トットが、活動20周年を記念し愛知・宮城・大阪・福岡・岡山・広島・東京の全7か所でツアーを開催する。さらに、2月16日(日)にはオンラインサロン『トットマネジメント部』とFANY Mall『TOTTO SHOP』を開設。ファンとの接点を増やし、2025年のさらなる活躍を期待されている。

トットの『M-1グランプリ』ラストイヤーは、2024年。準々決勝まで進出するも、決勝には届かなかった。M-1を卒業した今、トットはなにを考えているのか。M-1を経て変化した漫才との向き合い方や、現在挑戦中の『THE SECOND』について、そしてツアーやオンラインサロンといった新たな取り組みに向き合うトットの“今”を聞いた。
普段の喋りが漫才に
———昨年で『M-1グランプリ』への挑戦が幕を閉じました。あらためて、M-1卒業を振り返ってみていかがでしょうか?
多田 智佑(以下、多田): M-1に関しては「優勝して卒業がベスト」だと思っていたので、それはできませんでした。ただ、自分たちで漫才と向き合って自分らなりの手応えを感じながら卒業できたので、まだ良かったかなと。
桑原 雅人(以下、桑原): やりきった感じはあるけど、やっぱり決勝に行けなかったので「終わっちゃったな」と。審査した方に直接聞いていないので、なにがあかんかったかはわかんない。ただ、自分たちが「おもろい」と思うことをできたかなと思います。

———昨年に関しては、M-1に向けてどのように漫才を磨いていましたか?
桑原: 対策することはやめてました。まわりからいただくアドバイスって、ほとんどが正解やと思うんです。でも、できるかとなると、別やなって。できるようになったら面白いかもしれんけど、できひんから、できひんことはやめとこかと。……そういう意味で、対策することをやめました。
多田: まわりが言ってくださることを自分たちに落とし込めたら、表現としてうまくいくんでしょうけど、僕らには似合わんと思って。無理してうまくいかなくなるくらいならできることで強みを伸ばしたほうがいいんじゃないかと思って、対策はやめましたね。

———トットさんが思う、自分たちの強みとはなんですか?
桑原: 僕らは同級生なので、喧嘩していても“良い喧嘩”ができる。相方というより、兄弟に近い雰囲気を出せると思う。自分たちだけのノリや雰囲気があったりするので、それが良いのかな。
多田: 計算してやっているわけじゃないというか、「昔からこういう感じでやってたんやろうな」と想像させるようなやり取りは僕らの強みじゃないかなと思います。

———ここ数年、YouTubeやラジオ、公式Xなど発信にも力を入れていますよね。積極的に発信するようになって、トットさんへの見方が変わってきたことの影響も大きそうです。
桑原: そうですね。お客さんやまわりの芸人さんも「トット、そうなんや。見た目とちょっとちゃうな」と知ってくれるようになった。セカンド(THE SECOND)の予選に出ていても知ってくれている人が多いように感じるんで、やってきて良かったなと。発信するようになるまでは、舞台で漫才してるだけやったもんね?
多田: うんうんうん。揉めたり喧嘩したりしてるのもそのまま上げるので、ほかの芸人からしたら「なにをそのまま出しとんねん」という感じなんですけど、「それをやれるのがお前らの良さよな」とも言ってもらえたり。ありがたい変化ではありますね。
桑原: ほんまに、めっちゃ変わりました。
多田: 自分らの「ここっておもろい部分やったんや」っていうのがまわりの意見でわかって、新鮮でしたね。

★公式YouTube「トットチャンネル」
★ラジオ「トットのコゼリアイラジオ!」
★公式X「トット」
———たしかに、漫才に関しても二人の普段に近いスタイルが見やすいし面白いですよね。
桑原: 自分たちとしてもめっちゃやりやすいですね。
多田: 普段のしゃべりのほうが、ほんまに思っていることやったりするから。
桑原: だから、間が良いねんな。笑かそうとしてないから。
多田: そうなんですよ。舞台に立っているのに変な話なんですけど、ほんまに思っていることを言ってるからお客さんに伝わるんやと思うんですよね。やり方は人それぞれやと思うんですけど。頑張っているけど、頑張らないというか。
桑原: えらい抽象的やな、もっと具体的に。

