利だけしてましたね。そこで「どうしよう」って思ってたときに、学生芸人の中でもかなり好きだったヤスクニの、ニシブチから声かけられて……って感じですね。

———こんぽんさんは、大学卒業間近のタイミングでハチカイ加入の声がかかったんですよね。就活はしてなかったんですか?

こんぽん: 私は元からアイドルになりたかったので、就活はしてないですね。もともと役者をやってたんですけど、役者って誰かにならないといけないじゃないですか。それが嫌で、「もっと自分を出せるアイドルになろう」って思ったんですよ。大学は教員養成系のところで、周りはみんな数学の先生になるような環境でした。私も数学が好きで。

ニシブチ: 意外だ。

こんぽん: 私だけ教授に「アイドルになるので教員免許はとるけど、教員採用試験は受けません」って言ったら、「ふざけんなよ」って感じでしたね。ちゃんと頭下げて謝って、そのまま卒業しました。ただ10年間は教員免許が有効なので……最後の砦です(笑)。

———役を演じるのが嫌ということですが、現在やっているコントはどうですか?

こんぽん: ニシブチさんは結構、“あてがき”みの強いネタを書いてくれるので、嫌とは思わないですね。

ニシブチ: 出来るだけ、「こんぽんがそのままやって跳ねそうなキャラ」ってのは意識しています。

———こんぽんさんは、影響を受けたお笑いはありますか?

こんぽん: 母親の彼氏がお笑い好きで、ラーメンズさんを小さい頃から見てましたね。途中から、バナナマンさんやバカリズムさんも見始めて。

ニシブチ: 英才教育だ。

こんぽん: ラーメンズさん、バナナマンさん、バカリズムさん……あとアンタッチャブルさんも好きです。

警備員: それ、今ネタ書いてないとおかしいだろ。

こんぽん: で、もし大学全落ちしたら、大阪に行ってお笑いをやろうと思ってたんですよ。

ニシブチ: 東京お笑いの“真ん中”みたいな芸人を見ていたのに?

こんぽん: そしたら大学受かっちゃって、「お笑いできないな~」と思っていたらサークルを見つけたって感じですね。男性が多いんで、女だと目立てそうとも思ったし。

ニシブチ: 僕はこんぽんと5~6年の付き合いなんですけど、こんぽんからクリエイティブなものが生まれた瞬間を一度も見たことがないんですよ。生粋のプレイヤーなんですよね。

こんぽん: 図工の成績は良かったです!

ニシブチ: ……こんな感じなんで、警備員は大変だなって思いますね。

警備員: そうですね。ニシブチが頭脳派、こんぽんが肉体派で、両極端って感じで。ちょうど、自分がその中間なんですよ。二人の言いたいことも分かるし。

こんぽん: 大変なんですね~。

警備員: ネタについてはニシブチとはほぼ毎日話しますけど、こんぽんは一切関与せず、完成したものを渡すって感じです。

ニシブチ: その間に、こんぽんには『ぎょねこ勝男のゲーム実況応援ライブ』とか出てもらって。

警備員: 失礼だけど、“とか”の最初に来るライブじゃないよ。

こんぽん: アイドル活動もあるし。お笑いとアイドルは、100:100です!

警備員: たまに10:10って言うよね。

こんぽん: 今日は、100:100の気分です!

ニシブチ: 日によって変わるの、あんまり良くないよ。

ハチカイのこれから

———今後の目標を教えてください。

ニシブチ: 最終目標は『キングオブコント』ですけど、目の前の目標としては『若武者』の優勝は絶対したい。燃えてますね。

※次世代のお笑い界を背負って立つメンバーによる、ネタバトルライブ。観客の採点で順位が決まる。

警備員: そうですね。けっこう手応えを感じたりもするのに、ギリギリ残留みたいな感じで。上の壁が厚いんですよね。

———出てみたいテレビ番組はありま……

こんぽん: 『ゴッドタン』です。

ニシブチ: 食い気味に……。

こんぽん: MCの隣にいる人になりたいです。

警備員: 急に行けないだろ、あそこ。

こんぽん: いきなり行きたいんです、あそこに。それか、牛乳を口に含む側ですね。

ニシブチ: そこもいきなりは行けないよ。

警備員: 自分は、やっぱり『ネタパレ』ですかね。ライブシーンの先輩方もたくさん出てますし、ぎょねこさんとか今一緒にライブに出ている人も出ているので。

こんぽん: バラエティに早く出たい。

ニシブチ: ネタ番組とか経てからね。

こんぽん: いきなり出たいです。アイドルになったのも、バラドルになりたいからなんで。

———最後に、告知があればお願いします。

ニシブチ: 『阿佐ヶ谷集会所(ギルド)』という、僕らと仲の良い芸人さんが出ている隔月のライブがあります。ビデボーイズとか十九人とかが出てます。皆さん是非、会場にお越しください!

文 みつを
写真・編集 堀越 愛

PROFILE

〈ハチカイ〉
左:警備員
中:ニシブチ
右:こんぽん

★公式YouTubeチャンネル:ハチカイ

『YOAKEMAE』ハチカイ 出演回

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