多田: お前がまとめろよ。
桑原: 素に近くて、同級生っぽいけど組んですぐには出せない空気感をどんどん出せたら良いなと。僕らも楽しくて、お客さんにその楽しさが伝わればいいかなと思います。
多田: 全然それで良いんちゃう(笑)?わかりやすいし、すごい良かったと思う。
———そういう変化があって、少しずつ手応えを得られたんですね。
多田: 漫才をやっているなかで、けっこうお客さんからええ反応来ているぞと思うようになりました。
桑原: ずっと考えすぎてたのかもしれんな。
多田: 去年以外は、「漫才はこういうもんや」と対策をしてきました。でも去年に関しては、そういうのは無視してたな。
桑原: 無視したのが結果的に良かった。
多田: うん。自分らはこんな感じという開き直りができたのが、良かったんじゃないかな。

———漫才は良くなったものの、M-1ラストイヤーは準々決勝で終了しました。それについて、思うことはありますか?
桑原: 芸歴やったんかな。M-1グランプリは新人の大会なんで。
多田: いやいやいや(笑)。それもゼロではないでしょうけど、そこを無視して決勝に行っている人もいるからね。
桑原: わからんねんな。でも、結局ダメだった理由を聞いてもむかつくだけやと思うねん。

多田: そうなんですよね。興味はあるけど、理由聞いても腹立つだけやねんな。
———M-1を卒業したことで、一区切りついたかと思います。その後、漫才に変化はありましたか?
桑原: 今までは尺を考えてましたけど、今は制限時間がないので自由やなと思います。自分たちがやりたい漫才をできるので、自分らが「良い」と思うものやろうやという感じですね。
多田: そうですね。細かい話になりますけど、僕らの漫才の場合、僕が長く流暢に喋れたほうがたぶんウケやすいと思うんです。でも今は、僕がうまく喋れないから任せたりとかもしてます(笑)。
桑原: 嫌がるんですよ。
多田: 嫌がるというか、できないんですよ。やろうとして練習するけど、できないんですよね。

桑原: だからやめましたね。前はそれでも「やって」って言ってたけど、「やりたくない」って言うから、なら俺がやろうと。
———なるほど。話を聞いていると、二人がこれから向かう方向性も徐々に定まっているように感じます。
多田: 今後は楽しくやれたらいいですね。
桑原: ゆるいねん、目標が。記事にしがいがないやん。小学生の目標やないんやから。
多田: (笑)。こっちが楽しんで、お客さんも楽しんで……

桑原: ゆるいなあ。お笑い論を語れよ。
多田: そんなん、(令和ロマン)くるまやないねんから無理よ。
桑原: ぶーんって……
多田: いや、しょうもな!きついでぇ。

桑原: 結局は、素に近い既存の漫才にないスタイルになっていくと思う。ボケとかツッコミとかない、普段のしゃべりに近いような。
———では、今後の活動の軸足はどこになりそうでしょうか?
多田: 変わらず、舞台ですね。
桑原: 軸足というか、そこに置いたつもりはないんですけど(笑)。舞台という足場しかないというか。
多田: ほかに、足置ける場所がないんですよ(笑)。

———今後、新たに挑戦したい活動はありますか?
桑原: いろいろやりたいんですけどね、多田さんがやってくれるかはわかんないです。僕で言うと、ワインとか個人的な趣味の活動ははじめています。
多田: なにしてんねん(笑)。僕は、そんなんないんですよ。
桑原: でも、多田さんは言ったらやってくれるし、料理とかもすごいしているので。
多田: 独身でひとり暮らしなので、料理はせざるを得ないんですよね。そういう仕事をやりたいというよりは、もし来るならやらせていただきたいスタンスですね。

★トット桑原のワインコラムはコチラ(エノテカオンライン)から
『THE SECOND』はノールールの面白さ
———M-1を卒業されたばかりですが、今度は『THE SECOND』への挑戦がはじまりましたね。
桑原: 目標があるのは嬉しいですね。漫才をM-1用に3~4分にするのは意識してたんですけど、セカンドの6分なら普段のまま出られるので。なんやったら、前よりやりやすい。使えるネタがいっぱいあるので、それをやるだけですね。
多田: ほんまそうっすね。ドキドキ感と刺激をもらえているありがたさを感じています。
———セカンドがはじまったのは2023年です。当時はまだトットさんはM-1に挑戦していたわけですが、どのように見ていましたか?
多田: めっちゃ楽しみでしたね。「6分やるんだ」って。3~4分のネタって、逃げ切ろうと思えば逃げ切れるんですよ。ただ、6分となると細かい技が乗っからないと逃げ切れない。先輩方が間をどこに入れるかとか、どういうふうに6分を使うんだろうと、興味がありました。6分はそれぞれの色がめっちゃ出ますから。

桑原: 出るよね。10分とか15分までいくと逆にわかりにくくなるけど、6分は見える。
多田: だからワクワク感がありましたね。
桑原: セカンドはまだ出来立てで、初期のM-1に近いスタイルウォーズというか……全然違う漫才が並んでいるので、それぞれを比べようがないんですよね。M-1はボケを多く入れるとか枠組みの中でできてきたけど、セカンドはまだノールールで異種格闘技戦感がすごい。そこが面白いですね。
———しかも、お客さんの票で決まるというのもわかりやすくて新しいですよね。
多田: 「今の反則やろ」と思っても、お客さん的にはOKだったりしますからね。
桑原: 反則もあり。
多田: そうそうそう。
桑原: M-1とは違う面白さがある。まったく別物の大会というイメージやし、そうやったら良いなと思っています。
———去年は同期のガクテンソクさんが優勝されて、今まさにブレイクの真っ最中ですよね。ガクテンソクさんの優勝は、どのように見ていましたか?
多田: 単純に嬉しかったですよ。良いときも悪いときも見ているので、19年目で優勝して評価されたというのは素直に嬉しかったですね。

桑原: 彼らの気持ちがわかるというか……ガクテンソクが東京に出てきた※ときも、賞レースで優勝したのがきっかけではなかった。優勝して来てるわけではないので、まわりも自分たちのことを知らないし、僕らが上京したときと同じような感じだったっぽいんですよ。そこからチャンスをつかんで一気にチャンピオンになったので、羨ましいですね。あとに続きたいなと思っています。
※ガクテンソクが上京したのは2023年4月。当時のガクテンソクインタビューはコチラから
———先ほど「反則」というワードもありましたが、トットさんがセカンドのために準備されていることはありますか?
桑原: 小道具を使うとかお客さんに話しかけるとかもありやなと思うけど、やれへんかな(笑)。そういうことよりは、自分たちの漫才をやろうという感じですね。
多田: 普段の感じを6分で表現して伝えられるかどうかですね。

———セカンドはM-1に向けてネタを叩いていく作業とはまた別の感覚かと思いますが、いかがでしょうか?
桑原: きつい作業ではないですね。元々のネタに、曲のCメロを入れるみたいなことやな。
多田: うんうんうん。
桑原: 転調というか。
多田: ほんまはいらんかもしれんけど、そこも楽しみましょうというか。
桑原: 3~4分ならひとつの型でも面白いけど、6分は一個だけだとしんどくなる。
多田: 型がひとつだと、もたないんですよ。
桑原: セカンドは引き出しが必要で、「ベテランさんなんで引き出しを開けて使ってください」というのが6分かなと認識しています。

———なるほど。たとえば「3分のネタを2つつなげれば良い」ということではないんですね。
トット: そうですそうです。
多田: ネタをつなげるではなく、「6分」なんですよ。
桑原: 「6分」をできる人が強い。僕らとしては6分になるのはむしろありがたいかな。逆に3~4分でバリバリの人らは、6分に戸惑うと思います。「いらんやん2分」って。
———ちなみに、セカンドに挑むにあたり、意識しているコンビはいますか?
多田: みんな強さがありますよね。タモンズ、ななまがりとかも全然スタイルが違うし。マシンガンズさんとかもまた残ってくるかもしれんし……
桑原: 多いって。1組やって。読んでて面白くないねん、そんな平均的な意見。みんな面白いのは大前提の上で、聞いてんねん。
多田: えー、…………みんな。
桑原: おもんないねん。

多田: まあでも、「戦いたくない」で言ったらタモンズですかね。
桑原: 仲間ですからね。
多田: 仲間すぎて戦いたくないなって感じです。
オンラインサロンで“交換日記”解禁
———20周年全国ツアー『PRCEED』についても聞かせてください。今回のツアー開催を決めたのはなぜですか?
桑原: 20周年もありますし、記念でもある。今までは二人でこもってネタをつくって、深く深く……という感じだったんですけど、それも一区切りついたので、いろんな人に見てもらう活動をしても良いんじゃないかと思いました。
多田: 20年やってこられたので、それに対する感謝もあります。「やってこられました、ありがとうございます」という意味でも、いろんなところに行って生で見てもらえたらと。

★トット20周年全国ツアー『PROCEED』詳細はコチラから
———オンラインサロン『トットマネジメント部』もオープンしました。こちらはどのような経緯があったのでしょうか?
桑原: 去年、単独ライブをやったんですけど、ファンの皆さんが「待ってました」という感じで。すごい応援してくれているのがわかったんです。こんなにいっぱい応援してくれている人がいたのか、と可視化されて、感動したんですよね。これまではファンが集う場所があんまりなくて申し訳なかったので、交流の場ができたら良いなと。ツアーをやるにしても、お客さんがどのくらい来てくれるか予想もしやすくなるし、動きやすいかなと思って。今まで、ほんまにそういうのやってなかったもんね?
多田: うん、自分たち発信となると、ほぼほぼ初めてに近い。M-1も抜けて、芸人人生として僕らもセカンドシーズンというイメージがあります。今までやってこなかったことをやるのも良いことだろうなと。

★オンラインサロン『トットマネジメント部』詳細はコチラから
———オンラインサロンには、どんなコンテンツがあるのでしょうか?
桑原: まずは、動画ですね。今まではYouTubeに上げていましたけど、言っちゃあかんこととか気にしてやっていました。でもオンラインサロンはもう少しクローズドな場所なので、あんまり気にせず撮ったやつを出せるなと。あとは、多田さんがM-1の時期にマネージャーと交換日記していたので、それも出します。結構リアルに書いていて、「こんなふうに思っていたんだ」とか面白いんですよね。マネージャーはいつか本として出すつもりやったそうなんですけど、多田さんはどこにも出さないと思っていたらしくて。
多田: でも、日記ってそういうもんでしょ(笑)?

桑原: マネージャーはびっくりしていました。「なんでどこにも出さないのに、私が担当タレントと交換日記せなあかんの」って。
多田: 僕も「なんでやらなあかんねん、めんどくさいな」と思いましたよ。
桑原: マネージャーは外に出す気でいたんですけど、多田さんは出したくないという攻防があったときに、「オンラインサロンなら良いよ」という許可をいただいて。
多田: ほんまは恥ずかしいし、嫌は嫌ですけど。ほかの担当芸人や家族もいながら、1年半くらい日記を続けてくれた時間を無駄にするのは申し訳ないなと……。

———たとえば、どういう感じのこと書かれているんでしょうか?
多田: 最初は「マネージャーから日記を書きませんかと急に言われた」みたいな感じでした。
桑原: あとから思い出してとかではなく、本当にその日の感情を書いているんですよ。
多田: だから飲みに行く約束しているのに、「今日の日記お願いします」とか催促のLINEが来るんですよ。酔っ払ったら書けへんから、「なんでこのタイミング?」と思いながら、書いたりしていました。

———それは桑原さんにも共有されているんですか?
桑原: たまにマネージャーが感動したり、変化や成長を感じたりしたときに、共有してくれてました。「芸人ならおちゃらけたほうが良いやん」とかもあると思うけど、いろいろ終わったタイミングなので出してもまあ良いかと(笑)。
多田: トークライブでも交換日記の話は何度かして、お客さんから「読んでみたい」という意見もいただいたので。出してみるかということになりました。

———最後に、ツアーへの意気込みを教えてください。
多田: ツアーは全7か所で、見どころはゲストが場所によって変わること。その日ならではの面白さもあるので、楽しんでもらいたいです。20周年のお祭り的な感じで一緒に盛り上がっていただけたら。
桑原: ゲストの人もネタやっていただけますから。
多田: そうなんですよー。ありがたいですね。
桑原: そこを見てほしい。
多田: いや、俺らもね。

桑原: 俺らはしんどいやん。
多田: しんどいやあらへんがな。俺らのイベントなんやから。

桑原: とにかく楽しくやってると思うので。こいつら浮かれてるなというのを見てもらえたら。前から僕らのこと知っている人はえらい変わったなと思うと思います。
多田: 「昔があるから、今もある」という感じも思いながら、見ていただけたらいいですね。
PROFILE

トット
左:多田 智佑
右:桑原 雅人
・公式プロフィール:https://profile.yoshimoto.co.jp/talent/detail?id=3379
・公式YouTube「トットチャンネル」:https://www.youtube.com/channel/UCMTMPzVGOs1VOY-TgiQLZbQ
・トットのコゼリアイラジオ!:https://stand.fm/channels/62a7d0750984f586c2e6c739
・公式X:@totto_kozeriai
文:まっつ
編集, 撮影:堀越 愛